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異界に浮かぶ町、ひまわり市 ー転移した山奥のまち、異世界対応中!ー  作者: ひまわり あおい


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第77話「結界を嫌がる住民:『役所が魔法を使うのは怖い』と抗議が来る」

 庁内の空気は、いったん落ち着いた。

 結界のある窓口とない窓口で生まれた“差”も、「守りのパッケージ」を全員に配ることで、少しずつ角が取れていった。交代制のルールが全窓口に広がり、“赤案件”の支援ルートも一本化され、困ったときに助けを呼べることが、ようやく庁舎の常識になりかけている。


 ――これで、中も外も守れる。

 勇輝はそう思いかけていた。


 ところが、役所の課題はいつも、別の方向からやってくる。

 しかも、いちばん言いにくい形で。


「主任……抗議が来ました……」


 住民課の係長が、会議室の入口で足を止めた。手には封筒。紙の封筒。差出人の住所と氏名が、丁寧な字で書かれている。

 メールやフォームならまだ“軽さ”がある。紙で来るものは、誰かが机に向かって、考えて、書いて、封をして、投函した時間を背負っている。重い。きっと、そのぶん切実だ。


「内容は?」

 勇輝が訊ねると、係長は封筒を差し出しながら、言葉を選んだ。


「……『役所が魔法を使うのは怖い』です。

 それと――『結界は洗脳だ』、『誰が責任を取る』、『子どもが影響される』……そういう文言が入っています」


 勇輝は、思わず瞬きをした。

 洗脳。

 その二文字が、会議室の空気を一段冷やした。


「……そこまで言われてるのか」


 横で美月が、スマホを持ったまま固まっている。画面を見ているのに、視線が泳いでいる。

 美月は、悪意の強い言葉を見慣れているはずだ。SNSの海には、尖った言葉がいくらでもある。それでも、今回は違う。役所宛てに、住所付きで届く抗議。それが現実の重さで刺さっている。


「主任、こっちも来てます……」

 美月が声を落として言った。

「SNSで、『結界=気分操作』って言い方が回り始めてます。

 “行政が人の気持ちをいじる”って、まとめ方されてて……拡散しかけてます」


 ちょうどそこへ、加奈が紙袋を抱えて入ってきた。

 今日の紙袋から出てきたのは、箱ティッシュと、温かいお茶のボトル、そしてメモ用の小さなノート。いつものように“万能”ではあるけれど、今日は妙に実務寄りだ。


「……“怖い”って言葉は、正論じゃなくても強いんだよね」

 加奈が静かに言った。

「否定から入ると、相手は『分かってもらえない』って思ってしまう。火が付くっていうより、溝が深くなる」


「受け止める。でも、放置もしない」

 勇輝は、封筒を受け取りながら答えた。

「“透明性”で押し返すんじゃなくて、透明性で包む。見えないから怖いなら、見える形にする」


 背後から、のっそりと市長が現れた。今日は冗談の気配が薄い。目がまっすぐだ。


「恐れは敵ではない。説明不足の影だ」

 市長が言う。

「影なら、光を当てれば薄くなる。必要なのは、隠さないことだ」


「はい。影を消します。説明で」


 勇輝は、封筒の中身を取り出した。

 便箋は数枚。文章は整っている。丁寧で、礼儀は崩していない。けれど、言葉が硬い。硬い文章は、感情を抑えて書かれた証拠だ。抑えたものは、奥が深い。


 書かれていたのは、こんな問いだった。


――役所が魔法を使う根拠は何か。

――誰が決めたのか。

――影響の範囲はどこまでか。

――体調不良や違和感が出たらどうするのか。

――子どもが“気分を変えられる”のは危険ではないか。

――結界によって苦情が言いにくくなることはないのか。

――結界を嫌がる人への代替手段はあるのか。

――守護竜の協力に依存していないか。善意が切れたらどうするのか。


 読み終えた勇輝は、便箋を机の上に揃えて置いた。

 そして、ゆっくり頷いた。


「……怖いのは分かる。

 それに、この質問は、ちゃんと答える価値がある」


 美月が目を見開いた。


「主任、それ“正しい”んですか……? 洗脳って言われてますよ?」

「言葉は強い。でも、核になってるのは『見えないものに行政が触れるのが不安』って感覚だ。

 魔法がある世界で、行政が魔法に関わるなら、説明責任は倍になる。そういう意味で、質問自体は正面から受けるべきだ」


 加奈が小さく頷いた。

「怖いって言った人は、“町を守りたい側”かもしれない。守り方が違うだけ」

「そう。敵にしない。怖さを言える町のほうが、まだ立て直せる」


 市長も頷く。

「よし。なら、やることは決まったな」


――――――――――


対応方針:否定しない、秘密にしない、個人に依存しない


 勇輝はホワイトボードに、今日の方針を三つ書いた。

 短い言葉にするのは、ぶれないためだ。


1)「洗脳ではない」は断言する。ただし、恐れの気持ちは否定しない

2)仕組み・範囲・期限・評価を公開する(後出ししない)

3)特定個体の善意に依存しない(結界がなくても運用できる形を示す)


「ここを外すと、説明が“説得”に見える。説得に見えた瞬間、相手は身構える」

 勇輝が言うと、美月が即座に頷いた。

「“説得”って言葉、SNSだと一瞬で『誘導』って言い換えられますからね。怖い人のアンテナが立ちます」

「立たせない工夫をする。立ったアンテナは、折らずに、触らずに、情報を置く」


 市長が短く言った。

「公開だな」

「公開です。見えるようにする」


 加奈が、もう一つだけ付け加える。

「質問を“悪意”扱いしないでね。怖いって言える空気がないと、陰で膨らんで、別の形で破裂する」

「了解。怖いって言ってもいい。その上で、選べるようにする」



まずやる:説明会を開く(逃げないのが一番効く)


 美月がすぐに提案した。

「主任、説明会やりましょう。来た人だけで終わらせずに、資料も公開。Q&Aも作る。

 あと、来られない人のために“要点一枚”も。見に行けば分かる、じゃなくて、見なくても最低限わかるやつ」


「やる。

 ただし、“結界の正体”を盛り過ぎない。盛ると怖さが増える」

「了解です。変に神秘化しない。機能と限界を淡々と」


 加奈が頷く。

「あと、会場に結界は張らないよね? “言う場”だから」

「張らない。質問を言える場所を、結界で包むのは違う」


 市長が手を挙げた。

「私が開会で、『心配は当然だ』と言う」

「市長、それだけで十分です。余計な例え話は今日は封印で」

「封印……いや、分かった。例えは控える」


 美月が小声で笑う。

「“封印”って言葉、今日だけは助かります。結界の話なので」


 勇輝は、笑いを一度受け止めてから、すぐ実務に戻した。


「説明会の日程を押さえる。広報は告知と資料公開の導線を作る。住民課は受付と質疑の整理。庁舎管理は会場の動線と安全配慮。異世界経済部は仕様とログと評価指標の説明。

 ――全員でやる。ここ、個人戦にすると失敗する」



公開資料:結界の“仕様書”を作る(行政は仕様書で信頼を作る)


 その日の午後、勇輝たちは“住民向け仕様書”の原案を作った。

 難しい言葉を避ける。けれど曖昧にはしない。

 曖昧にすると想像が走る。想像が走ると怖さが増える。怖さが増えると「洗脳」という単語が出てくる。


 美月が、パソコンの画面をプロジェクターに映し、文面を一行ずつ読み上げる。読み上げるのは、口にしたときの硬さを確認するためだ。


公開資料(案):結界(静けさ対策)試験運用について


1.目的

窓口の混乱を減らし、職員と来庁者の負担を軽くし、手続き・相談が安全に行える状態を保つため。


2.できること(効果の範囲)

・声や感情の“刺さり”を弱め、落ち着いて話しやすい空気を作る補助

・窓口の中断を減らし、相談の整理を助ける(※結界だけで解決するものではありません)


3.できないこと(できないことを先に明示します)

・考え方を変える/意見を消す/記憶を操作する/特定の感情を作る

・苦情や不満を言いにくくするために使う(その目的では運用しません)


4.範囲(場所)

・相談ゾーン中心(相談窓口、福祉相談、別室対応室)

・ロビー・会議室・説明会の場は対象外(意見を言う場を守るため)


5.時間(運用)

・混雑時間帯など、必要な時間に限定

・運用の開始/終了は掲示し、記録します


6.権利の保証(言ってよい)

・苦情・不満・意見は言ってよい(別室対応も可能)

・結界が苦手な方には「結界なし対応」を用意します(下記)


7.安全対策

・体調不良や違和感があれば、即中止し、別室(結界なし)で対応

・子どもに関しては、利用場所を限定し、学校と連携して記録し、報告します


8.期限

・拡大試験は2週間(終了日を明示)

・中間報告と継続判断を公開します


9.評価(何を見て判断するか)

・窓口中断件数、一次完結率、再来庁(同一相談)、職員負担の集計

・来庁者アンケート(匿名)

・※数字は注釈付きで公開し、誤解が生まれない形にします


10.責任体制(誰が管理するか)

・異世界経済部/住民課/庁舎管理の共同管理

運用記録ログと判断理由を残し、監査・住民への説明に使います


11.依存回避(善意に頼り切らない)

・結界がなくても運用できるよう、交代制・導線・警備・掲示・別室対応を整備済み

・結界は補助であり、唯一の手段にはしません


 美月が顔を上げた。

「“できないこと”を先に書くの、やっぱり効きます。

 怖い人って、頭の中で『できる』をどんどん増やしちゃうから、最初に止めないと」


「止めるというより、枠を置く」

 勇輝は言い直した。

「『ここから先は想像しなくていい』って、枠を置いてあげる」


 加奈が頷く。

「あと、“別室(結界なし)”を太字にしたのいいね。選べるって、落ち着く」

「そこは、今回の肝だ。怖い人に『逃げ道』があるかどうかで、反応が変わる」


 市長が画面を見ながら言う。

「住民が選べる行政は強い」

「強いです。強いけど、強がらない形で出します」


 勇輝は、さらに一枚、“Q&A”を作るよう指示した。

 仕様書は“枠”。Q&Aは“声”。住民の言葉に合わせた回答がないと、枠だけが浮いて見える。


「質問はそのまま書きます。都合のいい質問だけにしない。

 『洗脳という言葉が出ました』も、隠さない。ただし、言葉の刺激だけが走らないよう、前後の説明を丁寧に付ける」


 美月が、少しだけ眉を寄せた。

「それ、怖いですけど……隠すほうがもっと怖いですね。

 隠したって、誰かがどこかで言う。そうなったとき、役所が黙ってると一番怪しく見える」


「そう。だから先に出す。先に出して、先に枠を置く」



住民の逃げ道:結界のない対応も“同等”にする


 勇輝はここを、仕様書よりも強く詰めた。

 “代替”という言い方は危険だ。代替は「下位」に見えるからだ。

 結界が怖い人にとって、「結界なし」が“我慢枠”に見えた瞬間、役所の意図は裏返る。


「結界が苦手な人に、『じゃあ我慢してください』にはしない。

 結界なしでも、同じ品質で対応できるように、同等のルートとして用意する」


 具体策は三つ。


・別室(結界なし)での対応(予約なしでも使える枠を残す)

・書面での相談(話すのが苦手/その場で言葉が出ない人向け)

・予約枠(混雑時間帯を避けて落ち着いて相談)


 加奈が、ここを読んで安心したように息を吐く。

「“同等”って言葉、いいね。怖い人が置いていかれない」

「置いていかれる感覚が、不信を作る。

 こちらが善意でやってても、相手の体感が『置いていかれた』なら、それは政策の負けだ」


 市長が頷いた。

「相手の体感も、行政が扱うべき現実だ」


 美月が、即座に告知案を作り始める。

「告知に『結界なし対応もあります』って目立つ位置で入れます。

 あと、説明会の会場に“選べます”って大きく貼ります。これ、来た瞬間に効くので」


「頼む。選べるって、言葉より空気で伝わるから」



説明会当日:怖い人ほど、質問が鋭い


 説明会当日。会議室。

 結界は張らない。会議室は“言う場”だ。ここで言葉を弱める必要はない。むしろ、言葉が届くことが大切だ。


 椅子は多めに並べた。出入り口は二つ確保し、途中退室も自由にした。

 “最後まで聞け”という空気は作らない。そういう空気ほど、人を怖がらせる。


 最初に市長が前に立つ。今日は、顔つきがまっすぐで、声も落ち着いている。


「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。

 結界の試験運用について、心配の声が届いています。心配は当然です。

 役所が新しいことを始めるとき、不安が出るのは当たり前です。

 今日は、隠さず話します。分からないことは分からないと言い、決めていることは根拠を添えて説明します」


 余計な例え話はない。勇輝は、内心で小さく頷いた。

 市長が“普通の市長”でいてくれる日ほど、現場は救われる。


 続いて勇輝が、仕様書の要点を説明した。

 できること、できないこと。範囲。時間。権利の保証。安全対策。期限。評価。責任体制。依存回避。

 言い切るところは言い切る。ぼかすところは、ぼかす理由を言う。

 「分かりません」を言うときは、「いつまでにどう確認するか」をセットにする。


 説明が終わると、会場は静かだった。

 静かは、賛同ではない。恐れが強い人ほど、言葉を選んでから手を挙げる。


 最前列の住民が、ゆっくり手を挙げた。

 年配の女性だ。目線が鋭いが、声は落ち着いている。落ち着いている人の質問ほど、的確で重い。


「結界で、苦情が言いにくくなることはありませんか。

 役所の人が、都合の悪いことを言わせないために使う、ということは、絶対にありませんか」


 会場がわずかにざわつく。

 勇輝は、そのざわつきを止めない。止めると、質問者が孤立する。孤立すると、不信は深くなる。


「ご質問ありがとうございます。結論から言います。苦情を言わせないためには使いません。

 理由は二つあります。

 一つは、運用の目的と範囲を公開し、会議室や説明会など“言う場”には適用しないと明記していること。

 もう一つは、苦情や要望は“消すもの”ではなく、改善に使うものだからです。

 実際、試験運用後は、相談・苦情・要望は増えています。『言いやすくなった』という結果も出ています」


 隠さない。

 数字も出す。

 ただし、“増えた=悪化”に飛ばないように、言葉を丁寧に置く。


「増えたのは危険行為ではなく、主に意見としての苦情・要望です。

 そして、結界が苦手な方のために、別室(結界なし)での対応も同等に用意しています。

 『結界がある場で言え』とはしません。選べます」


 質問者は、すぐには頷かない。

 しかし視線が逃げない。話を聞いている。そこが救いだ。


 次の質問が来た。若い父親らしき男性だ。子どもの手を握っている。


「子どもへの影響が一番心配です。

 子どもが“気分を変えられる”みたいなことが起きたら、戻せるんですか。

 それと、学校で使うなら、誰が見てるんですか」


 勇輝は、言葉を急がなかった。

 “戻せるか”という問いは、恐れの中心だ。軽く返すと、軽く扱ったように見える。


「ご心配はもっともです。

 まず、結界は“考え方を変える”ものではありません。記憶を操作することもできません。

 ただし、体感として『落ち着かない』『違和感がある』と感じる方がいる可能性はゼロではありません。

 そのために、安全対策を用意しています」


 勇輝は、仕様書の該当箇所を指す。


「学校での利用は、場所を限定します。相談室など、必要な場に限ります。

 違和感が出た場合は、その場で中止し、結界なしの対応に切り替えます。

 見ているのは学校側の担当者と、教育委員会、そして役所の連携チームです。

 体調や気分の変化については、個人が特定されない形で記録し、報告します。

 そして、一定期間ごとに、公開できる形で中間報告を出します」


 男性は小さく頷いた。

 完全に安心したわけではない。でも、「手順」が置かれたことで、怖さが“形”になった。形になれば、対処できる。


 最後に、会場の後ろの方から、少し震える声が上がった。


「……結界って、結局、守護竜の気分次第じゃないんですか。

 善意がなくなったら、どうするんですか。

 役所は、そういうものに頼っていいんですか」


 この問いが来たとき、市長が一度だけ前に出た。

 口調は強くしない。だが、曖昧にも逃げない。


「頼り切りにはしない。そこは約束する。

 結界は補助であり、行政の基本は運用と仕組みだ。

 交代制、導線、掲示、別室対応、支援ルート――それらは結界がなくても動く。

 結界だけに寄りかかる町にはしない」


 勇輝も続ける。

「善意に依存しない形を、すでに整えています。

 結界がなくても窓口が回るよう、体制を作っている。結界はその上に乗る補助です。

 だからこそ、今回の試験運用も、期限と評価を公開し、継続の判断を“結界があるから”で決めないようにしています」


 美月が最後に、広報として一歩前に出た。

 声は明るいが、軽くしない。明るさでごまかさない。ここは美月が、最近身につけた“仕事の声”だ。


「資料は、今日このあとすぐに公開します。

 質問もフォームで受け付けて、回答も順次出します。

 “怖い”って言ってください。言ってくれたほうが、改善できます。

 結界が苦手な方の“結界なし対応”も、同等に用意しています。逃げ道じゃなく、選択肢としてです」


 会場の空気が、少しだけやわらいだ。

 賛成が増えたというより、「話していい」と思った人が増えた感じだ。

 それで十分だ、と勇輝は思った。初日のゴールは、全員を納得させることじゃない。逃げずに、聞いて、見える形を置くことだ。



終わり:不信はゼロにならない。でも“見える化”で減らせる


 説明会が終わり、人が帰っていく。

 机を片付ける音がし、椅子を戻す音がして、会議室は少しずつ“日常の部屋”に戻っていく。


 勇輝は、最初に届いた封筒を手に取った。

 怖いと言われるのは、正直つらい。

 それでも、怖いと言われたときに「話す場」がある町は、まだ大丈夫だ。話せるうちは、直せる。


 加奈が温かいお茶を差し出す。

「今日の勝利は、“怖い”を言わせたことだと思う。

 言えない怖さは、あとで別の形になるから」


「その通り。完全には消えない。でも、隠すよりずっといい」

 勇輝が答えると、美月が端末を見ながら小さく頷いた。


「主任、今日の反応、燃え広がる感じじゃなくて、“質問”でした。

 怖がりながら質問するって、信頼の残り火があるってことです。残り火があるなら、育てられます」


「育てる。行政は、手順と約束で育てる」

「その言い方、けっこう好きです。でも、今は真面目に聞こえるから大丈夫です」


 市長が、珍しく静かに笑った。

 派手な言葉はない。ただ、頷きが一つある。


「よし。次は、資料公開とQ&Aの更新だな。

 説明会は一回で終わりじゃない。続けてこそ意味がある」


「はい。続けます。見えるままに、分かる形で」


 ひまわり市役所。

 今日も通常運転。

 ただし、魔法に触れるなら、説明は“倍”必要だ。黙って進める便利さより、話して進める信頼の方が、町を長く守る。


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