13.心闇
最後方からベェノスのもとへと向かう二つの影。その姿を目に颯は呟いた。
「父さん……」
ギルドやハンター存続さえ危ぶむ存在の最新兵器サギナスが簡単に破壊された姿を目に颯に不安が過る。
「行かないと」
A級ランカーですら身動き出来ない事態にも関わらず、無力な青年が真剣な眼差しでそう語る姿にガゼルは眼を丸めた。
「私も行くわ」
「……」
紗良には戦闘能力はない。使える魔法は僅かな回復系に過ぎない。しかも、魔力を持たない彼女が背負う代償は自らの寿命。
「お前達は馬鹿なのか?」
多くのヒューマン達は自分の事だけを考え行動する生き物。その姿は、良く言えば保身的であり、悪く言えば無責任な人種だ。ガゼルがこれまで抱いていたイメージと異なるヒューマンの存在に微かに笑みを浮かべた。
「ガバッ」
ガゼルは宙を舞い二人の額を鷲掴みする。
「痛いっ」
「ナジルスバキルスシェルベルス」
奇妙な呪文を唱えた直後二人の脳裏に激痛が走る。
「ギィーーン」
「やめて!」
紗良の叫び声が響き渡るがガゼルはその手を離すことはない。
やがて二人の抵抗力が絶えた頃、掴まれた額の手はほどかれ奇妙な現象が起こった。
「聞こえるか?」
脳裏に響く聞き覚えのある声。二人は目の前に立ち尽くすガゼルの表情を目に戸惑いをみせた。
彼は何も話していないのだ。
「どうやら繋がったようだな」
再び脳裏に響くガゼルの声を、まだ二人は理解出来ずにいた。
「魔伝音だ」
言葉を話すことなく脳内で意志疎通を行う魔術だとガゼルは語り、予想だにしない言葉を告げた。
「今後二人は我支配下におく」
承認することも、拒絶することも出来ない二人には従う選択肢しかなかった。
「わかった。ガゼル、お前の言うことを聞く、だから紗良だけは助けて欲しい」
颯は魔伝音でそう伝え、ガゼルが答える前に更なる願いを伝える。
「父を……、早く行かなきゃ」
魔剣を手にした颯は自らの力の変化を感じとっていた。
「」




