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星と剣の英雄譚  作者: kito
王都編
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第9話 『お泊まり会』


 二人は服を脱ぐと、一緒に風呂に入った。


 シロンは湯船に浸かってぼーっとしていたが、ふと身体を洗っているレーアの方を見ると、その奇怪な光景に目を見張る。


「あはは! くすぐったいよ〜!」


 レーアの身体を覆う星の光や、手で触れずとも揺れ動く髪。それを見て、シロンも何が起きているのか理解する。


「星の光で……身体を洗っているのか」


「うん! 昔からこうやって洗ってもらってるの!」


 まるで騎士の行進のような規則正しい動きで、光が身体や頭皮の汚れを落としていく様子を見て、シロンは失笑する。


「……便利なものだな」


 星と戯れているようなレーアの姿を見て、きっと彼女は何をしても楽しむことができるのだろうと、シロンは少し羨ましくなる。


 レーアが星を動かして遊んだり、シロンが星に洗われたりなどして、三十分ほど入浴を楽しんだ後、二人は風呂場を出た。


「あー、楽しかった!」


「たまには二人で入るのも悪くないな」


 さっぱりとした気持ちで寝室へ向かい、置いてあった寝巻きに着替えてベッドに飛び込んだ。



「ふかふかだぁ〜」


 レーアが手足をわしゃわしゃと動かして、全身で毛布の柔らかさを堪能する。


「借りてきた本も読みたいけど……ねむい……」


 暖まった身体が眠気を誘い、レーアの意識が微睡む。



「私が読んでやろうか?」


 寝転がるレーアの隣に座り、シロンがそう言った。


「えっ! 読み聞かせ!? やってやって!」


 子供のようにせがむレーア。


 シロンは本を手に取り、タイトルを読み上げる。


「『とろとろシチューのともだちのともだち』……なんだこの本は」


「いいからいいから!」


 一ミリも内容が予想できないタイトルに、シロンが疑問符を浮かべる。



 ページをめくる音にシロンの綺麗な声が相まって、数ページ読んだところでレーアは眠りに落ちていた。



「……私も寝るか」


 本を置いて水を飲み、ベッドに倒れ込もうとしたその時、






「……っ!?」


 部屋の中に気配を感じたシロンが物凄い勢いで振り返る。

 だが、部屋の中には何もいない。


 しばらく警戒を解かずに見回すが、やはり部屋には何もいない。


「気のせいか……?」


 窓も扉も閉まっているため、侵入の形跡はない。


 シロンは疲労のせいだと結論付け、レーアの隣に倒れ込むと、そのまま眠りについた。



 翌朝、二人がほぼ同時に目を覚ます。


「……あ、おはよ〜」


「ああ。おはよう」


 挨拶を交わし、いつもの服に着替える。


 二人が部屋から出ると、廊下でフィースが倒れていた。


「えっ、フィースさん!? 大丈夫!?」


 レーアが駆け寄り、状態を確認するが、怪我や出血をしている様子はない。



 すると、フィースがいびきをかいた。


「……寝ているだけじゃないか。人騒がせな奴め」


 昨晩の謎の気配のこともあり、シロンは色々と悪い想像をしていたが、馬鹿馬鹿しくなって吐き捨てた。


 レーアが優しく身体をゆすっていると、フィースが目を覚ます。


「んぁ……あ?」


 フィースはまだ意識がはっきりしていないようだったが、すぐに状況を理解した。





「いやぁ〜久しぶりに研究が進んだものでね! 少し打ち込みすぎたようだ!」


 朝食を取りながらフィースが元気に笑う。


「お前もお前で、警戒心がないな」


「あっはっは! どれだけ警戒していたところで、シロンちゃんに力で押されたら勝てないからね!」


「私だって戦えるんだよっ!」


「もちろん、分かっているとも! レーアちゃんの魔力量も子供とは思えないほどだ!」


 それを聞いて鼻を高くするレーアを見て、子供の扱いが上手だな、とシロンは思った。


「そうそう、君たちの旅の目的が知りたいんだ! 昨日は聞きそびれてしまったからね!」


「えっと、私はずっと妖精の森に住んでたんだけど、ちょっと前にシロンに出会ったんだ」


 記憶のことを話して良いものかと迷ったレーアがシロンの方をちらりと見ると、シロンがこくりと頷く。


「……シロンね、森に入る前の記憶がないみたいなんだよ。気がついたら森にいたみたいで……」


 フィースは興味深そうに何度も頷きながら、話を聞いていた。


「それから数日間、レーアと森で過ごしたが、森の外に興味を持ったレーアの提案で旅を始めることにした。私の失った記憶についての手がかりが手に入ることも期待してな」


「ふむふむ、それで最初に訪れたのが、森から最も近いこの王都だったというわけか! なるほどね!」


 点と点が繋がったと言わんばかりに声を上げるフィース。


「ところで、妖精の森で木の小屋を見なかったかい?」


「えっ? 多分、私たちが家として使ってたとこかな?」


 それを聞いたフィースが笑い出す。


「あっはっは! こんな偶然があるものなんだねえ!」


「どういうことだ?」


 シロンの問いに、フィースが心底楽しそうに答える。



「その小屋は、僕が妖精の森の研究をするときに簡易研究所として建てたものだよ」


 それを聞いた二人が同時に驚きを見せる。


「えーっ!? あれフィースさんの家だったの!?」


「なるほど。通りで、魔法についての本が多かったわけだ」


「まあ結局、何の成果も得られないまま帰ってきちゃったんだけどね!」


 声を上げて笑うフィースは、そのことについて全く気にしていないように見えた。


「それで今日は、昨日行きそびれた教会に行くのかな?」


「うん! それから、他の城下町にも行ってみたいな〜!」


「レーアが満足したら、次の目的地に向かうつもりだ」


「ほう? 次の目的地はどこなんだい?」


「ラステア跡地だ」


 それを聞いたフィースの空気が、少しだけ変わったような気がした。

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