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星と剣の英雄譚  作者: kito
工業都市編
33/37

第32話 『魔力というもの』


「シロン、起きたんだ! 良かった~!」


 開口一番、シロンの無事を喜ぶレーア。

 勢いのままベッドに飛び込んできたレーアとシロンが抱き合う。


「あっ! ご、ごめん! 痛くなかった?」


 ハッとした様子で身体を放すが、シロンは落ち着いた様子だった。


「問題ない。理由は分からないが、怪我が完治している」


「えっ、早くない!?」


 言いながら、ちらとザレスの方を見るが、小さく首を横に振る。

 そこで、思いついたようにシロンが声を上げる。


「確かめたいことがある。……ザレス、すまないが少し部屋を出ていてくれないか?」


「わ、分かった……まだ聞きたいこともあるし……終わったら呼んでくれると、ありがたい……」


 そそくさと部屋を出ていくザレスを見送り、扉が完全に閉まったのを確認する。


 突然、シロンが手刀で自らの腕に傷をつけた。


「えっ、シロン!?」


 皮膚が浅く裂かれ、血が滲み出す。


「ここに、星の光を纏わせてくれ。私を運んだ時のようにだ」


「う、うん……」


 言われるままに星を集めて傷口に纏わせる。

 すると、傷が見る見るうちに塞がっていった。


「……痛みもない。やはりか」


「わ、私がやったの? 今の……」


 シロン以上に驚いた様子で周囲に集う光を見つめるレーア。


「何か変わったことは?」


「えっ? うーん……あっ、ちょっとだけ魔力が減ってるかも?」


「ふむ。……治癒魔法とは、恐らく違うのだろうな」


 確認を終えると、シロンは部屋の外のザレスを呼び戻した。



「それで、聞きたいこととは?」


「た、単刀直入に聞くけど……シロンちゃんって、もしかして……魔力を纏わずに、戦ってる……?」


「魔力を? 私は魔法使いではないが」


 それを聞いて、ザレスは腑に落ちたように息を吐いた。


「ま、魔法の四属性は……知っているね……?」


「知らないな」


「私も知らない!」


「そ、そっか……」


 ザレスは先程座っていた木の椅子を引っ張ってくると、それに腰掛けて話し始める。


「ま、魔法には、『炎』『氷』『雷』『風』の四つの属性があって……生まれつき、どの属性に適性があるか……決まっているんだ……」


 魔法使いのレーアにとっても初耳だったため、二人はザレスの話に耳を傾ける。


「ま、まあ、魔力を固めて撃ち出すとか……鎖を作って縛るとか……防壁を張るとか……そういう『基礎魔法』は、適性に関係なく……練習すればできるようになるけど……」


 言いながら、指先で魔力を動かして見せる。

 

「と、とにかく……人間なら誰しも、魔力は持っているんだ……。魔法使いは、魔力自体を攻撃手段とするけど……シロンちゃんみたいに、魔力を使わずとも戦える人は……魔力を身体に纏って、強化を施すんだよ……」


「いいなぁ……転んでも平気だったりするのかな」


 能天気な考えを述べるレーアに、シロンが小さく笑う。


「レーアはよく転ぶからな」


「そ、そんなことないし!」


 頬を膨らませるレーアの身体を、ザレスが物珍しそうな目で見る。


「し、しかし、レーアちゃんも不思議な……身体をしている。魔力に似た力が……全身を巡っているような……」


 ザレスに何が見えているのかは分からなかったが、星の力に勘付かれても面倒だと思い、シロンが話題を戻す。


「それで、やり方は分かるのか?」


「か、簡単だよ……まず、全身を脱力させて……何か、体内に流れるものを……感じるはずだ……」


 目を瞑り、言われるままに脱力する。

 すると、体内を巡るエネルギーのようなものを感じ取ることができた。


「……これが魔力か」


「次に、それを外に広げる……イメージをするんだ……全身を、覆うように……」


 凄まじい集中力を見せるシロンを、レーアは息を呑んで見守っていた。



「さ、流石だね……完璧にできてるよ……」


「……特に違いが分からないな」


 見た目に変化があったわけでもなく、シロンはあまりピンと来ていないようだ。


「そ、そうだな……じゃあ、これで試してみるといい……」


 ザレスが杖を振り、シロンの前に魔力防壁を作り出す。


「このシェルターの、壁くらいの強度にしてあるから……」


「分かった。やってみよう」


 呼吸を整え、剣を引き、息を吐きながら突き出した。


 魔力防壁は音を立てて砕け散り、それを見たレーアがぱちぱちと拍手する。


「これは……本当に、壁と同じ強度だったのか?」


「その様子だと、実感できたみたいだね……」


 珍しく、驚きの感情を表に出すシロン。

 思わぬ収穫を得たところで、ザレスが真剣な表情で二人に向き直る。


「そ、それで……こうして話している間にも、地上ではフェルダーズが暴れている。そこで、二人にも手伝って欲しいんだけど……」


「トンネルも封鎖されていると聞いた。暴動を収めないことには、カルテトを出ることもできないだろう」


「みんなを助けないと!」


 ザレスの要請に対し、二人は力強く頷く。

 こうして、工業都市カルテトを救うための作戦会議が始まったのだった。

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