表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偏愛霊  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/93

第57話 再来する災い

 俺はビルの非常階段を上がりつつ、各階の様子を覗く。

 階ごとに内装は異なるが、どのフロアも共通して黒服が自殺しているか、喰呪霊に捕まった腐乱死体が転がっていた。

 血と腐液が混ざって酷い有様である。


 俺は階段を上がりながら確信する。


(この自殺衝動は間違いない……クドウシバマサだ)


 自殺神社の霊……いや、正確には人間だったか。

 美夜子に惨殺された後、クドウシバマサの死体は棺崎に回収された。

 ビル内で無差別の自殺衝動が発動しているということは、どこかに死体を持つ棺崎達がいるのだろう。


 単独行動は危険なので合流したいが、目立つ行動を取ると黒服達に目を付けられるかもしれない。

 ここはあえてリスクを被り、混乱に乗じて現金を盗むチャンスではないか。

 現在、黒服達はパニック状態だ。

 これがいつまで続くかは分からない。

 ならば警備が復活する前に目的をやり遂げてしまうのが最善策だろう。

 棺崎達との合流はその後でもいい。


(俺は絶対に生き残ってやる……)


 階段の踊り場に一人の黒服が倒れている。

 男は拳銃を自分の額に当てて、震えながら叫んでいた。

 どうやら自殺衝動に抗っているらしい。

 抵抗に夢中で俺の存在には気付いていないようだ。


 俺は黒服の手から拳銃を奪うと、そいつの胸辺りを狙いながら脅す。


「おい。一億円はどこにある?」


「な、何のことだ」


「現金一億円だよ! 須王会ならそれくらい貯め込んでるだろ! 死にたくなかったらさっさと場所を吐けッ!」


 俺は怒鳴り散らして引き金を引く。

 弾は黒服には当たらず、後ろの壁に命中した。

 それでも脅迫としては十分だったようで、黒服は慌てて早口で喋り出す。


「ボ、ボスの私室! そこに金庫がある! 最低でも五億は保管されているはずだ! カードキーはボスが持っている!」


「つまりカードキーを奪えばいいわけか……ちなみに金庫のある部屋は何階に」


 尋ねようとしたその時、黒服が飛びかかってきた。

 衝突と同時に腕を掴まれてそのまま階段を転がり落ちていく。

 視界が激しく回転する中、数度の発砲音を聞いた。

 一つ下の階まで落ちたところで俺達は止まる。


 黒服は死んでいた。

 目の下と胸を銃弾に貫かれている。

 拳銃は俺の手にあった。


 転がり落ちる弾みで俺が撃ってしまったのか。

 それとも自殺衝動に屈した黒服が勝手にやったことなのか。


 どちらにしても俺は死なずに済んだ。

 それだけ分かればいいだろう。


 起き上がった俺は再び階段を上がり始める。

 あちこちにぶつけたせいで身体が痛い。

 まあこれも生きている証拠と思っておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ