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猫が書く徒然草  作者: 瀬古刀桜
同居にまつわるエトセトラ
6/89

知兄ちゃんの理想

夕方。

僕は校門の前で、知兄ちゃんが来るのを待ち構えていた。

「センセ、さようなら」

「サヨウナラ。また明日な。」

校門から出てきた知兄ちゃんに声をかける。

兄ちゃん。

「琥珀。お前なんでこんなところに・・・まさか、俺を迎えに来てくれたのか?」

はい、お迎えです。

「・・・頭が良い奴だと思っていたが・・・流石、魔女姫の使い魔」

酷いな。黒猫だからって【使い魔】は失礼だな。ねえ。怒っていい?

「お、怒るなよ」

僕の様子に気がついた知兄ちゃんが、笑った。

小さな日本家屋の前に、僕は立ち止まった。

「此処か?【橘】って表札あるし・・・」

そうだよ。早くベル鳴らして。僕もお腹空いた。

知兄ちゃんはベルを鳴らした。

「はい。お帰りなさい。知先生」

出迎えた京ちゃんの姿に、言葉を失い、知兄ちゃんは立ち尽くした。まあ、無理もないよねえ。

京ちゃんは、和服姿に割烹着。和服美人というのは、こういう人だろうと思わせる姿。

「京子センセ?」

「そうですよ?琥珀。お迎えありがとう」

どーいたしまして。

「縁側にタオルおいてあるから、脚を拭いて入ってきなさい。」

はーい。

固まったままの知兄ちゃんを僕は見上げた。

「・・・結婚してください。」

「知先生。33歳のおばさんをからかうものじゃありませんよ。ホラ、風邪引くから中に入って」

知兄ちゃんのプロポーズを、京ちゃんは華麗にスルー。知兄ちゃんの腕を掴むと、京ちゃんは家の中に引きずっていった。

さて、僕も御飯御飯。



「京センセ、この家って」

「最近、引っ越したの。祖父の財産。古くて驚いたでしょ。相続税払ったりしたら、この家だけが残った。」

「・・・センセ、その格好」

着物姿に兄ちゃんは未だ驚いているようです。

「ん?家ではこの姿が多いよ。私。ま、流石に学校では着ていけないけどね。部屋は此処。」

京ちゃんが知兄ちゃんを案内したのは、四畳ほどの小さな和室。たくさんの本と本棚、文机。

僕は座布団の上に座ってごろ寝していた。

「布団は、そこの押し入れにあるからね。好きに使って・・・どしたの?知先生?」

なんかブルブル震えている知兄ちゃんの様子に、京ちゃんは首を傾げた。

僕も疑問。この部屋暖かいのに、何震えているんだろ?

「理想っす。日本家屋に和室に畳の部屋に。着物美人!!何ですか。この萌の嵐!俺を萌え死にさせたいんですか!だから結婚してください!」

「バカは休み休み言いなさい。隣の部屋に夕飯用意してあるから、支度したら早く来なさい。」

京ちゃんは、知兄ちゃんに呆れた表情を浮かべると、夕飯の支度に向かった。

「琥珀・・・全部、本音なのに・・・信じてくれねえ」

僕を抱き上げた知兄ちゃんは、ぼそりと呟いた。ホントすいませんねえ。京ちゃん、鈍いんです。

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