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エア子×エア子

主人公の満がでてこない部分ですね。


 暗然たる世界に終わりを告げた。世界は光に満ちている。あの気弱で貧弱の口調にも飽きたでしょ?

 

 変わるべきは己の精神ではない。人間自体が代わればいいのだ。この世界の自我は私だけでいい。私の思いどうりで少しイレギュラーなことが起きれば退屈な日常はスパイスに満ちている。

 

 私の名は浅井(あさい)(みお)。平凡な女子校生。昨日まではシャイボーイがグチャグチャと語っていたけど今は違う、ごく普通に社交的な女の子の物語だ。普通と言っても人とは少し違うところがある。それは……。

 

『おはよう! 澪! いい朝じゃないか』

 

「おはよう、エア子さん。いい天気ね」

 

 あたりは静寂であるとまではいえないが聴こえてくるのは鳥の鳴き声ぐらいだろうか、見逃している音などいくらでもあるだろうけど、朝は優しく静かに満ちて躍動的なるのを待っているかのようだ。しかし、エア子さんの喋り声は周りには聞こえない。

 

 彼女はエア子さん。実体がない人間で私と話はできるが、私としか話すことができない。彼女の声は私にはしか聞こえない。幻聴? まあ、それでもいいわ。楽しいから。

 

 私は身なりと髪型を整えて制服に着替えて二階の自室からキッチンへと向かう。私は私立洛田陽(らくだよう)高校の1年生だ。五月のゴールデンウィークも終わり、同じいよいよ高校の活動も楽しくなりそうだ。

 

 洛田陽は楽勝! こんな程度の知れた学校と昔は馬鹿にされていたが……そんなのは親の世代の時。今は進学校で勉強は大変だけど、やりがいがあって充実していると思う。始まったばかりなのにね。

 

『おお! 澪えらいな、自分で弁当つめているな』

 

「エア子さん、それぐらい誰にでも出来るでしょ」

 

 料理も多少はできるけど。朝は何かと忙しいからね。ついつい親を頼って具材は用意してもらい詰め込んだのが今日のお弁当だ。

 

『そうかい? 遠く、うっすらとした記憶になグズで何度も言わないとやろうとしない奴がいたような……』

 

「気のせいよ。だってエア子さんは意識が芽生えたのは一ヶ月まえでしょ? 私としか関わりないじゃない」

 

『そうだな』

 

 エア子さんが何者か本人も私もわからない。私の心がおかしくなったとも思ったが、色々と試してみて肉体のない意識だとわかった。彼女はいつも私と一緒だが1人行動して色々と情報を仕入れてくれる。行動範囲が広いのだ。今度、二人でエア子さんが下見してくれた場所に旅行する。楽しみだな。

 

「澪はエア子さんと仲がいいわね」

 

「当然!」

 

 最初は不思議がっていた家族も今ではエア子さんを認めている。ただ、家の家族もエア子さんとは会話できない。でも、いいんだ、私だけのエア子さんだから。

 

 朝食をとり、家を出て学校へ向かう。今のところ興味のある部活動がないから、朝早く活動することもなくゆっくりと家を出ることができる。

 

 朝の楽しみといえばこれだ。私の通う学校は坂道で山沿いにある。完全に田舎風景だ。特に嫌いではなくほどほどに体を動かすには十分な程度だ。だけど、そんな中、ぐったりとダラダラ辛そうに歩く男子がいる。失礼だけど、男とは呼べる背丈や風貌ではなく、カッコイイというよりかは可愛いといった感じだ。

 

 彼の歩くペースは酷いけど、登校中に仲間とのんびりおしゃべりして進むいつもの定番のグループがいる。別に有り触れた日常だ。彼のペースでも追いついてしまう。そこからが問題なのだ。彼は気が弱くてそのグループを抜かせないのだ。だから、ペースが更に落ちる。いつも一人でいるみたいで、どうすることもできず半泣きになっている。そこが、面白いというか可愛い。でも、彼は聞くところだと一年上の先輩だそうだ。

 

「おはよーす! (みお)、また息野(いきの)先輩の観察?」

 

 友達の香美奈(かみな)以下四人が集まった。合計で六人のグループだ。少々所帯が多い気もする。

 

「意地悪そうに見てないで声でもかけてみたら?」

 

「いいよ、別に。それよりいつものあれを」

 

 私がそう言うと皆は楽しげな表情をし、横一列に並ぶ。そして、息野先輩まで歩調を早くする。簡単にいうと前と後ろで挟んでしまうのだ。軟弱な彼の反応を見てみたい。私たちは悪い後輩だ。

 

「ちょ、ちょちょちょちょちょちょちょちょ…た、たたたたたたたたす…」

 

「助けて?」

 

「え、えっと。助けてございます。おはようでした。……しまった! 意味のわからんあいさつを……」

 

 ぷっ。これだから、彼が好きなのだ。しかし、こうやって毎日チョッカイしているのだから、そろそろ私たちになれて欲しい。自己紹介もできない。

 

『あまり、意地悪をするんじゃないよ。困っているじゃないか!』

 

「ごめん、ごめんエア子さん」

 

『謝るのはアタシじゃないよ! あの子、あの子? どっかで……』

 

「どうしたの? エア子さん」

 

『いや、悪いな、気のせいだ……だと思う』

 

「ふ~ん。そっか」

 

 と、エア子さんと喋っていると彼は恐る恐る口を開いた。震えているようにも見える。

 

「君さ、独り言をして病気なの?」

 

 病気とは失礼ね。ま、普通はそう思うだろうけど……。

 

「さあ? エア子さんと会話中」

 

「エア子さん? うっ、なんだか頭が痛い」

 

 あなたの方こそ病気じゃない。とは言わないでおくかな。

 

「大丈夫ですか? 先輩。運びますか? 軽そうですし」

 

「い、い、いやいいよ」

 

 オーバーアクションで身体全体を振って拒絶する。ちょっと傷つくな。

 

「コラ! そこ退いた。(みちる)が困っているじゃないか!」

 

 え? 似たような声質。薄いピンクの髪の女の子。普段は落ち着いた表情な感じがした。でも、今は、ちょっとハラハラしている。怒っているが……似ている……あの色紙に。色紙の女に。こっそり覗いた色紙の女に。あの色紙では落ち着いた表情をしていたが……似ている。

 


 ふん、なんのことかしらね。

 


亜子(あこ)さん!」

 

 先輩が一瞬にして明るい表情になる。

 

 


 ―――え、真西(まにし)葡萄(ぶどう)じゃないの?―――

 

 


 勿論、葡萄とは違うのは一目瞭然だけど。こういう時に彼がすがる人間は彼女しかいない。どちらにしても忌々しい。

 

 予想とは何かが違う。でもその場は楽しむ事にする。私はどちらかというと傍観者の気質なのだ。

 

 お喋り連中は気を押されて謝って道を開放する。

 

「おい、満の後ろの連中も性格の悪いことするんじゃないよ! ったく……」

 

 声と口調が似ている。何故………?

 

『お、なんだかアタシのような娘がいるな』

 

「そうね」

 

 ここは、私の世界だ。なのに、なぜ?

 

「あなたは?」

 

「アタシかい? アタシは恵亜(えあ)亜子(あこ)さ。エア子って呼ばれているよろしくな!」

 

『アタシがもう1人? どういうことだい? でも、楽しそうだな』

 

「楽観的ね」

 

 私の世界にエア子さんは二人はいらない。偶然ではないと思う。こんな必然はいらない。認めない。

 

「なかなか、上手くいかないものね」

 

『は? 何がさ?』

 

 私は戦慄した。私はこの状況をどのようにしたいかと。

ラストの始まり。どうなるか分からない。

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