表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/8

第三話 再出発と錬金の条件

紅陽に新たに加わった錬金術師レンファ。

その技術は、拠点の可能性を大きく広げるものだった。


だが――

その力を活かすには、足りないものがある。


レンは再び、ひとりで旅に出ることになる。

 翌朝。


 紅陽の空気は、まだひんやりとした静けさを残していた。


 蒼月亭の中では、朝の準備が始まっている。火を起こす音、食器の触れ合う音、外では水を汲む気配。そんな日常の中で、レンは大きく伸びをした。


「……よく寝た」


 昨日の疲れは抜けきってはいないが、動けないほどではない。


 食堂に降りると、すでに数人が集まっていた。


「おはよう」

 ミレーヌが振り返る。


「おはよう」

 カイも軽く手を上げた。


 そしてその奥には、レンファの姿もある。


 昨日とは違い、レンも特に違和感なくその存在を認識していた。


「おはようございます」

 レンファが静かに頭を下げる。


「おはよう」


 短く返しながら、レンは席に着いた。


 少ししてフィオも合流し、全員が揃ったところで、ミレーヌが本題を切り出す。


「レン、もう一度ヴァルディアに行ってきてくれるかい?」


 唐突な言葉に、レンが顔を上げた。


「どしたの?」


 ミレーヌは顎でレンファの方を示す。


「レンファが、ハイポーションを作るのに道具がいるんだってさ」

「道具?」


 レンが視線を向けると、レンファが頷いた。


「はい。ここには錬金術に使うような器具が一切ありません」


 静かな声で、しかしはっきりとした口調だった。


「すみません。ただ、この周辺に自生している花で、ハイポーションは作れます」

「花で?」


 フィオが反応する。


「ええ。一般的な素材よりも質の良いものが採れるので、道具さえあれば高品質なものを安定して作れます」


 その言葉に、レンは少しだけ眉を上げた。


「ハイポーションって言えば、結構いい値段するよな。それが作れるのか?」


 レンファは迷いなく頷く。


「はい。この花を使えば、一般的なものより品質の良いものが作れます」

「へえ……」


 フィオの目がわずかに鋭くなる。


「コツがいるので、製法はあまり知れ渡っていませんが。私はずっとこの方法で作ってきました」


 淡々とした口調だが、その内容は軽くない。


 ハイポーションは高価だ。それを安定して作れるなら、紅陽にとって大きな意味を持つ。


 カイも腕を組みながら頷いた。


「それができるなら、かなり助かるな」

「だね」

 ミレーヌも同意する。


 レンファは続けた。


「あと、ヴァルディアでハイポーションを一つ買ってきていただけますか」

「買う?」

 レンが聞き返す。


「はい。比較すれば違いを見せることができます」


 理にかなった提案だった。


 言葉だけで説明するより、実物で示した方が早い。


「と、いう訳だ」

 ミレーヌがまとめる。


「レン、頼むよ」


 レンは軽く息を吐き、肩を回した。


「了解。村でハイポーションが作れるなら、いろいろ助かるしな」


 すでに決断はできている。


 紅陽のためになる。それだけで十分な理由だった。


「今回は一人で行くのか?」

 カイが聞く。


「うん。器具とポーションだけなら荷も軽いし、単独の方が早い」


 フィオが少し考えたあと、頷いた。


「まあ、その方が効率いいね。気をつけて」

「わかってる」


 リディアが静かに口を開く。


「単独行動なら、なおさら周囲に気を配れ」

「了解」


 短い返事。


 レンは立ち上がり、荷を整え始めた。


 今回は軽装だ。武器と最低限の装備だけ。昨日とは違い、動きやすさを優先している。


「じゃ、早速行ってくるよ」


 そう言って振り返る。


「気をつけて」

 リディアが言う。


「無理はしないでね」

 ミレーヌが続く。


「おう」


 軽く手を上げて、レンは蒼月亭を後にした。


 朝の光が、紅陽を照らしている。


 まだ未完成の拠点。だが確実に形を成しつつある場所。


 その中から、一人の男が再び外へ向かう。


 目的は明確だ。


 錬金道具の調達。

 そして、ハイポーションの可能性の確認。


 だが――


 その旅路が、単なる買い出しでは終わらないことを、レンはまだ知らない。


 街道へと足を踏み出す。


 その先に、新たな“気配”が待っていることも知らずに。

今回は、レンの再出発と、錬金術という新たな要素の導入でした。

ハイポーションという明確な価値を持つ要素が加わったことで、紅陽の拠点としての可能性が一段広がります。


そして次回――

ついに“もう一つの視点”が登場します。


匂いを辿る者。

追う者と、追われる者。


ここから物語が一気に動きますので、ぜひ続きもお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ