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第四十一話 アジトの掃除

 ジリジリと熱気が出てくるアスファルトを見て、卯月町にも、夏がやって来たんだなと感じた。



制服も半袖に衣替えして、夏の暑さ対策をしているのにも関わらず、日差しが俺の肌を暑くさせる。


だが、そう感じているのは、俺だけではないようだ。




「──あっつー......どうにかならないのかなー、この暑さ」


「ああ......毎年言ってるけど、今年は特にヤバいね......月魄のみんなの分のアイスでも買ってあげようか」


「いいねぇ......私チョコミント......」




そう言いながら愛佳は、自前のうちわを、顔に向かって仰いだ。うちわで仰いだ風が、愛佳の髪を舞い上げた。



何でこんな真昼間に帰っているかというと今日はテスト終わりで早帰りだったので、昼には帰ることが出来たのだ。 え、テストの出来具合? ......聞かないで。




「ねぇ柳水くん、今コミュバン付けてないのに、よくこんなに私と話せるよね」


「失礼だな。もう月魄のみんなだったら普通に話せるよ」


「そっかぁ......昔はいっぱい話せてたのに、中学校の時に何があったの?」


「......お前だって、中学校の頃の話なんかしたくないだろ?」


「そ、そうだけど......ごめんね」


「まあ、いつかお互い、話せる日が来るさ。それまで残しておこうぜ」


「......だね!」



愛佳はニコッとした顔で、俺の方を見てきた。


そう、まだ話す必要なんてないのだ。また話せる日が来るまで、お互い秘密という事にしておこう。



そう自分に言い聞かせ、暑い路地を歩くのであった。






商店街のスーパーでアイスを買った後、フラワーパレスの空き部屋のドアにスマホをかざし、「リンク・オープン!」と叫んで、無事アジトに辿り着いた。




「ただいまぁ~......あー涼しー!」


「あ、お帰りなさい、咲斗くん、愛佳さん」




 真っ先に出迎えてくれたのは、ジーンズ生地のスカートを履いた三月だった。


三月も夏服にチェンジして、ますます夏だな感じる。




「さて、早速中に入りますか......」


「あ、咲斗くんストップ!」


「え、どうして......ゲホッ! な、何で部屋中ホコリまみれなの!?」




リビングはホコリで溢れかえっていて、そのホコリの中で掃除していたのは、マスクを付けた花宮さんだった。




「ん、お帰り。咲ちゃん、愛佳」


「ちょっと花宮さん! 何でこんな時期に大掃除なんてしてるんですか!」


「白月に掃除しろって頼まれたんだよ。なぁ?」




矛先が向かったのは、パソコン作業をしている涼太くんだった。こんなホコリまみれなのにも関わらず、よくやってられんな......。




「いや......何か手伝う事はあるって聞かれたから、掃除を頼んだんだけど......ここまでの壮大スケールの掃除は頼んでなかったんだけどな......」


「え? どうせ年末になったって、あんたら大掃除なんかやらないだろ。このホコリがそれを物語ってるしな」




確かに、このホコリ量は異常だけど......でも、それ今やります?




「まぁ申し訳ねぇが、ホコリが嫌なら、ちょっと別の部屋にでも行っててくれ。あと30分位で終わるからよ......」


「じ、じゃあ俺の部屋にでも来な。ほら、アイス冷蔵庫に入れて、早く」


「は、はぁ......」




涼太くんに急かされながらアイスを冷蔵庫にしまい、我々は涼太くんの部屋へと足を運ばせた。







涼太くんの部屋に入り、俺は涼太くんのベットに腰を下ろした。続いて三月も俺の隣に座って来た。その前には、荷物を降ろし、タオルで汗を拭いている愛佳に、その隣には、何やら険しい顔をした涼太くんが胡坐(あぐら)をかきながら座っていた。




「そういえば、佐田姉妹は?」


「まだ学校です。帰宅は五時位だと......」


「そっか......」




 そんな何気ない会話を交わしていると、突然、涼太くんが口を動かした。




「......花宮さんって、一体何者なんだ?」




 その一言は、ここにいる全員が思っていた事だった。確かな情報は何かと聞かれて応えられるのは、



・アパート「フラワーパレス」の大家である。


・ヌンチャクを扱うのが得意で、メカ二ズミカルの団員を倒す程の実力を持っている。


・三月の保護者である。



......この三点だ。




「なあ咲斗、花宮さんと知り合ったのはいつ頃だ? この中で一番長い付き合いだろ?」


「えっと......確か中学一年生の春頃かな? アパートが完成したって言うから、当時の友達と見に行ったんだけど、花宮さんにギロッと睨まれて、めっちゃ怖かったのを覚えてる......最初は男だと思ってたけどさ、声を聞いて女性だって分かった時の衝撃は凄かったなぁ......」


「それだよ。花宮さんって、何であんな男っぽい口調してんだ?」




 そんな議論に入った時、三月が小さく手を挙げた。




「それは個性だと思います。もしもあの口調が元からだったら、花宮さんがかわいそうですよ」


「......そうだよな。悪かった、三月。そうだ、何か三月は知っている事はあるか?」


「特に変わっていることは分かりませんが......堂桜子さんというご友人と仲が良いようです。よくフラワーパレスに遊びに来るんですもしかしたら、堂桜子さんが何か知っているかもしれないですが......」


「堂桜子さん、かぁ......」




 その堂桜子さんという人物の話題で、話は途切れてしまった。うーん......とみんなが頭を悩ませていると、ドタドタと凄い速さで廊下を走って来る音が聞こえた。そして、この部屋のドアが開かれ、花宮さんは焦った様子でこう言った。





「白月!! この写真に写っているこの人だが......何でこんな写真があるんだよ!!」








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