第49話くん
わが道を行くオカマの登場に、民衆がどよめきたつ。
疲れきった人々に向かって、元気?なんて言うもんじゃないよ、まったく。
ヘリから撮ってるのか、テンチョーの顔が都市の上に投影されてる。停電が続く都市には、その光りはまぶしいくらいだったよ。
ウチューセンが夜空に浮かび、船体でスクリーンを作ってるんだ。
ほんと、ばかばかしい機能ばっかり作るなあ。
「今からぁ、『ヒーロー』を紹介するわぁああ」
一呼吸の間のあと、わぁああと歓声が上がる。なんだなんだ。
「この街を救ったのはぁ・・・、」
もったいつけるオカマ。
「彼よぅうう!!!」
びしっと音が聞こえるほど、テンチョーがカメラに指をさす。ナイスポージング。
ばちんとぼくにピンスポットライトが当たる。
夜空に、ぽかんとした顔のぼくが映った。
ホコリまみれの顔で、口をあんぐりと開けたまぬけな顔だ。
ぼくはとりあえず、口を閉じた。
だって、あんまりにもしまらない顔だったもの。
恐る恐る、ヘリのカメラに向かって手を振る。
ひと際歓声が高くなった。
ありがとう、という声も聞こえる。
ぼくはぎこちなく笑い、みんなの声に応えた。
オカマが調子に乗って、トキシゲコールを始める。
トーキシゲ、トーキシゲ。
その声には、確かに、ぼくに対する恨みなんか込められてなかった。
人々のたくましさがその響きにはあったように思ったよ。
そうか。
これで、良かったんだ。
そう思うことでしか、ぼくは前に進めない。
そしてぼくは、行かなくちゃならない。前へ、前へ。
割れんばかりの喝采の真ん中で、ぼくは一人、決意を新たにした。
『アイコン』と、受け入れた大きな力と、その使命。
ぼくの願いを。
みんなの願いを。
ぼくが救うんだ。
そう、ぼくが。
夜が更けても、テンチョーが起こした祭りは続いていた。
『バイトくん』が即席ライブを開いたりもしたんだ。ジャンパーズも楽しそうにしてたよ。
一躍有名人になっちまったぼくはと言えば、握手を求める人や野次馬から逃れるのにてんやわんやになったよ。
なんだか照れくさいもんだよね。
最初に、孫の命を救われたって、おばあちゃんがりんごをくれたんだ。
ぼろぼろと涙を流してぼくを拝んでた。
ゼペットに押されて、お礼を受け取るぼく。
ただのりんごがまぶしく見えたよ。
ありがとう、ありがとうって繰り返すおばあさんのしわしわの手が妙に暖かくて、気恥ずかしかった。
そしたら、次から次へとひっきりなしに人が訪れるようになっちまった。
まいったよ。
遠くから、イーマの歌声が聞こえてきた。
彼女のおばあさんから教えてもらったという、不思議で穏やかな旋律。
ビルの陰に隠れたぼくまで、きれいな声が届いていた。
その声を子守唄に、ぼくは眠った。
もちろん、ぼくの隣には『アイボー』がいたよ。
おやすみ、みんな。
《テンプレ『勝利の後は大宴会』・・・2連続達成》
《シナリオ『女神の夢』が進行しました》
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