対策
翌日、紅蓮は再び愛恋のもとを訪ねていた。彼女は先ず、愛恋から情報を聞き出そうと試みる。
「なあ愛恋……御鷹の使っているメタルミストは、ナノマシンにもなれるのか?」
「わからないね。だけど、良い発想だ。要するに、奏美の作ったナノマシンに対抗するためのナノマシンを作ろうという話だね?」
「……話が早くて助かるぜ。案外、オメェって奴は賢いんだな」
話は一瞬にしてまとまった。
「行こう……紅蓮」
「いや、アイツら全員を敵に回しても、オレ一人で充分だ。オメェには、瑞葉を守ってもらうぜ」
「わかった……任せたよ」
二人が救わなければならないものは、御鷹だけではない。彼の他にも、愛恋はこの集落を守らなければならないのだ。
「オメェはアイツの弱さを知っている。けどな、アイツの強さをよく知っているのは……オレだよ」
紅蓮はそう言い残し、その場を後にした。
さっそく、彼女は研究所に赴いた。無論、彼女の扱える武器は炎だけだ。紅蓮は義足に炎をまとい、出入り口を蹴り飛ばす。彼女は施設内を見渡し、大声を張り上げる。
「今日はオレ一人だ! オメェら全員、束になってかかってきな!」
その声は、研究所の隅々にまで響き渡った。
彼女を警戒し、奏美は言う。
「紅蓮はワタシたちの話を聞いていた。アイツがここに来たということは、何か企んでるってことだね」
鋭い推測である。竜也はすぐに銃を構え、強気な発言をする。
「だったら、僕たちが奴を倒してしまえば良い。違うか? 下手に行動をためらって何もできずにいたら、それこそ奴の思うつぼだ。違うか?」
好戦的な彼に、逃げるという選択肢はほとんどない。奏美は深くうなずき、メタルミストを剣に変形させた。
「御鷹……アナタも戦おう。紅蓮はおそらく、アナタの頭からナノマシンを取り除きたいのかも知れないけど……アナタの殺人衝動を制御できるのはワタシだけだから」
半ば脅迫に等しい指示だ。御鷹は無言で立ち上がり、不定形のメタルミストを操りながら歩き始めた。今の彼は――――
「殺す……マグスを……殺す……」
――――殺人衝動に取りつかれている。
三人の目の前に、紅蓮が現れる。
「待たせたな。さあ、かかってこい」
彼女の挑発に乗り、マグスバスターたちは一斉に駆け出す。奏美は剣を振り回し、竜也はエネルギー弾を乱射し、御鷹はメタルミストを乱雑に変形させて戦うが、いずれの攻撃も標的には通用していない。紅蓮は狭い空間の中を自由に駆け回り、全ての攻撃をかわしている。彼女は両腕に炎を溜め、それを勢いよく発射する。
「ふーん、やるねぇ……」
「強い……」
「殺す……」
三人はすぐに盾を作り出し、己の身を守ろうとする。盾は徐々に焼け落ち、亀裂からは炎の一部が漏れ出している。
「まだ、全力じゃねぇぞ」
紅蓮がそう言い放ったのと同時に、彼女の放つ炎の火力は倍増した。三つの盾は一瞬にして破壊され、奏美たちは灼熱の炎に包まれる。紅蓮は俊敏な動きで御鷹との間合いを詰め、彼の耳元で囁く。
「メタルミストでナノマシンを作れ。殺人衝動を抑えるための、ナノマシンをな」
この一言により、御鷹は彼女の真意を理解した。彼は一瞬だけ正気を取り戻し、深くうなずく。しかし、彼は依然としてナノマシンに脳を操られている。御鷹は再び豹変し、紅蓮への攻撃を始める。
「殺す……殺す……」
「殺せるモンならやってみろ! オメェらが束になったところで、このオレを倒すことはできねぇぞ!」
「殺す!」
稲妻のようなエネルギーをまとった鉄の塊が、ぐにゃぐにゃと蠢きながら紅蓮の身に迫る。彼女は全身から炎を放つことによってそれを溶かし、一時的に分解する。
「さあ来い……御鷹! オメェの力を見せてみろ!」
そう言い放った彼女は、どことなく真剣な表情をしていた。




