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第四十二話 気にしたらダメって言われても……


「白月!! この写真に写っているこの人だが......何でこんな写真があるんだよ!!」



そんなおかしな事を言う花宮さんの顔は、今までに我々が見た事がないような焦り顔だった。



「え......これは......先代月魄メンバーの写真じゃないかな? 残念ですが、俺がこの中で知っている人は誰一人いませんが......」


「そ、そうか……すまない、正気を取り乱しちまった......。。この人、私の知り合いでな......」


「知り合い!? もっとその人の事聞かせてください!」


「......さて、掃除に戻るか。後は片付けだけだから、もう少しだけ待っててくれ......」




と言い残して、ドアをパタン、と閉めていった。


俺の質問に答えないと言う事は......やはり過去を秘密にしているのかな......。




「......やっぱり、無理矢理聞くのは良くないよ。聞けば聞くほど、言う気が失せちゃうかもしれないし......」


「そうだな......ポロっと言ってくれる時まで、気にしないでおこうぜ」



という結論で、取り敢えず、この会議は終わった。



愛佳と同様に、無理に手探りする必要はないのだ。......俺だって、昔の事は自分からは話したくないし。







花宮さんの掃除も終わり、みんなリビングに戻って、それぞれやるべき事をやり始めた。



俺のやる事、と言えば「現実は辛いから異世界でチヤホヤされたい」というソシャゲである。


夏はイベントが盛りだくさんだから、周回しようがあるのだ。上位報酬のハークス様SRを獲得しなくては気が済まない。......これが原因で勉強を疎かにしていたのだ。


だが! もうテストは終わった! 今こそイベントに専念するべきだ!!




「......そんなにソシャゲが大事なんですか?」




声のする方に顔を向けると、三月が棒アイスを食べながら椅子に座っていた。



「当たり前だよ。沼にハマってしまった以上、サービス終了まで全力でこのソシャゲを愛するべきさ」


「へぇ......私の記憶探しより大事ですか?」


「そ、そんな事ないだろ!? 三月の記憶の方が大切に決まってるだろ!!」


「......そうですか。最近、本来の目的を忘れている気がして......」




......確かにここ最近、三月の記憶の手掛かりが全く見つからない。やっぱり、夏音市のヒントがラストだったのだろうか......?




「まあいいです。あ、そうだ大家さん、オムライスの作り方を......大家さん? 大家さんってば」




 三月が何回も花宮さんの事を呼んでも、花宮さんは反応しなかった。それもその筈、カーペットに座りながら、さっきの写真をずーっと見ているのだから。



「大家さん!!」


「うわぁっ!? み、三月、急に顔を除き込むなよ......オムライスの作り方だっけ? まだ三時なんだから、今作る必要ないだろ。五時半になったら教えるから、また私の所に来てくれ......」



と言って、花宮さんは立ち上がり、玄関の方へと向かった。



 チラっと写真が見えたのだが、その写真には、怖い顔をした男性が座っていた。恐らくこの人が、花宮さんの知り合いなのだろう。




「柳水くん、三月ちゃん、さっきの会議で結論ついたでしょ。無理やり探らないって」




 花宮さんに入れ替わり、玄関から出てきたのは、愛佳だった。




「あ、愛佳さん......そうですね。無理に触れたら迷惑ですもんね......」


「まぁ......そうかもしれないね。あ、そういえば今日三時半からレイレ......ファントムRの生配信だったじゃん。二人も見るでしょ?」


「はい! 私の記憶探しの原点は、ファントムRさんなんですから!」




愛佳の提案で、場の空気は良くなった。また今日の配信で、何かヒントがあるかもしれないから……。







時刻は七時頃。


一旦アジトから出て、三月に部屋で待っててくれと頼まれて、あのゲームをやって待っていると、エプロンを纏い、オムライスを運んだ三月が戻ってきた。



「お、お待たせしました......」



この部屋中に、美味しそうなオムライスの香りが広がった。そして、テーブルに置かれたオムライスを見ると、ケチャップでハートが書かれていた。



「は、ハートまで書いちゃってどうしたの?」


「え、だって大家さんが言ってましたよ? オムライスにケチャップでハートを書いて食べるのが普通だって......」




 三月はキョトンとした顔で、俺の顔を見てきた。よく見ると、三月の分のオムライスにも、ハートが書かれていた。......無知って怖い。ま、知らないフリしておこう。 




「ど、どうぞ食べてください......」



三月はスプーンを持ってオムライスをすくい、俺の口元に近づけた。



「じ、自分で食べられるから、そんな事しなくても......」


「も、もう手が疲れました。早く食べちゃってくださいよ......」



スプーンを持っただけで手が疲れてしまった三月の為に、恥ずかしながらも、俺はスプーンに乗ったオムライスを、パクりと口に入れた。



「お、お味はいかがですか......?」


「......うん! とても美味しい! フワフワな卵に包まれたチキンライスが、最高に風味を引き出しているよ!」


「ほ、本当ですか!? 嬉しいです!!」



三月は嬉しそうににこっと笑って、小さくガッツポーズをした。


初めてにしては、とても上出来だと思う。花宮さんの教え方は上手なんだな。



「......そういえば、花宮さんは?」


「用事があるから、後で食べるそうです。部屋にも入って来るなと......」


「そうか......やっぱり、なんだか花宮さんの事、気になっちゃうよな......」



結論を出したものの、やっぱり気になってしまう。


あの人、自分の昔の話とか全然してくれないし、どうしてこんな過疎地域にアパートを建てたのかも謎である。



俺はともかく、少なくとも、三月だけには教えてやって欲しい。


同じ建物に住む同居人みたいな者だし、お隣さんとのコミュニケーション......とまではいかないけど、少しくらいは教えてあげてもいいんじゃないのか? とも思うのだが......。



「咲斗くん、ほっぺたにお米が付いてますよ。取ってあげます」


「あ、すまない......料理、また作ってくれるか?」


「も、勿論です! 今度はパエリアでもご馳走して上げます!」


「難易度急に上がった!? さ、流石に花宮さんも、パエリアの作り方は分からないんじゃない?」


「大丈夫です。大家さん、料理なら何でも作れますから」



パエリアまで作れちゃうのか......もしかして、花宮さんの本業はシェフなのか?


一つの仮説をたてながら、俺はオムライスをまた一口、口に運ぶのだった。



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