家政猫は見た?
部屋に戻り、本を取ろうとした時だった。
襖が開く音がしたので、俺はそちらを見た。
「み〜た〜わ〜よ。」
「うわ」
顔を半分襖からのぞかせた琥珀お姉様がいた。彼女は、何故か家政婦姿だった。
琥珀の性別は雄=男なので、「彼」が正しいのだろうが、お姉様姿の時は「彼女」と呼ばせてくれ。
便宜上の措置だ。
某家政婦ドラマをイメージしていただければ、判るだろう。リアルにそれを体験するとは思わなかったが。
「入ってこい。琥珀」
「は〜い」
彼女は、俺の膝の上に座ろうとした。
俺は思わず彼女を押し止めた。無理だろう。いくらなんでも。
「いくらなんでも無理だろ。考えろ。」
俺の膝は京子先生か猫の琥珀が限定だ。琥珀お姉様は無理だ。脚が潰れる。
「面白いから良いじゃない。」
「絵的には面白いが、俺は面白くない。」
「絵的に面白ければいいのよ。面白いは正義なんだから。」
今日は黒のブラウスに黒のスボンと黒縁のメガネ。髪は黒のリボンで纏められている。で、白のフリフリのエプロン。
何だかんだ言いながら、彼女は笑いながら俺の前に座った。
「で、明日のだけど、ホントに大丈夫なの?」
「何が」
「貴方、京ちゃんと同棲していること、ご両親に話したんでしょ。」
「同棲」
多分、俺の顔は今、赤くなっているだろう。
誰がどう見ても今の俺達の関係は大家と店子の関係じゃない。恋人同士にしか見えないだろう。京子さんが鈍いのを利用して、俺は外堀から埋めている。
「アタクシから見ても、知兄ちゃんと京ちゃんは恋人同士にしか見えないわ。だからこそ心配なのよね」
「何が。」
「京ちゃん、あの歳で天涯孤独なのよ。そんな女性と同棲していると知ったら、知兄ちゃんのご両親反対するって思っているのよ。あの子は。それに君より歳上なことも、ああ見えて気にしているのよねえ。」
「・・・そうなのか。」
「女も30過ぎるといろいろ考えちゃうものなのよ。」
無言になった俺を見て、琥珀お姉様はニヤリと笑った。
「守ることが出来るかしら?王子様?この問題は魔法使いのアタクシでも手に負えないわよ。」
「大丈夫だよ。うちの両親なら、素の京子さんを見ればきっと気に入る。」
それは自信を持って断言できる。うちの両親、破天荒なところはあるが、人を見る眼はある。
「任せろ。琥珀。」
「頼もしいわあ。期待しているわよ。知兄ちゃん」
ちゅと琥珀お姉様にキスされてしまった。
「おい。」
・・・いつの間にか黒猫に戻っていやがる。
にゃあ。
琥珀は俺を見上げ、短く鳴くと部屋を出た。




