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第21話くん

光をまとった体は浮遊し、くるくると回る。


あふれる光がしゅわしゅわ固体化し、ぼくの周りを衛星のように飛ぶ。


吸い寄せられるように、じゃきんじゃきんと光のパーツは装着された。

ブーツ、ボディ、手袋、そして仮面。


ぼくを包む光が収束し、ベルトに吸い込まれていく。


しゅるるる。


しゃきーん。


ぼくはあの『ヒーロー』にしか許されないポーズを決めた。

わあ、かっこいいぞ。


体のすみずみまで力がみなぎる。ぼくは、力を確かめるようにこぶしを握った。ぐっ。

感覚が冴え渡り、後ろで逃げ出す小鳥が枝を蹴り、空中に飛び出すその瞬間までも知覚できた。


すごいぞすごいぞ。


《テンプレ『ヘンシン中は攻撃を受けない』・・・達成》


ぼくは、深く息を吸い、ワルモノにこう言ってやったんだ。


「やめるんだ」


正直に言うと、ぼくはこのとき、自分にうっとりしてたよ。うひひ。

ちょっと声も作ってた。


まばゆい光に弾き飛ばされていた黒タイツ戦闘員が自分を取り戻し、いきり立ってぼくめがけて体当たりしてきた。


きーいきー。


わわ。ぶんっ。


軽く腕を払っただけで、小石のようにぶっ飛んでいくタイツ。ぴゅーん。

わお、つよいぞつよいぞ。

びたん、と木の幹に叩きつけられ、かえるみたいなかっこでずりずりと落ちていく。

あわわ、痛そう。力加減がわからず、悪いことしちゃったかな。


びゅるるん。


ぼくの右腕にムチが巻きつく。くぅ。やられた。

ぼくはうっとりしてた自分を恥ずかしく思ったよ。


「こいつがどうなってもいいのか?うひゃひゃ」


ピエロ野郎の横で、タイツが女の子の髪をつかみぎらりと光る刃物を顔に当てていた。

恐怖で彼女の顔は引きつり、こぼれそうになるくらい大きな瞳を見開いている。

ヤツはぴたんぴたんといやらしく彼女のほほにナイフをあてがう。


《テンプレ『小物は人質を取る』・・・達成》


くそぅ。ヒキョーだぞ。


飛び出したぼくの右腕が、ぐいっと引っ張られた。バランスが崩れて、ぐらりとよろけちまった。

ピエロがムチを手繰り、ぼくの動きをけん制する。


「動くな。お前はそこで黙って見てればいいんだよぉお、ひゃひゃ」


くそったれなピエロは、うひゃうひゃと醜い笑顔で彼女の服を引き裂いた。

あらわになる彼女の白い肌。長いまつげを伏せ、きれいな顔が羞恥に歪む。声にならない悲鳴が、ぼくには聞こえたような気がした。

女の子の胸の谷間には、美しい『ペンダント』が光っていた。


《テンプレ『美少女の胸元には謎の宝石』・・・達成》


ヒキョーなうえにハレンチだなんて、どこまでも嫌な奴だ。


不思議に輝くそのペンダントに、ピエロが黒いマニキュアをした手を伸ばしかけた、その時。


白い毛玉が弾丸のように飛び出した。


どしんとよろめくピエロ。うろたえるタイツ。


テンチョーがその隙に女の子を奪って、一目散に駆け出した。逃げざまに、親指を突きたてぼくにウインクをする。

やった!すごいぞ、みんな!


《テンプレ『ヒーロー』パーティによる連携・・・達成》


「き、貴様らああ」


白塗りの上からでもはっきりわかるほど青筋をぴきぴきとたてたピエロが、立ちはだかるゼペットを蹴飛ばした。

横っ腹をしたたかに蹴られ、吹き飛ばされる老犬。ぎゃふぅ。肺の中の空気がしぼりだされる音がした。

それでもよろよろと立ち上がるぼくの愛犬。



おまえら、ゼペットにまで。

もうゆるさない。


ぼくは、怒ったぞ!


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