ディメンション ドライブ?
「はい、死亡確定です」
浅井澪は確かに待ち構えていた。
彼女はなにをほざいているんだ? この場に来たからって何がおきるというのだろうね。何をしでかすという方が正しいのかな。
学校の屋上を想像しよう。金網にベンチ、観葉植物くらいだと思った。しかし、異世界でもいるかのような華やかさだ。
「庭園みたいだね」
人が死ぬなどと言う奴を無視して僕は素直に感想を口にだした。
下から水を汲み上げているようで人工池や噴水や展望台まである。緑豊かで小鳥など小動物もいる。閉鎖しておきながら奢侈にふけているじゃないか。いつここを利用するのだろうね。
「空中庭園とでもいうのかな」
「ま、舞台としてはいいでしょ? 何かを手に入れ失う場所にはね」
浅井澪の風貌をあらためて見た。僕と同じモブで人間の女の子のデフォルトそんな印象だったが……今は途轍もなく悪役にピッタリな空気を纏い、平凡とは裏腹な何かの達人的とでもいうか、玄人的な力量を印象に受ける。
桃萌さんのように鋭くても落ち着いた目、細身でやや長身。僕の身長が低すぎるので思うのではなく普通の男子よりかはちょっと背丈があるんじゃないかな。割と目立つと思う。
興味が薄かったのは香美奈さんと梨園さんがメインだった仲間内だったためかもしれない。
「舞台? 君が用意していたとでも?」
なにかと対峙する時の敵の台詞に感じる。ここで気象でも変われば雰囲気が合うのではないかなとは思うけど今日は晴天、雲ひとつない。四階にしては強い風も吹いてこない。
「まさか、そこの生徒会長さんのおじさんが作らせた趣味でしょ? 理事長だから」
理事長ってそんなことできるの? なりたいな理事長職。
「む、伯父上は建造物の趣味があっての。この学校が無駄に大きいのもそういう余興が好きだからじゃ。ちと、内緒じゃが……隠し部屋とかもあるぞい」
タヌキさんこと仙洞生徒会長は困った顔で言う。内緒なことは黙っておきましょう。お喋りな、タヌキさんだな~。
「隠し部屋! 地下室もあるの?」
「むむむ、そこは男同志のロマンなのかの? 考えることが同じで通じ合うのかの~。父上から聞くにはあるぞい。秘密裏に地下三階まで学校の敷地と同じ広さの地下迷宮じゃがの。コツコツと造営しとる。どうしようもない遊び心じゃ。他言無用じゃぞ」
確かにどうしようもない。権力者イコール建造物というよりか理事長はもとゲーマーなのかな? 何となくだけど。多少ゲームを嗜む人間なら憧れるのでは?
現代人ゲーマーの好みはわからない。僕も現代人だけど。
「えー✩ 地下で私のライブやりたいな★」
ωこと新亜さんにはライブハウスとかのイメージが頭にあるのかな。ゲームのダンジョンに似したところで歌っても観客がはまらないし、場が合わないと思うよ。
「真よ、ちゃんとしたホールのほうがいいぞい。実際妾の一族はホールを所有しているがの」
「知っているよ。皆に愛されかわゆいアイドル部の活動が認められた時にはそこでライブする約束、だもんね♪」
「そうじゃったのう、伯父上も真の活動は関心を持っているから近々特別に披露できる許可が得ようじゃな」
「そこの、お二人さん緊張感はある? 香美奈達の安否を確認する方がさきじゃない」
「しかしの、香美奈殿以下四名はベンチで寝ているではないか」
どうしてこうなったかはわからないが、何事もなく安静に寝ているようだ。そこは安心。
「冷めない夢にはいっていたとしても?」
「いいえ、それはないわ。友達を利用してまで私達を呼び寄せて無事ではないなんて面白味がないでしょ。おいたが過ぎるわ! それ以上なんてことしたら許さない」
「桃萌のそういうところは好きよ。別に私は満先輩に執着しているだけ。彼の困る姿をみたいだけ」
「それだけなの?」
「いいえ、エア子さんが欲しい。満先輩しかできないその不思議な体験を味わいたいの」
僕とエア子さんに憧れているのは桃萌さんが言った通りみたいだ。
『おや、アタシをご指名かい?』
「エア子さん、危機感ないな~」
『満だってのんびりとしているじゃないか』
「そうだけどさ……」
でも、ただ事ですむ様子じゃないよね。もともと、僕に恨みがあるみたいだし。僕が忘れてしまった事件だけど。しかし、人を困らす無用の異能力を使うなら僕でも桃萌さんでも躊躇わず争うよ。
「それ! 満先輩のエア子さんとのやり取り。いいな~三年前に私の異能力を消したんだから。貰っていいでしょ? エア子さん」
「は? 何を言っているの。エア子さんは所有物じゃないよ。異能力がなくなったの? それが僕の責任なのかな?」
僕はひたすら思い出さそうとしている。三年前なにがおきた? 僕はなにをしでかした?
「忘れる自体が勝手すぎるでしょ? 楽しかったな。あの時の夢はまだ覚めたくはない」
「夢? 現実だよ。夢だってやっていいことと悪いいことがあるしね」
「夢なのに?」
「ああ」
「それぐらいにしておけ、満と桃萌の真の実力を知っているだろ?」
「残念! 葡萄先輩。ここはすでに夢の入口でした。ダラダラとお話をしてくれたおかげで準備は万全ね。そろそろ突入するわ。私のストーリーが」
「ストーリー?」
「ええ、葡萄先輩。これからは私の一人称でエア子さんと私の物語が始まるの」
「何を言っているんだ?」
「わからないの? 満先輩」
「まさか、次元移動の異能力?」
「流石は桃萌。近いね。そんなところよ」
「発動する条件は私達が揃うところかしら?」
「そう、サクリファイスとまではいかいないよ。私の物語に移動するためにここの世界ではいなくなってもらう。だから死亡確定って言ったの。この世界では死んだようなものじゃない?」
「冗談じゃない」
桃萌さんは構える。なにか抵抗するのだろうか。僕もなにかしなくては。次元の移動か……。師匠に聞けばそんな異能力知ってそうだけど。今更遅いな…どうしよう!
「夢は一人でみていなさい」
桃萌さんなら手はある? 澪さんの妄言が本当なら僕には打つ手がない。
「もう、遅いよ。あなたたちとまともに張り合ったら敵わないものね。とっくに準備万全だったのよ」
そう言うとあたりの視界がグネリとまがりクルクルと回転し始める。生きていて、様々な体験はしたけど。今回の現象は初めてだ。
「ク、手遅れか」
僕達は意識が薄れてきて、別の意識が上書きされていく……。
そう、浅井澪というストーリーへと移行してしまうのだ。そんな馬鹿な!




