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量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました  作者: 星野林


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名前ゲット

 デバスの治療をしていたある日、《オレ》が解読に行き詰まっていた禁書の方の魔道書をデバスに見せてみろって言われた。


 もしかしたら悪魔族のデバスならこれが読めるかもしれないと……あんまり期待していなかったけど、デバスに本を見せてみると、


「これ……悪魔族の召喚魔法に近い……かも。僕なら多少読めるけど」


「本当!」


 以外や以外、デバスがこの本を読むことができるとのことで、ボクが彼女を治療する代わりに、デバスが本の内容をボクに教えてくれる契約を結んだ。


 悪魔族は契約を結ぶと相手が不履行をした時以外契約を破棄することができない。


 彼女なりの信頼の証なのだろう。


「それでこの本はどんな本なの?」


「う、うん……たぶん魂と肉体を変質させる魔道書って書いてある」


 書かれているメモの内容は暗号化されていたが、これもデバスは簡単に解読して、


「たぶんこの本を作っていた人は人類を守護する天使を作り出したかったんだろうと思う。実際には人工的に魔族を作り出してしまう魔法になってるけど」


「す、凄い魔法じゃん! 人を攫えば魔族にできるってことでしょ?」


「う、うん……ただ主従契約を結ぶ時に触媒となる代償が必要って書いてあるよ」


「触媒……ボクの血肉とかでいける?」


「う、うん……たぶん足りると思う。ドラゴはドラゴノイドだから下級とはいえドラゴンの素材で肉体が生成されていると思うし……たぶん僕でもできるけど、結構な血液を要求されるかも……」


 治癒魔法を使うこと前提の禁術ってことだろうか。


 〈肉体的な強者は《オレ》達の強さだと主従関係を結ばせるのは難しいかもしれないが、ここの魂には《オレ》がいる。普通の魂とは違い、《オレ》の魂は上位世界より下に落ちてきた魂だし、お前と単純に2人分の魂が肉体に宿ってることになる。強力な魂でも主従関係を結んで人間を魔族に落とさせることは可能なんじゃねぇかな〉


(なるほど……使い道は色々ありそうだけど、とりあえずデバスに習って、その術を使えるようにしないとね)


 〈まぁ禁術って言うのも何だが、吸血鬼はこれを自前でできるんだがな。血を吸って眷属作るの〉


(あー……なるほど)


 とりあえずボクはデバスにこの魔法を教えてもらうのだった。







 数週間後、ボクらの部隊の人員も補充され……だけど、ほとんどが知能が幼児並みのゴブリンとかスライムとか。


 一応ボクみたい……とはいかないけどキメラの様な種族的にはそこそこ強いハズの量産兵を受け取ったけど、ボクみたいに感情とか理性があるわけじゃなくて、下級ゴーレムみたいに指示されたことしかできない状態。


 隊長の言うことを聞いてくれそうなのはウルフさんやボクを含めて10名だけ。


 隊長は部隊をどうやって運用するか頭を悩ませていたけど、今日、基地にいる魔王軍全体で大規模な作戦に出ると伝えられた。


 作戦目標は人間側の砦の攻略。


 人間側の抵抗も激しいだろうが、ここの砦を落とせれば周辺に人間側の防衛拠点は40キロ以上後退することになるのだとか。


 そうなれば周辺の村は襲い放題になる。


 魔王軍側は勝った後のことを考えて、浮かれていた。


「隊長……こっそりでいいんですけど……勝てますか?」


「本当に君は量産兵なのかい? ……まぁ良いや生き残って欲しいから伝えるけど、だいぶ厳しいんじゃないだろうか。正直強い兵士は生き残れるだろうけど、人間側もここを落とされたらまずいってわかってるから必死さ。ドラゴ死なないでね」


「あー生き残れるように頑張ります」


 結構悲痛な覚悟でボクは従軍するのだった。






 〈お? この地形というかマップ知ってるぞ。何度かゲームで出てきた場所だ〉


(《オレ》何か知ってるの? 死にたくないから有益な情報あったら教えてほしいんだけど)


 〈ちょっと待ってな……思い出すから……ああ、砦と川のあるマップだ。乱戦になったら収納袋の荷物を捨てて、川に飛び込め〉


(ええ! 川飛び込むの!)


 〈大切な物はデバスに預かってもらってるから今あるのミートスライムとか食料品くらいだろ。そんなの後で幾らでも手に入る。川の流れに沿って下流に行ければ、砦を攻めるより美味しい思いができるはずだ〉


(信じるからね……)


 そうこうしていると攻撃命令が始まり、ボクは頭を盾で石や弓を防ぎながら川の方へと寄っていく。


 途中で荷物を捨てながら、覚悟を決めて川にダイブ。


 泳ぐ訓練なんてしてなかったから、息を吸い込んで、川の流れに身を任せる。


 途中で岩に体をこすりつけて、傷だらけになるけど、戦乱の騒音が聞こえなくなったところで川岸に出る。


 治癒魔法で身体中の擦り傷を治していくと、砦や防壁の奥に出ることができたっぽい。


 〈さてと、回復しながら道沿いに進んでいけば町があるはずだ。今は兵士や冒険者とかは砦を守るために多くが出払っているはず。ボヤ騒ぎを起こして、町の住民の注意を引きつけた後に泥棒するぞ〉


(う、うん!)


《オレ》の言う通り道沿いを進んでいくと町があり、一応壁で囲われていたけど、空を飛べるボクには関係ない。


 闇夜に紛れて街の中に侵入すると、《オレ》が商家とか物資集積所とかの目星を付け、寝藁とかが蓄えてある馬小屋に火をつける。


 そのままボクは騒ぎに乗じて人気が無くなった物資集積所で金目の物を略奪していく。


 〈魔法の杖とかを重点的に収納袋に入れていけ……お、ここは当たりだな。色々な物資ごとに性能の良い収納袋に入れてある。ある程度の重さは持ち運べるよな? 〉


(うん! ボクの力なら馬1頭くらいは運べる)


 〈よしよし、魔法の杖や保存食とか盗めそうなの片っ端から盗んでいくぞ〉


(《オレ》見て……魔石の入った袋があったよ!)


 〈でかした! ……よし、時間をかけ過ぎると人が集まってくる。これくらいで逃げるぞ〉


(はーい!)


 ズッシリ重いけど飛べなくはないので、闇夜に紛れて防壁を越え、川に沿って上流を目指す。


 すると砦からはまだ悲鳴とかが上がっていたので、まだ戦ってるっぽい。


 〈気にするな。砦の物資を奪ったって方向すれば戦果として隊長は認めてくれるだろう〉


(うん、そうだね)


 砦からちょっと距離を取りながらボクは魔王軍の野営していた場所に向かったが、そこは既に撤退した後だったらしく、砦の攻略は失敗したっぽい。


 〈やっぱりダメだったか……追撃が来る前に基地に撤退するぞ〉


(了解!)


 色々荷物を持っているので、移動速度は遅いけど、特に襲われることもなく基地に撤退することに成功。


 すぐに隊長に帰還したことを報告した。


「ドラゴ生きていたか! 良かった〜」


「すみません、乱戦になった時に色々あって……ただボク頑張りました!」


 ドサッとボクは背負っていたり、身体中に括り付けた収納袋をその場に置く。


「砦の物資とかを引っこ抜いてきました! 武器や魔石もこんなに沢山!」


「お、おお! でかした!」


 隊長は大喜び。


 隊長によると、ボクらの部隊は前々から隊長が死人が出にくい作戦を取っていたけど、それが消極的行為って見なされて問題視されていたのだとか。


 ただこれだけ敵から物資を奪ってくれば十分な功績となる。


 それに砦攻略に負けたので、隊長の上司も少しでもいい報告が聞きたいはずだから、相手の砦の物資を奪ってきたとなれば鬱憤も少しは晴れるだろう……とのこと。


 隊長はすぐにボクを連れて上司に報告しに行くと、上司は真っ青な顔をしていたが、ボクが略奪に成功した報告をすると、一転して安堵の表情に。


 上司は失敗の責任を押し付けられて降格処分にさせられそうになっていたらしいが、これでなんとか降格は免れる……と。


「よくやってくれた! 名前はないのか君は」


「はい、量産兵のドラゴノイドです」


「いや~格別の働きをしてくれた。ハーピーの隊長と共に名前を付けてあげよう」


「ほ、本当ですか!」


 隊長も大喜び。


 ボクにはバーンという名前が。


 隊長にはサキーという名前が上司の手により与えられた。


 上司の権限で名前が与えられる兵士の数は5名までらしいので、どれだけ喜んでいたかよくわかる。


「以後も精進するように」


「「は!」」

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