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第34話

 帝国はグライカンから北にある巨大都市国家だ。

 だが今回目指すダンジョンがある帝国領は西部とグライカンの街から離れている。

 いつもなら徒歩で向かう私達なのだが、今回はそうはいかない。だから屋敷の車庫からこいつを引っ張り出した。

 

 エアロバイク。

 風魔術の印を刻み込んだ帝国製魔導エンジンを搭載した私オリジナルの乗り物だ。

 長距離の移動にはこいつを使う事がおおい。エアロバイクの隣にはサイドカーを連結させており、リオンがいつもそこに座るのだが――


「リオン大丈夫か? 飛ばされたりしないか?」

「ひゃっほおおおう!! 飛ばされる? 僕今飛んでるよ〜!」


 ジーナの膝の上に立ってはしゃぐリオン。

 まあこうなるのは必然だった。なんせ今まで2人だったのだから。だが今回は3人で4人目は空にぷかぷか浮かんでいる。それにしても高速で走るエアロバイクの真上で優雅に横になって浮かぶ霊体のウィルは、他所から見ればかなり滑稽な姿だろう。


「リオン座りなさい。本当に飛ばされてしまうぞ」

「ほらリオンご主人もこう言ってるんだ。大人しく座れ」

「は〜い……ごめんちゃい」


 シュンとしたリオン。子供だから遊びたい盛りなのは理解する。――が今向かっている場所は死地であり、決して遊びではないのだ。

 気を引き締めないといけない。

 心は痛んだが、いつもより厳しく私はリオンを叱りつけた。


 そうして辿り着いた帝国領西部の針葉樹が立ち並ぶ森の中。雪が積もり一層冷え込むこの地に帝国軍が陣を張っているのが見えた。

 エアロバイクを降りて私達は人の元へ。外套はバイクに乗せたままウィルは留守番だ。

 もし連れて行くとここに居る兵士全員がショック症状を起こすからな。致し方ない。


「お待たせしました」

「先生! お待ちしておりました」


 先に帰っていたグルエルが私たちの元に駆け寄ってくる。周りの兵士たちは訝しげに私たちを見てくるが……。まあ余所者なのだ。毛嫌いされるのは仕方ない事。


「で、状況は?」

「はい……。やはりダンジョンの中から魔物が溢れて来ております。ここはダンジョンから5キロ離れた地点。兵士の休息場として張っている陣です」


 陣――と呼ぶには少し物足りない。体を休めるテントが一つに、胃袋を満たす為か煮物を大量に煮ている大釜が一つあるだけだ。


「今も戦闘中で……」

「中に入る道を作ってくれてたのですか?」

「ええ。そうしなければ中に到達できませんので……」


 なるほどありがたい支援だ。だが――


「ありがたいのですが――一度兵士を全員下がらせて貰えませんか」

「なんですって!?」


 グルエルが飛び跳ねた。私の言葉は予想外どころか予想の斜め上を行ったのだろう。


「それでは先生達だけで中に? 不可能です! あの魔物の数を知らないからそう言えるのであって、見ればきっとそう言ってられないはずです」

「グルエルさん。確かにあなたの意見は正しい。これが私以外の者であれば問題ありませんでした。ですが、ここは私の話を聞いていただきたい。聞かないのであれば帰ります」

「むっ。ぐぬぅ……」


 息子夫婦を救い出したい気持ちが強いのは重々承知だ。

 だが今回のダンジョンにはかなりの戦力が必要。

 ウィルを持ち込むには一度兵士を退けて貰わなければここに居る兵士達がショックを起こしてしまう。2人を助けるためにこの場の全員を殺すような真似だけはしたくないのだ。


「理由は……」

「私の装備が皆さんに悪い影響を及ぼすからです。それ以上は詳しく言えません」

「なるほど。名のある冒険者は独自の武具を所持していて、その効果は秘匿されていると聞きますが、探索者であるあなたも同様という事ですかな?」

「まあそう言っておきましょう」


 隠してはないが、この話をして死人が出ても困るからな。こう答えておくほかない。

 グルエルはしばし考えた後、頷いてくれた。


「分かりました。では5分だけ下がらせましょう」

「ありがとうございます。では撤退を確認次第私達はダンジョンへ侵入します」

「よろしくお願いします」


 深々とグルエルが頭を下げ、私たちの側から離れて兵士たちに叫ぶ。


「これより全部隊ダンジョン付近より撤退! 繰り返す撤退だ。この命令は何よりも優先される。従わぬものは軍議に掛けるものとする! いいな!」

「「「ハッ!」」」


 逞しい返事が兵士から返される。素晴らしく統率が取れた部隊だ。

 グルエルの部隊だろうか、敵として立ち塞がれば厄介この上ないだろうな。今が平時で良かった。

 兵士が慌ただしく支度するのを見て私達も準備に取り掛かる。

 エアロバイクに戻り、外套を手に取り羽織った。


「ウィル。今日は頼むぞ」

『はいは〜い。エスコートよろしく〜』


 呑気に爪を見ては息を吹き掛けている。頼もしいというかなんというか……。

 リオンとジーナは各々荷物をチェックしていた。

 今回の荷物番はリオン。ジーナは護衛要員だ。

 ジーナには天竜の素材で作った片手剣と軽装備を身に付けてもらった。

 本人は鎧のような重装甲を所望していたが、私の仕事上そのような動きの鈍い装備は御免被る。

 故に軽装備にしてもらったが、それでも天竜の装備なのだ。かなりの耐久性を誇るはず。

 多少の被弾があっても怪我はしないだろう。


「ジーナ。お前は帰りに力を出してもらうが、万が一の時はその武器で仲間を守れ。いいな」

「承知した。任せてくれ」


 竜の寝床の最奥までは辿り着ける実力はあるのだ。冒険者でいうAランクは行かないまでもBぐらいの実力はあるはず。ここはその力を頼りにさせてもらおう。ただし私の動きに合わせてな。


「撤収完了! 繰り返す撤収完了!!」


 兵士の号令が聞こえた。これで余計な犠牲を気にせず本気でやれる。


「聞こえたな。行くぞ」

「「はい!」」

『ええ』

 

 雪道を進み問題のダンジョンへ。果たして鬼が出るか蛇が出るか。

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