プロローグ「双子誕生」
『おぎゃーおぎゃー』
大きな産声が部屋いっぱいに響き渡る。
「おめでとうございます!男女の双子です。髪はお母様に似て、金髪です。瞳は⋯お父様に似た紫です。シリル様によく似ていらっしゃるわ!」
そう言ったのは周囲に控える侍女の中の一人。
「あぁ、やっと会えた⋯私の可愛い赤ちゃんに⋯」
母オフィーリアは優しく父ヴァルドに微笑む。
オフィーリアの両サイドにそっとブランケットに包まれ、双子は置かれる。
「あぁそうだね。俺達の可愛い赤ちゃんに会えたんだ⋯それも二人⋯ありがとう、ありがとう、リカ。」
言うなり、ヴァルドは泣き出してしまった。
「名前はどうする気なの?リカ。」
「ふふ、名前はねもう決めてあるのよ。」
「どんな名前なの?早く教えてよ。」
「ええ、男の子のほうが、『アルフレッド、アルフレッド・オーウェン・ブライアン・テーリア』よ。だから『アル』と呼ばなくてはね。」
「女の子の方は?決めてあるんだろう?」
「もちろんよ。女の子の方はね、『エメライン、エメライン・ローズ・キャロライン・テーリア』よ。この子はね、『エマ』って呼びたいわ。」
「ああ、そうだね。この子達の名前はアルフレッドとエメラインだ。」
このとき、周囲を含め幸せな時間を過ごしていた。
あの事がわかるまでは。
「あの、オフィーリア様、ヴァルド様。そろそろ、アルフレッド様とエメライン様の鑑定をしたいのですが、行ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、ごめんなさいね。お願いね。ゼノ」
優しげにいうオフィーリア。そして鑑定師にエマとアルを渡した。
この世界には属性と加護と呼ばれる力が宿っている。
特に、身分が高ければ高いほど、国を守るために、その効力や影響が強い傾向にある。
「この子達はどんな属性でどんな加護を持っているのだろうか⋯」
心配するヴァルド。
「きっと大丈夫よリアム。だって私はこの国の女王で、あの子達はこの私の血を引き継いでいるのよ?」
「そうだといいんだけどね。リカ。」
『では今から鑑定を行います!』
二人は期待と不安と緊張が入り混じったなんとも言えないような状況で見つめていた。
『おおなんとこれは!お二人ともさすが、王族にお生まれになっただけはある!』
鑑定士であるゼノに言われて、二人はひどく安堵したと同時に不安でならなかった。
『それで二人はどんな属性と加護なんですか?』
二人の声がピタリと重なる。
「それは⋯アルフレッド様とエメライン様のステータスをお見せします。」
『え???』
その場にいた鑑定師以外の人物が驚く。
「え?ん?どういうことなんですか?なぜアルとエマはステータスがおなじなのです?」
そう、実はアルとエマは双子でうまれたために、ステータスがうり二つだったのだ。
「ちょっとまってくれ。このステータスはいくらなんでもおかしくないか?全属性だし、全種類の加護だなんて⋯俺よりも強くないか?」
アルとエマは生まれたてにして最強のステータスを持っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
属性⋯火属性・風属性・水属性・土属性・雷属性・草属性・ 光属性・闇属性・毒属性
加護⋯全知全能の神・武神・統治の神・鍛冶の神・手芸の神・生命の神・火の神・風の神・水の神・土の神・雷の神・草の神・光の神・闇の神・毒の神
◇◇◇◇◇◇◇◇
膨大な加護と属性を持っていた。
そのうえ、ステータスの中の体力、魔力などのものまで飽和状態の「999」という数字を記録していた。
「どういうことだ…魔法師団団長でも魔力は600なのに⋯」
「何が起こっているんだ」
「これは幻覚か?いや、幻であってくれ…」
使用人たちは混乱する。
そして、幻覚だというものまででてきてしまった。
オフィーリアはその場にいた全員に箝口令を敷く。
「あぁ、どうしましょう⋯このままではこの子達は長く生きられないかもしれない⋯」
実は肉体や年齢と魔力だけは比例して増えていくものなのだ。
しかし今の2人にはその魔力と加護に耐えられるだけの肉体はないのだ。
「でも二人ならきっと大丈夫だが⋯」
「ドサ!!」
その刹那、オフィーリアが意識を失ってしまった。
「リカ、リカ、」
ヴァルドは必死に呼びかけるが返事はない。
「大丈夫ですよ、ヴァルド様。オフィーリア様は疲れがでたのでしょう。眠っていらっしゃるだけです。」
そういうこの女の人はヘレナ・フォン・カトレイア、王宮医師だった。
「しばらくそっとしておきましょう。ここではオフィーリア様を起こしてしまうかもしれないので、別室に移動しませんか?」
ヘレナに提案され、少し移動したところにある会議室にオフィーリアと赤子2人そしてアルとエマの兄であるシリルと複数人の侍女だけ残して、移動した。
「皆様二人の殿下についてのお話なのですが⋯」
そう言うと、ヴァルドは人払いをする。
その場にいたのは王太后様と宰相家を含めた3つの公爵家当主、そしてヴァルドだった。
◆◆◆
テーリア王国には公爵家が3つある。
その3家は王家との血が濃い。
1つ目が現宰相であるロウェル・フォン・セルヴァンが当主のセルヴァン家だ。
この家は《知力》に長けている。
また、3代前に王女が降嫁しており、王家との血が最も濃い。
文官や法務官を数多く輩出し、このテーリア王国の政治と経済を支えている。
三大公爵家の筆頭だ。
◆◆◆
2つ目が現将軍であるガリウス・フォン・グランヴェールが当主のグランヴェール家だ。
この家は《武力》に長けている。
王国の盾と剣だとガリウスはよく言っている。
代々騎士団の要職についている。
ちなみに、現王太后はガリウスの叔母である。
つまり、オフィーリアはいとこの関係だ。
◆◆◆
3つ目が魔法師団団長であるベアトリクス・フォン・フランメイルが当主のフランメイル家だ。
この家は《魔法》に長けている。
また、3家の中で唯一の女公爵でもある。
現当主ベアトリクスはオフィーリアの親友だ。
ヘレナ・フォン・カトレイアはフランメイル家の遠い分家筋のものだ。
なので魔法にも詳しい。
◆◆◆
この3家は建国から何百年もテーリア王国を支えてきた忠臣だ。
どの家も、もとを辿れば王族にたどり着く。
故に代々の王からの信頼も厚い。
「ここで見聞きしたことはここに居るもの以外誰に言ってはなりません。」
そうヘレナに言われ、皆の表情に緊張が走る。
そしてヘレナは二人の肉体が加護や魔力に耐えられないことを説明した。
「非常に言いにくいのですが、長く生きられるかどうか⋯いままでここまで魔力が強い赤子を見たことがないのでおそらくはもっと短くなる可能性もあります。正直に言って私もよくわからないのです。」
そう言われて皆の目に映るのは絶望。
無事に生まれてくれて、生まれてしかも2人もいて⋯つい先程とは正反対の感情だった。
「しかし、魔力が高い子供は知力が優れていると聞きます。」
ヘレナが言ったその言葉はヴァルドでも知らなかったことだった。
「これをリカとシリルに伝えるべきだろうか⋯」
疲れ切っているオフィーリアに話すべきだろうかと嘆くヴァルド。
シリルはアルとエマの兄で、御年四歳。
その時だった。
「失礼します!ヴァルド様!今オフィーリア様の目が覚めたとの連絡が!」
若いフットマンが扉を勢いよく開く。
その知らせを聞き、ヴァルドは椅子から立ち上がる。
その場は安堵の表情であふれかえっていた。
「よかった。リカに会いにゆくと伝えてくれ。」
ヴァルドは静かにフットマンに言う。
「かしこまりました。失礼いたします」
そういい、丁重に礼をすると走り去っていく。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「リカ。大切な話がある。人払いを頼む」
そう言うとオフィーリアは人払いをした。
いま部屋にいるのはヴァルドとオフィーリアと3人の子供だけだ。
「なんですの?そんなに大切なお話って?」
疑問に思っているようだった。
「........アルとエマのことなんだが⋯ヘレナに長く生きられないかもしれないと言われた。」
ヴァルドは恐る恐る伝えた。
「え?リカ?」
オフィーリアを見てみると、大粒の涙を流し泣いていた。
シリルもよくわからない様子で居るようだ。
「薄々予感はしていましたが、そうなのですね。でも、あの子達にはこのことを伝えず、大切に愛情をたくさん注ぎましょう。別れが来てしまうかもしれないその時まで⋯」
「あぁそうだな。」
二人は泣きながら、見つめあう。
「お父様、お母様どうしたのですか?」
すると、状況がよくわかっていないシリルが二人に聞く。
「あら、ごめんなさいねシリル。大丈夫よ。」
優しく言うオフィーリア。
「そうなの?本当に?ツライのではないのですか?」
シリルは幼いながらにもその状況を察したようで、気遣う。
「大丈夫よ。辛くなんてないわ!ねぇ?」
オフィーリアは両サイドにいる双子を撫でながら、シリルの目を見る。
「あぁ、そうだよ!」
ヴァルドも笑顔で頷く。
「そうなの?僕、お兄ちゃんになれてうれしい。ルーカスが兄弟は言いよって言ってたから!」
シリルのその発言に場が一気に和む。
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