第01話くん
その日の始まりもいつもと同じように、神経質な目覚まし時計からだった。
きーきーきぃぃ。
一人暮らしをはじめるとき、寝起きの悪いぼくのために母親が心配して、とびきり最悪な目覚まし時計をくれたんだ。
よりによって、自転車のきしむブレーキの音がアラームのやつ。
もちろん自転車の形をしている。
ちくたく。
おかげで遅刻することはなくなったけど、いつもうんざりしながら起きなくちゃならない。
厳重に抗議を申し立てたけど、アラーム音がうるさいのは電池のせいで、結局のところ早く起きないぼくが悪いのだと言って取り合ってくれなかった。そして使わないでいると、ぶちぶちと小言を言うんだ。
物を大事にしないとか、親のありがたみがわかってないだとか。
やれやれ。
ベッドから抜け出て、あくびをしながら新聞を取りに行くとゼペットが尻尾を振って寄ってきた。
餌のときだけは愛想がいい。
そう。あの時助けた犬だよ。
なでようとすると唸るくせに、なぜだか後をつけてきて家に居ついてしまったんだ。
あの頃と比べたらすっかりよぼよぼになってしまったゼペットは、自分の皿をくわえてぼくを見上げている。
ぼくはその皿を受け取ってドッグフードを入れてあげた。
もじゃもじゃで気難しいこの犬を、ゼペットと名づけたのはぼくだ。
うす汚れた白い毛がなんとなく白髪まじりのじいさんに見えたし、なにより職人気質なのだ。
彼は靴に穴を開けるのが大好きなんだ。
一晩のうちに靴のかかとに2センチくらいの丸い穴を開ける。
犬にしちゃなかなか器用なほうだと思うよ。
あんまり褒められた仕事じゃないけどね。
今までの靴代を請求したいくらいだ。
なぜだかわからないけど、実家から荷物を運び出すとき当たり前のようにトラックにゼペットが乗り込んだ。
それで、そのまま連れてきてしまった。
彼なりになにかしらの恩を感じてるのかもしれない。
そんな素振りはぜんぜん見せないけど。
このゼペットが後々ぼくをとんでもない目にあわせるなんて、この時はとても考えられなかったよ。
《テンプレ『もふもふのペット』・・・達成》




