第48話くん
上機嫌のちいさなユウシャさまご一行は、街の中心の公園にたどり着いた。
そこは災害から逃げ延びた人々が集まっていて、臨時の避難所になってたんだよ。
手際よくテントもあちこちに建っている。
その中でもひときわ目立つ、ピンクの屋根が目に入った。その前には行列ができてる。
あ、いた。
間違いないよね。
簡素な骨組みに屋根を張っただけの仮設テントの下で、イーマ・ジェムとテンチョーが忙しく働いていた。
イーマが『癒し』の力でケガをした人を治してたんだ。
テンチョーは、怪しげな特製グッズを無償で配っている。
患部に手を触れ、傷ついた人に語り掛けているイーマの姿は慈愛に満ち溢れてた。
優しく温かな光がイーマの手からこぼれ、傷を包む。
苦痛にあえぎ強張っていた表情が、穏やかさを取り戻していく。
すごい。
イーマの横でお手伝いをしていた女性がぼくらに気付き、立ち上がってぺこりとお辞儀をした。
ちびっこはするりとゼペットから降りると、その女の人へ駆け出す。
やっぱりママには、お馬さんのゼペットくんも勝てなかったみたいだね。ふふふ。
それからのぼくらは、復旧作業に大忙しだった。
コンビニエンス号の応急処置を終えたピンク・ジャンパーズも駆けつけてくれたよ。
火事を消すのには、テンチョーの『ピンキーボール』がとっても役に立った。あの変なヨガボールは消化剤にもなる。火に投げ込むと包み込んで消してくれるんだ。すごい。
それと、みんなで協力してがれきを取り除いた。まあ、だいたいぼくが『ヘンシン』して片付けたけど。
消防車やら病院やらの都市機能が徐々に回復し、ぼくらの出番も減る頃にはすっかり日が暮れちまっていた。
ほんと、みんな頑張った。
ゼペットも迷子を見つけ出しては背中に乗せて、避難所に連れてきてた。
なかなか子供をあやすのが上手くて、とっても意外だったよ。
半分くらい、おもちゃにされてたけどね。
やがて、夜の帳が落ちる。
ぱちぱちとはぜる炎。
あたりがオレンジ色に染まり、ゆらゆらと影が踊る。
冷え込んできた夜の避難所には、暖を取るためあちこちに煙が立ち昇っていた。
ぼくは焚き火の前でひざを抱えながら、ぼんやりと物思いにふけっていた。
ぼくはほんとに、救えたんだろうか?
昼間に、孤児になってしまった子や、恋人を亡くした人をたくさん見かけた。
いや、この街に住むみんなが、なにかを失っちまったんだ。
ぼくはもう少し、うまくやれたんじゃないか?
油断しないでコーモリにとどめを刺せば、巨大化することもなかったんじゃないか?
なにかに怯え、隅っこで震える子供達をぼくは救えたんじゃないだろうか。
かちゃり。
いいにおいのするスープがぼくの目の前に差し出された。
見上げると、イーマが微笑んでいた。
ぼくは黙ってお椀を受け取る。ああ、あったかい。
ふと、オフィスの癒し、サガワさんの手を思い出しちゃったよ。
「となり、いい?」
こくりと頷くぼくを見て、イーマが並んで座る。
しばしの沈黙。
火の粉が舞い、ぱちんと薪がはぜた。
「おいっしぃい!」
イーマが、感嘆の声を上げた。
こちらを向いて、にこりと笑う。
「ほら、トキシゲくんも食べて」
うながされるまま、ぼくもスープを一口すすった。
うん。おいしい。
熱いスープがのどを伝い、ゆるゆると胃に落ちていった。
じわりと体の中がほどけてく。
そういえば、今朝はご飯を食べる間もなく出動したんだっけ。顔くらい洗いたかったなあ。
「誰も、あなたを恨んでなんか、いないと思う」
ぽつりと、彼女が口を開いた。
そうかな。
ぼくがもっと、しっかりしてれば・・・。
「私も、あなたに救われたから」
彼女の横顔は炎に照らされ、少しだけほほに影を落ちていた。
もしかしたら、『癒し』の力を使いすぎたのかもしれない。
イーマ、きみは。
きみは優しいね。
ばちん。
突如として、スポットライトがビルの屋上に当たる。
ばばばばば。
物々しいヘリコプターも飛んでる。
「みなさぁぁああん、お元気ぃぃぃ」
静寂とか、穏やかさとは、このオカマには無縁らしい。
ライトの輪の中から、テンチョーがど派手に登場した。
やれやれ。
本日はここまでで勘弁してもらおうか。
池乃めだかさん曰く、「よっしゃ、今日はこれぐらいにしといたるわ」という訳です。
あらすじやタイトルをブラッシュアップしてます。
魅力的なキャッチコピーって難しいなあ。
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