第十六話 裏で動き始める謎の青年
とある施設内、深夜帯にも関わらず俺は副業を頑張っていた。最初はノリでやってみたが、結構バズってきたから続けられてきたんだけど、その勢いはまだおさまらない。いつまでこの状態が続くかわからないけど、人気があるうちに稼いでおかないとな。
「さてと、今日はこの辺で終了しましょうかね。はい、今日もありがとうございました! また次の配信でお会いしましょう! バイバイ! …… ストリームオフ確認っと。ふぅ、このキャラ維持するのガチで辛いなぁ。お、投げ銭100000円って結構いい方じゃねえか。新しいキーボードでも買うか?」
俺は顔出し配信用につけていた仮面を外し、部下に買わせた缶コーヒーを飲みながら、今日の配信について一人反省会を始めようとしていた。
「ボス。お勤め終わり失礼致します。高牧一行が昨日16時から行方不明になりました」
「期待を込めて行かせたんだが......あいつは役に立たないなホントに。部下に入れたのが間違いだったな......」
──五幹部の中にでも最弱だったから仕方ないか......。だが、後の四人は只者じゃない、俺が見抜いた最強の部下共だからな......。それで、今話してるのは里島っていて五幹部のうちの一人で、主に軍内情報係に所属してる。いらないと思うが一応女だ。
「さてと......今後どうしていくかなぁ」
「本当どうしますか、ボス。このままじっとしていたら我が軍は段々とやられていって......」
──まあ確かに里島の言う通りだ。何か行動に移さないと何の進歩もないまま、最悪退化していってくようになってしまう。メカ二ズミカル解散の危機に立ち会う前に俺が動かないとな......。
「......仕方ない。俺もそろそろ動かないといけないな...... 不本意だが、情報が多い卯月町に偵察しにいくか」
「ほ、本当ですか! でも、どんな風に......ボスの服、幽霊みたいで怪しいですし......」
「いや、一応着替えるから大丈夫。てかそんなこと言ったらお前もスーツまとった人が急に田舎町に行くとか随分と怪しいからな。策は考えてある。まあとりあえずこれを見てくれ、里島」
俺はプロジェクタの電源を付け、近くにあった大画面スクリーンにに写した。
「ここは確か......卯月高校?」
「ああ、俺がここの学校に転校生として生徒から色々な情報を聞き出す。俺も一応来年度で17歳になるから年齢的には全然OKだからな」
「なるほど。てか私より5歳も年下だったんですね。驚きです。それで名前はどうするんです? またファントムRなんて仮名で使うんですか?」
「はぁ? んなわけないだろ、メカ二ズミカルが活動している事が世間にバレたら色々と厄介な事になるからな。だから本名を使う。幻霊 蓮としてな」
まあメカ二ズミカルに限らず、動画配信生活にも支障が出るし、ファントムR=幻霊 蓮 という印象をあまり持たれたくないから、気を付ける場面は所々あるだろうな。
「......くれぐれもバレないようにしてくださいね、高牧の様に」
「いや待て、高牧と一緒にすんな。......んな事言ってる場合じゃねぇ。んじゃあ早速準備に取り掛かるぞ、里島」
「はい、ボス。早速制服の用意などを済ませて来ます」
「ん、ああ、よろしく頼むぞ」
卯月市......かなり前に一度遊びに行ったな......そしたらあの時、俺と同じくらいの年した奴がなんか勝負を仕掛けてきたんだよなぁ。確か、銃撃戦で戦ったような気がする。あいつの腕前は相当なものだったが、今は何をしているんだが。あの時から既にスカウトしておけばよかった......。
さてと、色々とやることを済まして、今日はさっさと寝よう......。朝の11時に起きれば上等だろ......。
「ボス大変です! 二階通路に何者かが侵入したらしいです!」
突然ドアを開けて、団員No.17番が俺の部屋に入ってきた。
「おいおい。今ノックと失礼しますしたかお前?」
「い、いえ! 緊急事態だったのでつい......」
「は? どんな状況でも、礼儀はちゃんと守らなくちゃいけないだろ? それとも俺の教育不足だっつーんか?」
「そ、そんなことないです! こんな馬鹿な自分が悪かったっす!」
うちの組織は結構こういう礼儀とかには厳しい。人にあったら挨拶する。きちんとお礼は言う。そういった基本な常識を身に着けておかないと、社会に出たときにダメ人間として認められることになるからな。それに、町の人たちの信頼を持たせるためにもな。
「──こんな会話してる場合じゃない。多分侵入者っつーのは......サキアイの野郎だな。そろそろ本格的に来たか......まあいい、いつも通り部下達の訓練道具にさせとけ」
「了解です! 失礼しました!」
全く、サキアイは本当に苦手だ。我が軍、「メカニズミカル」の情報を盗みとりに度々来るからな。まぁ、あいつの武器は何も変哲もないただの短刀だし、我々の開発した武器には到底敵わないだろう。今回も俺らの勝ちかな......。
「ボス! 今日のサキアイはいつもと違います!」
「言ってる傍からお前は……まぁでもどうしたんだ?」
「で、電流が流れる短刀を使って、どんどん組織員を倒していきます! 残りは僅か......」
「なにっ、電流だと!? まさか、我々の軍機密情報が漏れたか!? 直ちに俺が向かう、軍員には引き下がれと命令を出しておけ!」
「了解です!」
俺は顔がバレないように、再び仮面を付け、自慢の銃を持ってサキアイを排除しに向かった。
*
「ぐわぁぁぁぁ!」
基地内の通路へ向かうと、電流に痺れている部下共と電流の元凶らしき物を持ったサキアイの姿があった。
「お前ら、下がれ!」
「やっぱり、これがあれば順調に進むもんだね......あっレイレンお久しぶりー。今日こそ有力な情報を頂くよ!」
「レイレンと呼ぶな! サキアイ! というか軽い感じで入ってくんなよお前!」
彼女が俺の事をレイレンと呼ぶのは、俺の名前「げんれいれん」の最後の文字、れいれんをとって、そう読んでいる。馴れ馴れしくされたくないからやめろと毎度言ってるんだが......。
「いやー、短刀に電流を流したら大分強力になったねぇ」
「おいお前! どうやってその電流を短刀に付けた!?」
「電流取付クリームってのでね。刃元にこれを塗ったら電流が流れるようになるんだ」
──? 我々はそんなの作った覚えないが? ってもしかして!?
「お、わかったみたいだね! そう、私もあの山奥へ行ったんだ!」
「おまえも山奥に!? で、でもどうやって場所を知ったんだ!? 我々が持っていた情報が漏れたから分かったのか!?」
「ううん、君たちから情報は一切盗みとってないよ。私の同級生の友達が知っててね。経由は教えないけど......」
まさか! あの小屋は現在我々しか知らないはずだぞ! ......ということは、風ノ一本人がまだ卯月周辺にいるってことか!?
「そういえば、高牧らにも会ったよ。なんか知らないけど、私達と目的は同じだったみたい」
「高牧らと......!? おい、どこに行ったんだそいつは!?」
「とあるワープホールみたいなのに真っ逆さま。というか、私らが落としたんだけどね」
──高牧らが行方不明になったのも、そういう理由だったのかよ! こいつ......!!
「......まあまあ、あまり長話しても退屈だし、そろそろ本格的にバトルを始めるとしようかな、とりゃあ!」
愛佳はいきなり、俺に向かって、短刀を一振した。
「うおっ! 電撃波だと!? こんな技も繰り出してくるようになったとは......今回は少し力を入れるとするしかないようだな!!」
俺は懐に入れていた我が軍特製の多様銃、「Diversity gun」を取り出した。
「んもー、いっつも思うけど、女の子に大して銃を向けるなんて酷いなあ。まあ、その気なら面白くなってきそう。さて、早速始めるとするかぁぁぁ!!!」
愛佳は無防備に突撃してきた。だが、もちろんそんな攻撃は楽々と回避した。
「ふん、そんな攻撃が今でも通じるとでも......んがっ!?」
「ふふん、隙あり! とんぼ返りを習得してきたから、予測外だったかもね! それ、電流攻撃!」
「ぐわぁぁぁぁ!!!!」
俺の背中には短刀の刃先が刺さり、少量の血が垂れていた。そんなことを感じる間でもなく、俺の体内に100V級の電流が体内に流れた。
「安心しなって。命に関わる程度の電流は流してないから。まぁ、自分が傷口を開こうとしないかぎりはね!」
「くぅ、くそぉ......お前ら! 俺の回復時間稼ぎに、サキアイの相手になれ!」
「「「はい! ボス!」」」
「ふふん、どこまで持つかなぁぁ???」
身体の危険を感じた俺は、即座に医療室へと走った。
うちの施設は3階建てという小規模な建物で出来ている。医療室は1階の一番左端にあるため、2階通路からは少しの距離がかかる。
「ボ、ボス!! 大変な怪我をしてるじゃないですか!! 私が医療室まで一緒に!」
エレベーターから降りてきた 団員No.67番が俺に近寄って来た。
「馬鹿野郎。俺を庇ってる暇があるんだったら早く2階通路で戦っている奴らの応戦に行け」
「で、でも......その体じゃ......」
「言う事聞かねぇと追放するぞ! さっさと行け!」
「は、はいっ!!」
部下は咄嗟に2階通路へと向かった。気持ちは有難いんだが、俺の事より今起こっている事を即座に解決してほしいんだ。あんなことは俺だって言いたくはない......。
俺はエレベーターから降りてすぐ右を曲がった所にある医療室に入った。
「はぁ......はぁ......田畑さん! 少し俺の体見てくれ!」
「まぁ! ちょっとそこのベットに早く横になって!」
医療室に入ると、俺の組織の医療担当、田畑さんが優しく対応してくれた。年齢は2?歳で、この人にはとある恩があるので、さん付けして呼ばせてもらっている。
「また愛佳ちゃんの仕業? あなたたち、本当に仲いいわよね」
「何言ってるの、そんなわけないでしょ。うわっ染みる......」
田畑さんは容赦なく背中に消毒液が染みこんだ綿を付けてきた。少しくらい優しくしてくれればいいのに......。
「我慢してね。というかこんな目に合うんだったら、もう一緒に同盟組んじゃえばいいじゃない?」
「馬鹿言わないでよ、あいつと一緒に働くなんて、死んでもごめんさ......」
「そんなになの? 愛佳ちゃんって、結構スタイルいいし、可愛いし、優しそうな感じするけどなぁ」
「その反面、ウザいんだよあいつは。話すだけでイライラしてくる」
こんな風に、田畑さんは俺の愚痴を聞いてくれる、俺が心を許している数少ない人である。この人と話していると、恥ずかしながら、なんか心が和らぐのである。
「まぁ、愛佳ちゃんだって一応女の子なんだから、優しくはしておいたら? はい、絆創膏で止めておしまい! 暫くここで安静になったらどう?」
「ありがとう。気持ちは嬉しいが、俺は待たせている人たちがいるのでね。長い時間待たせる訳にはいかないでしょ? んじゃあ、これ治療代......」
俺は懐から5万円を取り出して、田畑さんに手渡しした。
「いいの? 傷ふさいで絆創膏貼っただけなのにこんなに頂いちゃって?」
「深夜料金だよ。こんな時間まで起きてくれたことに感謝だ。今日はゆっくり休んで」
「フフフ.....蓮くんも無理しないでね」
田畑さんに見送られながら、俺は医療室を離れた。
*
「はぁ......はぁ......流石に体力的にもキツイかも......とりゃあ!」
二階通路に戻ってきたら、まだサキアイは倒れていなかったようだ。だが、ボロボロになったサキアイを見る限り、部下たちが体力を削ってくれたようであった。
「よし! よくやったお前ら! 後でボーナスくれてやる! 下がれ!」
「「「ボ、ボス!! 感謝します!!」」」
「れ、レイレン......いい加減、情報を言う気になった?」
「お前こそ、体力を奪われたようだな。すぐに楽にしてやろう」
俺はまた懐から、「Diversity gun」を取り出した。今度こそ、あいつを追っ払ってやる!
「ふん......いくら相手が何人来ようとも、結果は同じ。また私の電流攻撃でも受けてなぁ!!」
「させるか! Motion seal弾!!!」
「うぐっ!! 動けない......」
Motion seal弾は、20秒という少ない時間だが、命中した敵の動き封じさせることができる弾である。
「......なんてね。こんなの5秒の時点でとっくに解けられるよ。これは何度も使われてきた技だし、攻略法は既に把握済みさ!」
「そんな事、俺の想定内だ。里島、出番だぞ!」
「了解です!」
里島は近くにあったゴミ箱に隠れていた。そして、愛佳と同じような短刀を持って、愛佳に襲い掛かった。
「何っ! でも、すぐさまガード!!」
しかし、愛佳も自分の持っている短刀で、攻撃をガードした。
「さ、里島さんかぁ。もう何年振りくらいだっけ?」
「そんなこと今は関係ない。貴方のそのおしゃべりな口を封じてあげます! はあぁぁぁ!!」
後ろへバックした里島は、短刀を横から振り上げ、電撃波を作った。
「私だって!! ふぉりゃあぁぁ!」
サキアイも対抗して、短刀を真下に降り下げ。縦の電撃波を作った。そして、二つの電撃波がぶつかり合った時、爆発を起こした。
「ふぃ~。里島さん、その【模写眼鏡】の力は本当にすごいよ。最近手に入れたものでもすぐにコピーできちゃうんだから」
「当たり前です。私のこの眼鏡で実際に見たものは即座にコピーし、実体化させることができますのでね。能力だってそのままそっくり同じです。下手したら、私の短刀の方が能力が上かもしれませんよ?」
「はん。オリジナルの力を舐めないでほしいね! ふぉりゃ! ......あ、あれぇ? もう一度! ふぉりゃ! ...... 何でぇ?」
サキアイが短刀を振り下ろしても、何故か電撃波は流れて来なかった。その姿はまるで、素振りを練習している剣道部員のようだった。
「そ、そうか、この電流取付クリームの効果が切れちゃったんだ! こうなったら!! とりゃあ! せいやぁ!」
「無駄です。どう私の短刀を奪おうとあがいても、私の短刀には触れられません。お覚悟の準備を......と言いたいところですが、私もそのただの短刀を眼鏡越しに見てしまったので、私の短刀もただの短刀になってしまいました......」
そう、こいつの弱点はこういうとこだ。目を瞑っていれば大丈夫だが、そしたら戦いに不利な状況になってしまうであろう。だから、その戦略は使えないのである。
「里島、よくやった! 俺に代われ!」
「はい、ボス!」
里島の体力もそろそろ限界だと感じ取った俺は、交代を命じた。
「レ、レイレン......二対一なんて卑怯だよ......」
「はぁ? お前が勝手に一人でここに来たんだろ? 文句は言わせねぇぜ!」
俺は愛佳の足元を狙いにして、弾を発砲した。
「ってわあ! やめてよ足元を発砲するなんて聞いてないよー!」
「ただ発砲した訳じゃない。お前って、どこに罠があるか把握出来るんだよな?」
「......? そうだけど?」
「じゃあ、たった今出来た罠は感知できるか?」
「そんなの出来るわけ......まさか!」
「気づくのがおせぇんだよ!」
サキアイが気がつくと同時に、床に半径二、三メートル程の落とし穴が出現した。
「こ、この手は初めてだね......くっ、覚えてな! 今度こそ有力な情報を貰いに来るんだからあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
サキアイはそのまま穴に落ちていった。俺がサキアイの足元に発砲したのは「Trap hole弾」で、地面に向かって撃ち、弾が着地すると同時に落とし穴がセットされ、数秒経つと落とし穴が出来るっていう仕組みになっている。なおこれは初期型で、最新型になると、落ちたものは記憶までなくなってしまうという機能があるため、団内では使用禁止とされているのだが......。
まあ、穴の先はというと、最後に睡眠を取った所へと送還される仕組みになっている。ちゃんと布団の上で寝ていれば、何事もなかったかのように感じ取ることができるだろう。
「お怪我はございませんか、ボス?」
「少し背中に傷を......。田畑さんに見てもらったから大丈夫だが......お前こそ大丈夫か?」
「お気遣いいただきありがとうございます。何事もございません。さて、サキアイが襲撃してきたおかげで、まだ卯月市へ行く準備が整っていませんので、私はこれで失礼します。ゆっくりお休みになられてください」
「ああ。ありがとな」
里島は俺にそう告げると、自室へと歩いていった。彼女は組織一の頑張り屋で、何事にも真面目に取り組んでくれている。一度今後の見通しについて喧嘩をしたこともあったが、あいつは何でもコピーする模写眼鏡をもっているから、互角で終わってしまったんだよな。彼女は俺と同じくらいの能力をいつでもコピー出来るから、最悪あいつの方が強くなってしまうかもしれねぇ。
しかし、あれは俺が開発したものではない。この組織にスカウトした当時からあれをかけていた。誰が作ったのだろうと未だに疑問に思っているのだが、一番の有力説は、影ノ一という人である。彼女の発明力は本当に優れていて、実際に協力を頼んでいるのだが、一行にOKをくれる素振りも見せてくれない。しかも、最近は行方不明となっており、組織全体で影ノ一を探している。
おっと、いつまでもこんな所で座っている訳にもいかねえなぁ。早く部屋に戻ってやるべきことを済まして、布団に入るとするか......。
「──それで、いつもの、ご視聴ありがとうございました、の動画を貼り付けて......よし、今日の動画完成! ふぁああ......もう27時じゃん......今から寝たら8時間も寝れるなぁ......」
やることというのは、Diversity gunの手入れでもなく、書類整理でもなく、動画編集である。字幕つけたり効果音入れたりするのめっさだるいんだけど、俺の動画を楽しみに待ってくれる人がいるだけでとても嬉しく思うのだ。
長い動画の場合は、団員No.10番に頼んでもらう時がある。前職ではそういう関係の仕事をしていたらしいが、リストラされたみたいだったから、うちに入団してきたみたいである。可哀そうな奴だ。
「では早速、投稿するか......お、早速コメント来た。[うぽつです! こんな遅くまで起きていて体壊さないようにしてくださいね]か。こいつ本編見てないだろ......にしてもこの【willow】ってやつ、いつも一番乗りでコメントくれるよな......」
こいつは俺の熱狂的なファンであるようだ。こんな表と裏で全然違う人間をよく好きになれるぜ......。
まあそんなことはどうでもいい。今日はもう寝るとするか。今日一日大変だったな。卯月町にどんな奴がいるのか、楽しみだぜ......。ウッ......まだ少し背中が痛んでる......。




