二十一、五星
三首の龍だった。白い霧が空から垂れ込めていて、
凛は龍の元にある、何かを取りたがっている。
前に進もうとすると、何処かの頭が動いて近づけない。
近づいては逃げて、横から角度を変えて、
とにかくその元へ行こうとしていると、
息がどんどん苦しくなってきて、
ハッと目が覚めた。
体を無意識に起こしていたようだった。
心の臓が爆ついている。肩で息をしていると、
左衣が顔を出した。
「凛!」
駆け寄って「心配したわ。」
と言って肩を抱く。泣いているのが伝わってきて、
昨日の事を思い出した。
里が賊に襲われたんだった。
左衣と離れて直ぐに星宿図を取りに部屋へ行こうとしたところに
朱色の顔の賊に鉢合わせた。
灰族だと直感して、立ちすくんだ凛に笑って走り寄って、
賊は腹に一撃喰らわせた。
そこから覚えていなかった。
左衣がいて、館の部屋にいるのだから安全だと理解する。
「かか様、皆は?」
「え?里のものは大丈夫よ。
偶然とは言え、カラも相生様も居て本当に運が良かった。」
「賊は?」
「逃げたものとなくなった者で、生きて捕まえてはいないの。」
「凛、気付いたか?」
とと様が入ってくる。
「万草殿が大したことは無いと言っていたが、」
と何時もの優しい笑顔になる。
「どうやって無事でここにいるのかわからないけど。。。」
「カラも相成殿もいたからな。実際凛に手を出そうとした奴は
碧殿がな。」
「碧が?」
「天狗の呼び笛に反応してくれた。」
面を付けた天狗の里の行者は御山も守っているが、
とと様とも繋がりがある。
凛の頭の上に置かれていた巻布に気が付き、
「それは?」
と聞く。
「これはカラ様から。
前に貰った星の形を書いたものと、新しいのは星占いかな?
未だよくわかってなくて。」
とと様は、
「まあ何とも言えないが、彼国では大事にされているしね。」
と言って、星占の布を広げる
「五星は意図するものは様々らしいが、
決まりごとがあり、
太白は特に意味があるらしいな。軍事だったか。
彼国の古のクニで五星が一度に集まって見えた時があってな。
それを祥瑞としてクニを統一した王もいる。
上手くは言えないが、天の事象は人の心をとらえて離さないものだからね。」
方々のクニを渡り歩いていて博識なカラもだが、
温も知識が高い。宰相の克勝と近しい間柄なのはその辺りが関係しているのかもしれない。
布を巻き直すと、
「明日、宰相がおいでになる。
里の襲撃の件もある。準備はできるかな。」
左衣と凛に向かって聞いた。
五星:歳星(木星)、熒惑(火星)、鎮星(土星)、太白(金星)、辰星(水星)




