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量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました  作者: 星野林


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侵攻失敗の爪痕

「やりましたね隊長……いや、サキー隊長!」


「ああ、そうだね……いやぁ私も遂にネームドか。長いようで短かったかな……」


 感慨深く感じている隊長はボクのバーンという名前も良い名前をもらったねって褒めてくれた。


「名前を貰えたら魔族って強くなれるんでしたっけ?」


「そうだよ。名付けられたことに対して数日後に体に変化が起こるはずだ。力が強くなったり、魔法に対しての適性が上がったり……色々ね」


 サキー隊長はネームドになったことでのメリットを色々教えてくれる。


 デメリットとしては名付けた人を裏切れなくなったわけだけど、魔王軍に所属している以上裏切ることは考えてないから意味のないデメリットである。


「そう言えば上司さんの名前を聞いてませんでしたが……」


「あの人はイビル大隊長だよ。この基地に5人しかいない中位魔族だよ」


「あの人で中位……」


 上位者の迫力があったけど……あれで中位なのか……。


 〈中の中ってところかな。でもバーン。お前も名前が与えられたことで数日後にはそれくらいの強さには成れるはずだぞ。それこそサキー隊長を超えてな〉


(サキー隊長の実力超えちゃうの?)


 〈ああ、ドラゴノイドという種族の成長力的にな。さてと……デバスのところに行って、提出しなくて済んだ剣や槍とかを売りに行こうぜ〉


(うん! そうだね!)


 ボクはデバスのところに向かうのだった。






「じゃあ名前が与えられたんだ……順調に出世しているね! おめでとう! えっと……バーンだっけ?」


「そうそう! 新しい名前はバーン! ドラゴノイドのバーンだよ!」


「そっか……偉くなっちゃったから僕との関係も終わりかな?」


「ん? 何を言っているの?」


 デバスはボクがネームドになったから、もっと地位の高い人と取引をしたりするんじゃないのって聞いてきたけど、


「何言ってるの。ボクとデバスは友達じゃないか……地位が上がったところで友情はなくならないよ」


「う、うん……バーンがそう言ってくれると……嬉しい」


 デバスは嬉し泣きしながら、ボクの手を握ってくれる。


 今後ともよろしく……と。


「それに、名前が与えられたことで魔法の出力も強くなるから、治癒魔法の威力も上がるから、デバスの角を治すのも、もっとよくなるかもよ!」


「そうかな……そうだといいな~」


 デバスは本当に治るかまだ半信半疑って感じだけど、治ったら嬉しいなって言っていた。


 それにボクが持ってきた剣や槍を鑑定してもらうと、量産品だけど、今回の敗戦で武器を失った魔族が多いから武器の需要は大きいって言われ、ボクは魔道書と交換できるなら魔道書を。


 次点でミートスライムと交換して欲しいって伝えると、デバスは了解してくれて、


「数日後には集められるようにしておくよ。ミートスライムは何匹欲しい?」


「とりあえず2匹で、ミートスライム以外にも食料作り出してくれる魔物とかいる?」


「そうだね……ちょっと探してみるよ。じゃあ魔道書優先だけど、無ければ食料を生み出す魔物ね」


「うん、お願い。あと鉄鍋もちょうだい」


「わかったよ。用意しておくね!」


 デバスに略奪品の売却も行なって、預かってもらっていた魔道書類も返してもらい、ボクは営舎へと戻るのだった。






 営舎では片腕を失っているウルフさんだったり、皆傷だらけで横になったりしていた。


「おう……隊長から聞いたよ。バーン上手くやったな」


「ウルフさん……それに皆……今治療しますから!」


「悪いな……いてて……バーンが撤退の時に部隊にいなかったからてっきり死んだかと思ってたが、まさか略奪に成功しているとはな……」


 ボクはすぐに治癒魔法でウルフさん含めて、営舎にいる仲間を治療していく。


「カバの人やオークの姉さんは……」


「ああ、アイツらは駄目だった。カバは運悪く矢がこめかみに刺さって……オークは分からねぇけど、帰ってないってことはそういうことだ」


 サキー隊のメンバーで生き残ったのは5名だけ。


 サキー隊長、ボク、ウルフさん……それに古参の2人だけ。


 新兵の雑兵達は全滅だと。


 8人で使える営舎が凄く広く感じる。


「ふぅ……傷が塞がった。痛みもそれほど感じねぇ」


「ボク、名前が与えられたので、名前が体に馴染めば腕の再生もできるかと」


「そうか……それだと助かる。片腕だと自慢の大剣が振るえないからな」


「もう少し我慢してください」


 次にぐったりしている古参の人達も治療を施していき、皆の分の食事を取りに行く。


 いつも賑わっている食事の配給所は今日は閑散としていて、活気が全くない。


「次の人」


「サキー隊隊員4名分」


「……あいよ」


 酷く冷めた目で人数分の食事を渡された。


 〈たぶん死んだ仲間の人数を言って食事を多く受け取っていると思われたな〉


(ああ……この状態だと仕方がないね)


 〈食事を取ったらサキー隊長のところに顔を出しておけ〉


(了解)


 営舎のテントに食事を運び、食べる元気がない人にはボクが介護して食べさせてあげて、ボクも食事を取る。


「またゲラゲラ笑いながら焼肉食べましょうね」


「そりゃいいな。肉を沢山食べたいぜ」


「ウルフさんも両手でいっぱい肉を食べましょう!」


「そうだな! お前ら気引き締めろ。こんなところで死ぬんじゃねぇぞ!」


 返事は弱々しくオーって返ってくる。


 サキー隊長でもわかるくらい難しい作戦だったのに強行した上層部に少し怒りが湧いてくるが、その気持ちを押し殺して、食事を終えた後に、ボクはサキー隊長のテントを訪れた。


「サキー隊長いますか?」


「ん? バーンか! 今飲み物でも出そう」


 そう言うと、サキー隊長はコップを取り出すと魔法で水を生み出して、そこにシロップみたいな黄色い液体を入れる。


 〈味は……レモネードに近いな。なんだろうかこれは? 〉


「これは?」


「ドライアドの蜜が入れてある。なに、定期的に私は仕入れられるから気にしないでくれ」


 〈隊長は隊長で独自に物資の流通を握ってるなこりゃ〉


(それよりも隊長にボクは水魔法を教わりたいよ)


 〈確かに……聞いてみれば良いんじゃないか? 〉


「隊長、今度でいいので……水を生み出す魔法教えてくれませんか?」


「ん? いいよ! 当分暇だろうし……この後にでも教えようか」


「そうですね……ただ今後どうなるか、ボクはどう動けばいいのか教えてくださると幸いなんですけど」


「ふむ……そうだね……」


 隊長はコップをテーブルに置くと、説明を始めてくれた。


 まず前提として今回の砦攻略は基地にいる上層部も乗り気ではなかったが、上からの指示であり、やらざる得なかったというのがある。


 イビル大隊長はボクの略奪品で少なからずの戦果を得れたから処罰の対象からは外されるだろうけど、他の人達は更迭か降格処分か……基地長に至っては責任を取らされて処刑される可能性もあるとのこと。


「たぶんどれぐらい後か分からないけど……基地長よりも上の人が来て何かしら動きがあるだろうね。それまでは基地としては攻撃とかは特に行わないつもりだよ」


「なるほど……」


「あとバーンは名前が与えられたから……これからは私の副官ね」


「いいんですか?」


「頭良いし、自分で考えることもできるから大丈夫。それにこうやって私に魔法を教えてもらおうとかの向上心もあるからね。将来的には部隊を持つことになるだろうけど……それまでの予行練習にはちょうどいいでしょ」


「わかりました。副官の任頑張ります」


「うん。さてと……今回の作戦の影響の方を考えようか」


 サキー隊長は帽子のズレを直すと、再び語り始めた。


 まず人間側も今回の侵攻で大打撃を受けたのには変わりなく、こちらを侵攻するような余力は無いと見てい良い。


 たぶん援軍なら魔王軍の方が補充が早いかもしれない。


 ただ魔王軍も逆に侵攻する余裕は全く無いから半年から1年は自然休戦の流れになるだろうって言われた。


 やるとしても周辺の村を襲って人間側の兵に防衛の負担をかけさせることくらいだろうと。


「私の部隊も古参兵が多く亡くなったから、再編に時間がかかると思う」


「あの……それで今友達と研究しているのがあるんですけど」


「ふむ……人を魔族に変える魔法」


 隊長はその話を真剣に聞くのだった。

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