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Humanity Magi  作者: やばくない奴
全ての元凶
62/71

勝機

 御鷹(みたか)は巧みな剣術を駆使し、玲作(れいさく)を追い詰めていった。彼自身が手にしている太刀だけではなく、宙を漂っている無数の剣や銃も標的を攻撃していく。無論、強敵と戦っているのは彼だけではない。奏美(かなみ)竜也(りゅうや)は銃を撃ち続け、彼の援護に回る。


 玲作の体には、次第に不具合が生じている。

「このままでは……少々まずいな」

 彼の表情には焦りが出てきている。このまま事が上手く運べば、彼を倒すことも不可能ではないだろう。


 御鷹は問う。

「何故アンタは……人間とマグスを争わせるんだ! 何故アンタは、マグスウィルスなんか作ったんだ!」

 玲作は語る。

「私がウィルスを撒いたのは、人体実験だ。その礎となった者たちだけに目を向ければ、私は多くの命を奪ったことになるだろう。だが、私は未来を見ている。医学が進歩すれば、有り余るほどの命を救うことができるはずだ」

 それが彼の動機だ。彼は金のためではなく、医学を志す者として動いてきたのだ。彼がウィルスを撒いたのも、人間とマグスを敵対させたのも、全ては医学の進歩のためである。無論、それで彼を許す御鷹ではない。

「認められるか! そんなやり方!」

「ウィルスの変異は目まぐるしい。そのペースに、人間の進化は追いつけない。それでも、メディカさえあれば、人間はあらゆる感染症に対抗できるのだ。私はマグスへの情を捨て、より多くの人間を絶え間ない苦しみから救いだすつもりだ!」

「それでも……俺たちは、アンタを許さない!」

 御鷹は再び太刀を振り、眼前の宿敵を切り刻む。メタルミストの不具合により、玲作の体が修復される速度は徐々に減速している。そこに奏美も乱入し、エネルギー弾を連射する。

「アナタのせいで……ワタシの両親は!」

 彼女の脳裏に浮かぶのは、彼女自身の両親がベッドに横たわる姿だ。両親は息絶え、当時幼かった彼女は泣いていた。そして今の奏美は憎しみを露わにし、叫び声を上げている。もはや玲作が敗れるのは時間の問題だ。


 彼は竜也の方に目を遣り、取引を持ち掛ける。

「竜也……私と手を組まないか? 私なら、お前の心臓を治すことができる」

「……君は僕を欺こうとしている。違うか?」

「違う。私は今、マグスの新たな使い道に目をつけている。魔法を生まれ持たなかったマグスは、メディカを生み出す力を持たない。つまりそういったマグスの心臓を移植すれば、お前は健康な体を取り戻すことができるのだ」

 悪くない話だ。竜也は攻撃の手を止め、その場でうつむく。その姿に悪寒を覚えた奏美は、すぐに彼を止めようとする。

「ダメだ竜也! そんな話に乗ってはいけない! ドクター・マガミの知識を取り込めば……ワタシがメタルミストでアナタの心臓を作ることだってできる!」

「奏美……僕だけでは、駄目なんだ。救われるべき命は、今この瞬間もこの世界に溢れている」

「竜也……?」

「だから医学が必要だ。だからメディカを実用化する必要がある。違うか? 現代医学だって、多くの犠牲を伴って発展してきたものだろう。違うか? だから僕は……僕は……」

 不穏な空気が立ち込める。御鷹と奏美は息を呑み、彼が次に紡ぐ言葉を待つ。

「僕は……先生についていく!」

 竜也は御鷹たちを裏切った。彼はすぐに銃を奏美に向け、発砲を始める。

「竜也! 目を覚まして! ワタシたちが苦しんできた全ての元凶は、アイツなんだよ!」

 奏美は声を張り上げつつ、持ち前の銃で応戦する。互いのオートミストもエネルギー弾を乱射し、辺りは光の弾幕と黒い煙に包まれた。


 御鷹は訊ねる。

「一体……何がアンタをそうさせたんだ! 竜也!」

 幾度となく竜也と対立している彼は、何か事情があることを察したようだ。竜也はため息をつき、己の過去を語り始める。

「忘れもしない。あれは十三年前のことだった――――」

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