表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/54

第三十二話  愛佳との思いで浸り

突然襲いかかってきた絵里のせいで、すっかり夕方になってしまった。今日の七時半にはもう新幹線に乗って帰らなくては行けないため、そろそろこの街ともお別れだ。...... とは言っても、夏音市に繋がるワープゾーンがあるから、行きたいと思えば簡単に行けるから、また近いうちに行くことになるだろう。


「...... でもなんで、亮太くんまで一緒に卯月市に行くの? 」

「花宮さんのアパートに繋がるワープゾーンの動作確認だ。それに、サキアイがいつも来てるワープゾーンの点検も兼ねてな」

「り、リーダーは新幹線のチケット持ってるの?」

「キャンセル出たのを取ってきたから。サキアイ、なんか見られたくないものでもあるのか?」

「だってだって! 私の部屋に入るって事でしょ? 幾らリーダーでも中には入れたくないもん! 一応私だって女の子なんだから!」

「...... そうか、悪かったな」


亮太くんは反省した顔つきで、フォークに絡めたるスパゲッティを口に運んだ。


「でもいいのか? 旅の最後の料理がファミレスになってよ?」

「良いんですよ大家さん。そろそろお金だって少なくなってきましたし、最近のファミレスだって馬鹿に出来ないって、咲斗くんが教えてくれましたもん。ほら、私のオムライスも美味しいですから、口開けて食べてください」

「お、どれどれ...... 確かに六百八十円にしては美味いな...... ほら、私の海老フライも食ってみろ」


花宮さんはフォークに海老フライを刺し、三月の口へと運んだ。そして三月は、パクリと海老フライを頬張った。


「...... んんっ! 衣がサクサクしてて美味しいです! 海老フライって初めて食べました!」

「そうか...... まだ三月に海老フライ食わせた事なかったよな。また今度、作ってやるよ」

「わあい!! 楽しみです!!」


──なんだか本物の親子を見ているようだ。...... でも、これは本当に在るべき姿なのだろうか? 彼女らは本当の家族ではない。でも、愛情は家族並みである。仮に三月の母親と再開出来たとしても、今俺が見ている姿と同じ光景が見れるのであろうか? 三月はそれに対して、どんな感情を抱くのだろうか?


「ねぇ柳水くん、ずっとあの二人の事に見てるよね? 俺も料理交換し合いっこしたーい! って思ってるの?」

「違うわ! っておい勝手に俺のハンバーグ取るな! ...... んがっ!?」


愛佳は何かを俺の口に入れた。すると口内にドリアの味が広がった。


「ねぇ柳水くん? これがしたかったんでしょ? 特別だからね?」

「...... 本当に違うってば!!」


愛佳はニカっと、微笑みの顔を俺に見せた。そして、愛佳に誤解を生ませた後、亮太くんにうるさいと色々と叱られました。



お腹も満腹になり、無事みんな新幹線に乗れた。寝過ごして駅を過ぎる訳にも行かないので、俺は下車駅まで起きている事になってしまった。みんな旅に疲れたのか、ぐっすりと眠っている。ただ、一人を除いて。


「...... なぁ、まだ起きれるんだったら、俺寝てて良いか?」

「ダーメ! 話相手いないとつまんない!」


今日という今日は相当体力が消耗しているはずなのに、なんでこんなに愛佳は元気なのだろうか? 身体に何か仕込んでるのか?


「あっ柳水くん! 花火! 花火が見えるよ!」

「おお、ホントだ。五月にやるのって珍しいな...... でも、すぐ建物で隠れるな......」


電車ではなく、新幹線だから、花火はすぐ隠れるし、風の速さで景色が変わるから、じっくと見れる余裕もない。


「──なんか花火って、見てて悲しくなってこない?」

「え? 悲しいってどういう事だよ?」


突然そんなこと言うなんて、とうとう疲れが出てきたのか?


「だってさ、遊園地とかの閉園の時って、大体花火が上がるじゃん? それってさ、終わりだを告げているのと同じだと思うんだよね」


愛佳の眼は、なんだか寂しそうだった。ふと窓を見ると、また花火がビルの隙間に見えてきた。俺の頭には、こんな言葉が思い浮かんできた。


「...... 終わりを告げている分、今日はこんな事があったなーって、そして、楽しい思い出を作ってから、また花火を見ようって考えるのもありなんじゃないかな?」

「...... 咲斗くんはあいつにそっくりだね」

「あっごめん!また思い出させちゃって......」

「...... そういう楽しみを与えてくれる所がね! 別に気にしてないからさ。...... そうだ、折角こんな機会だから、少しだけ私の話に付き合ってくれない?」

「ああ、いいよ」

「ありがと。...... まだ私達が小学生の頃さ、仲良くしていた女子たちがいたじゃん?」

「ああ、確かにいたな」


 こんな所で言うのもアレだけど、実は俺と愛佳は同じ小学校に通っていた。...... とは言っても、俺達は当時一度も話したことがなく、「あ、いるなー」的な関係であった。


「ある時に、誰かが喧嘩していて、その喧嘩を柳水くんが止めようとしたのを覚えてる?」

「...... そんな事あったっけ? 全く覚えてないんだが」

「あったよー! それでさ、女子達は偽善者だの空気読めない奴だの言ってたんだけど、私はすごいなぁ、って感じたんだ。だって、喧嘩を止める勇気を持っているんだよ? すごいに決まってるじゃん! ......でも、私は周りに合わせちゃって、嘘の事を言ってたんだ。......ごめん」

「ううん、気にしなくていいよ。俺も覚えてないんだし」


 ......にしても、それは本当に俺なのだろうか? 俺がやった事なのだろうか? 俺はそんな度胸がある男だったのか?


「それで、小学校を卒業した後、私は卯月町外の中学校に行っちゃったから、そこから柳水くんの事は一切耳に入ってこなくて、度々思ったんだよ、どうしてるかなって。でもいざ高校に入ったら、あの時の柳水くんはもういなくて、完全に陰キャになっててさ、本当に驚いたよ。中学の頃に何があったの?」

「...... 色々な。陰キャになった理由ってのは確かに分かるんだが、まだ人にはちょっと言えないんだが、気持ちが落ち着いてきたら、また話してあげるから。だから今は、ごめん......」

「そっか...... 私も中学の頃についてはまだ言えないな。だからお互い様だね。でも、高校生になってから、こんなに柳水くんと仲良くなれるなんて夢にも思わなかったよ」

「俺もだ。まさか愛佳が俺に話しかけてくれるなんて思っていなかったからさ」


 神様も悪戯好きだな。こんなイベントを用意してくれるんだもん。


「また私、頑張ってみる。いつまでも弱気になってちゃいけないよね! 咲斗くん、また卯月町帰ったら一緒に三月ちゃんの記憶探しと、アイツの正気を戻すの、手伝って...... くれる...... ?」

「もちろんだ。一緒に頑張ろうな!! ...... てか愛佳、今咲斗って呼ばなかったか?」

「...... な、なんのことかなさっぱりわからないな、柳水くんって言ったよ?」


はい、眼が泳いでる。そこまでこだわる理由は何なのだろうか? まぁそんな理由は、今聞かなくたっていいかな。今は、花火の光を浴びながら、帰省を楽しむのが、一番楽しいだろうから......。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ