第02話くん
かりかりと乾いた音を立ててゼペットが食事をしている。
今朝はよく晴れていて、鳥のさえずりが聞こえた。
ちゅんちゅん、ちちち。
風もやわらかく吹いていて、フレッシュだ。
なんだかいい日になりそうだぞ。
何にも知らないその時のぼくは、窓から顔を出しながら無邪気にそう思ったよ。
ほんとにいい朝だったんだ。
ぼくは眠い目をこすりながら寝起きのコーヒーをすすった。
ほわりと部屋に香りが漂う。
だいたいいつも、3杯は飲まないと頭がしゃきっとしない。
ずずっ。ふぅ。
2杯目のコーヒーを注ぎながらさっき取ってきた新聞に目を通す。
ぼくはコーヒーと新聞紙の香りが好きなんだ。
ふむふむ。
取り立てて血なまぐさい事件は無かったみたいだ。
3丁目のまさおくんが川で大物を釣ったらしい。
ぬらぬらした魚を抱えてにっこり笑うまさおくんの前歯が、ぽっかり抜けていてなかなかゆかいな写真だったよ。
あれ?
あちちっ。
ぼくは驚いてコーヒーを手にこぼしちまった。
なんだってこんなへんてこなものが新聞に載ってるんだ?
※※※※※※※※※※
ヒーロー募集!!
さくら町2丁目×××
ゼペットまで
※※※※※※※※※※
ぼくはわあわあ言いながらテーブルにこぼれたコーヒーを拭いて、やあやあ言いながらその広告をよおく眺めてみたよ。
でもさっきと変わらない。見間違いじゃない。
ぼくの住所でぼくの犬だ。いたずらだろうか。
インボーか?前世の呪いか?
そんなにおおげさなもんじゃないけどさ。
「なあ、ゼペット。これはどういうことなんだい?」
毛むくじゃらのゼペットは食べ終わった皿をしつこくぺろぺろと舐めるのに夢中で、話なんか聞いちゃいない。
仕方が無い。なるようになるさと思って、ぼくはネクタイを締めて家を出た。
扉を閉めるときになっても、ゼペットはまだ恨めしそうに自分の皿を見つめていたよ。
今思えば、なるようにしかならなかったわけなんだ。
いや、ほんとのはなし。
《テンプレ『違和感のある朝』・・・達成》