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3. ママからの手紙

私の前に天使が現れた。

その超常現象に驚く前に天使はこう言った。

「陸くんからの手紙ですよ」

そう言われて差し出された手紙。

せっかく忘れようとしていたのに。

逃げていたかった。

陸との事は思い出したくない。

なのに、陸の気持ちを知りたいと思ってしまった。

「陸くんのために手紙を書いていただけますか?」

私の罪、それと向き合うときが来た。


陸へ

陸はママを愛していたんだね。

私のようなひどい母親のことを。

陸、話すから聞いて。

ママはずっと何のとりえもない、ダメな人間だったの。

仕事は出来なくて、いつも怒られてばかりで自信がない毎日。

悩みを相談できるような友達もいなくて、一人で抱え込んでいたの。

そんななかパパと出会い、子どもを授かったとき、とても嬉しかった。

私もとうとう普通の人間の幸せを歩めるんだって。

だからパパを説得して、結婚したの。

陸を生んで、陸を初めて抱っこしたとき、これが私の子どもなんだ、と喜びがわいてきた。

とうとう念願の子どもが生めて嬉しかった。

これで私は変われると思った。

陸がいれば、こんなつまらない人生から変われるって信じていた。

私はようやく幸せになれるんだって。

あんなに嫌だった仕事もやめることができ、陸の子育てに専念することになった。

陸は大切な私の息子。

私は溺愛した。

寂しい私には陸しかいなかったから。

寂しい私を分かってくれるのは陸だけ。

パパは仕事ばかりで、ほとんど家にいなかったし、私から子どもを生むといった手前、弱音を吐けなかった。

頑張らなければ、と思った。

子育ては失敗したくない。

そうやって一生懸命に頑張りすぎたのが原因なのか、育児ノイローゼになっていった。

あんなに可愛かった陸が可愛いと思えなくなった。

むしろ、陸が「ママ」とまとわりついてくるのがうっとうしい。

陸が私にまとわりついてくれることがあんなに嬉しかったのに。

子育てが苦痛に感じるようになった。

「ママ・・・」

陸の寂しそうな顔を見ていたら、胸がつぶれた。

「ごめんね」

ごめんね。陸。

うつ状態になった私はたびたび実家に帰るようになっていった。

家に帰ってきたとき、陸はいつものように「ママ」と迎えに来てくれた。

「パパとはどうだったの?」

「パパは、陸はいけない子なんだって言ってた」

陸の顔が曇った。

「パパと喧嘩でもしたの?」

「なんでもないよ、ママ」

そのときはただ喧嘩しただけなのかと思っていた。

その日、一緒にお風呂に入ったとき、陸の身体にあざがあることを確認した。

私はうすうす誰が虐待しているか分かっていたが、それでも陸に尋ねた。

「誰が陸を殴ったの?」

「転んで怪我をしたんだよ、ママ」

「嘘でしょ? 本当のことを話してごらん」

「・・・」

陸は小さくか細い声で言った。

「パパには絶対に言わないでね。パパだよ」

やっぱりと思った。

でも私は陸を助けなかった。

それが私の罪。

本当はパパに言わなければならなかった。虐待していることについて。

怖かったのだ。

今の関係が壊れることが。

もし、パパが私に暴力を振るうようになったらどうしよう。

自分の保身のためだった。

見てみぬフリをした。

そして陸は暴行死した。

陸が死んでいるのを発見したのはパパだった。

パパは「俺がやったんじゃない」と顔が青くなっていたが、本当は、私は知っていた。

「あなたがやったんでしょ。ぜんぶあなたのせいよ」

「お前こそ、陸にご飯を与えなかったじゃないか。たびたび実家に帰って家事もほとんどしなかった」

お互いに罪を擦り付け合った。

それ以外にどうしようもなかった。

このやりきれなさと罪悪感をどうすればいいのか分からなかったから。

陸がいなくなってから、陸にずっとごめんなさいって謝っているの。

陸、ごめんなさい。私のせいで。

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