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第三十六話 帰りはどうすんだ......

「......という訳だ。本当に下らない話だっただろ?」


「そ、そんな事ないよボス! 確かにもう観覧車降りて、退園ゲート潜って、ベンチに座るって感じで、話している間にもうバイバイする時間になっちゃったけど、楽しかったよ?」



乙葉の言う通り、もう辺は暗くなってしまった。手短に話したつもりだったのだが、思いの外口が止まらなかったようだ。アイツの話でこんなに時間を使うなんてな......。



「あ、そろそろ私帰らなきゃ! 今日兄貴が寿司奢ってくれるの!」


「そ、それは良かったな...... 兄貴さんにも宜しく言っておいてくれ......」


 乙葉には兄貴さんがいる。メカ二ズミカルスカウトする時に一緒にいたのだが、色々と頭を下げながら契約を取ったもんだから、今はあまり会いたいという印象は持ってない。


「うん! じゃあ、今日は楽しかったよ! また行こうね!」



 着慣れてない丈の長いスカートを履いた乙葉は、暗い駅の方へと向かっていった。さてと、俺も帰るとするかな......あれ、俺は何処に帰ればいいんだ?


 乙葉に頼んで家に泊まらせてもらうか......いやいやいや! あの兄貴さんと同じ屋根の下で一晩過ごすとか絶対無理だし! 揉めそうで怖いし!


 ──やっぱりアジトに戻るか? いや、ここからアジトに一人で向かおうとしたら、早くても五時間はかかってしまう。そんな体力今はないし、今はGWだから、ホテルなんてどこも満室だろうし......。


 ──申し訳ない、許してくれ......。



                        ※



「......休みにしてくれるんじゃなかったんですか、ボス」


「あ、頭が上がりません......」



 電話を掛けて一時間後、里島が例のキャンピングカーを走らせて、俺を迎えに来てくれた。


 休みにしよう! という提案を一番最初に伝えた人物を、一番最初に裏切ってしまった。ボス失格、いや、人間として失格だ。もう今日は里島に敬語で話さないと気が済まない......。



「ま、活動内には入ってないから、セーフという形で済ましておきます。私も暇で、一日中、溜めておいた録画を消費していましたから、いつでも出動できましたし、困ったことはないんですけど」


「は、はい......」


「ボス、敬語で話すのはやめてください。私まで気が狂いそうです。反省したいという思いがあるのならば、動画編集をしていてはどうでしょうか。それまでに私が空いている宿を探しておきますから」


「わ、悪いな......じゃあ、お言葉に甘えて......」



 

 こんな時だからこそ、自分の立ち位置を利用出来ていいものだ。あまりいい気はしないが......。


 まあ、里島にも了承を得ているから、いつも通り動画編集でもしようか......あれ、何だか今日は手が乗らないな。どうしたんだろうか?


「......サキアイ? タイトルが『サキアイ』って、どうしたんです?」


「っ!? な、何でサキアイの文字が入っているんだ!?」


「? ボスが入力していたからでしょう? 日頃の疲れが出ているんじゃないんですか?」


「......そうかもな。今日はお休みにするか......」



 俺は開いていたパソコンを閉じ、ケースの中にしまった。そして、息を大きく吐きながら、椅子を後ろに倒した。......何でなんだろうな、アイツが頭の中から離れない。それも、乙葉に話してから突然だ。過去の記憶を掘り返して決まった、か......。



「......昔みたいに、サキアイの事が気になってしまったんですかね。長年いれば、そんな事丸わかりですから。......そういえば、サキアイから電話を預かりました」


「そっ、そう言う事は早く言えよ! 何ていってたんだ?」


「私の口から伝えるより、録音した音声を聞くのがいいでしょう」



 そう言って里島は、スマホをカーナビに繋げて、録音アプリを開いた。そして、聞き覚えのある、"アイツ"の声が耳に入った




『......あ、里島さん? 今オフ? まぁ、そんな訳ないか、あのブラック企業のメカ二ズミカルが休みなんてくれる訳......ええええええ!?!?!? う、嘘でしょ......?』



......どいつもこいつも失礼だな。俺だって休みくらいは与えるに決まってるだろうが。




『ま、まあ分かったよ。それでさ、この前バス代出してくれてありがとうね。お陰で無事帰れたよ。......え、絵亜の事? まあいい相手だったよ。でも、そっちから来るなんて珍しいよね? もしかして指示なしで来ちゃった感じ? ......あ、やっぱり? まあ、でしょうね、の言葉に尽きるね! いやぁ、咲斗くんがいなかったら私完全に負けていたよー!』




 ......咲斗が? あいつ、サキアイよりも優れていたとでもいうのか? まあいつもの自虐ネタだろ、信じないとしよう。



『そ、それでさ、今日の夜、レイレンお借りしてもいいかな? ......え? 隙をついて倒すって? そんな事、今日はしないよ、乗り気じゃないからね。あ、もしも私がレイレンに傷を付けたとしたら、私を海に突き落としていいよ? ......ちょっと会いたくなっただけだから、じゃあよろしくね、バイバイ!』



「......以上です。正直な所を言うと、私も忘れていました。ま、休み補正で許してください。というわけで、ここから10km先の波止場に向けて、車を走らせますね」


「唐突すぎるだろ!? 嫌だ! 会いたくない!」


「子供みたいに駄々こねないでください。本当はサキアイと同じことを考えている癖に......」




 もう里島は、ハンドルを離そうとはしなかった。キャンピングカーは、徐々に海岸に距離を縮めながら、車を走らせて行った。ふざけんな......ふざけんなぁ......。




                       ※


「ふんふんふーん......あ、レイレン ! こんばん......は?」


「嫌だぁ! 休みの日くらい自由にさせろぉ!」


「どの口が言うんですか。ここまで来たんだから引き返せないですよ、さ、サキアイも何も持っていないから怯えないで、怖くない、怖くない......」


「そんな手が聞くとでも思ったか! ってああ! 車追い出さないで! 置いてくなぁぁぁぁ!!!」




 とうとう里島にも見捨てられてしまった俺は、暗い波止場に取り残されて、サキアイと二人きりになってしまった。あの野郎、給料減らすぞ......。



──嫌な気配。後ろを振り返ると、ニコっと笑うサキアイの姿があった。




「もう、そんな警戒しないでよ。ほら、武器なんて持ってないよ? ボディタッチでもする?」


「嫌だ! 無暗に触ってたまるかよ!」


「あっそ......まあいいんだけど、ちょっとここ、座って?」



 海際のコンクリートに座り、プラン、プランと、水面に足を浮かべさせている様子を映し出しているサキアイは、ポンポン、とここに座れと命令してきた。......少しは素直になってもいいかな。



「......学校にはもう慣れた?」


「ま、まあな......咲斗については、敵ポジションにいるとはわかってるのに、何だか仲良くなってしまうんだが、どうしてだと思う?」


「そりゃあ、気が合うからでしょ? 私も、あんあ咲斗くん、今まで見た事なかったもん」


「そうなのか......絵亜の件、悪かったな。関係ない所まで手を出しちまって」


「ん~、特別にそこの自販機でジュース奢ってくれるのなら、許してあげよう!」


「......昔から、そういう所は変わんねぇよな......」


 


 絵亜の尻拭いをする為に、仕方なく自販機コーナーへと向かった。......ここでハッキリと言うべきかな、今思っている事。いや、今の関係じゃ、言えたもんじゃない。一応今は、"ライバル"そんな関係なのだから。



「ほらよ、くらえっ」


「ひゃあっ!? ちょ、ちょっとレイレン! いきなり頬に缶ジュース付けてくるのは反則だよ!」


「いつものお返しだ、馬鹿」



 こんなやり取りも、あの時はよくやったもんだ。今となっては懐かしいものだ。



「もう......ぷはぁ!やっぱりサイダーは美味いねぇ」



 サキアイはふと、月を見上げた。月光が愛佳の顔を照らして、輝いて見えた。






「......実はね、恥ずかしながらも、アンタの夢を見ちゃったんだよね」


「......急に何言うんだよ。まさか、それを言う為に俺をここまで連れて来させたのか?」


「どっちかと言えば、そうだね。モヤモヤした気持ちを落ち着かせる為、って言うのが真の理由だけどさ」



 

 相変わらずおかしな事を口に出す奴だ。こんな方法じゃなくても、他に何かその、あっただろう?




「ねぇレイレン、折角なんだからさ、今思っている事、話てくれない? ...... 私も話したんだからさ。ほら、顔に出てるよ?」


「そ、そんな事......ひ、一つだけ聞いてくれないか? 俺らってさ、今後どう向き合っていくべきだと思う?」




 俺が投げかけた質問に対して、愛佳は口が止まってしまった。俺が思っているのと同じように、愛

佳にとっても難しい質問だったようだった。



 そして、考えがまとまったのか、大きなため息をついて、俺にいつもと変わりない笑顔を見せてきた。



「......今も敵同士、今後も敵同士、ってのはどう?」


「......サキアイはそれで良いのか?」


「うん。私はレイレンがちゃんとした心を持つまでは、敵同士って思ってるよ。だから、レイレンがまた変な武器作った時には、私らが対抗してやるから、覚悟しておきなよ?」


「...... そうかよ」




そうだ。俺とサキアイはもう友達同士なんかじゃない、敵同士だ。だから、今の関係を無理に変える必要なんてない。いいんだ、これでいいんだよ。




「── あースッキリした! 気も済んだし、もう帰っていいよ......何もじもじしてんの?」


「...... 帰る場所がないんだ。今日はワープ機能装置も持ってきてねぇから、アジトに戻ることすら出来ねぇし......」


「へー。じゃあ私の家に来る?」


「ばっ! い、今さっき敵同士でいるべきだって誓ったばっかりだろ!?」


「何言ってるの、このGW中はメカ二ズミカルは活動休止なんでしょ? だから、それまでは気にしないってことでいいじゃん? 別に私怒らないし」




 だからってそんな事......だが、このまま波止場で野宿っていうのはないな。明日には魚の餌になっているかもしれないし......。




「......仕方ねぇな、今日だけだぞ」


「何偉そうにしてんの? ......まあ今日だけだけど。ほら、バス探すから来て」




 愛佳は態度は冷たかったけど、その顔には少々の微笑みが残っていた。まるで、今日の月のようだった......。



11/5 実を言うと、まだこの話は未完成です。時間が足りないので、今日はここまでで勘弁してください。

11/9続きを書きました。

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