第19話:今度は私が守るから
ミレイアがリラを思って悩んでいるとき、リラはみんなの部屋をただ一人で掃除したあとだったので、いつもくたくたになってベッドに雪崩れ込むのだった。
「ふぅ~~、やっと今日も一日が終わった。」
そしてリラは仰向けになって天井を見上げた。
「ミレイアも帰ってきてるよね。今日も頑張ってミレイアの部屋は特に綺麗にしたもんね。喜んでくれるかな♪」
そんなことを考えているうちにリラはウトウトと眠り出してしまった。
リラは気付いていない。
そのウトウトは、部屋を掃除して疲れたからじゃない。
癒しの力を無意識に使っていたからなのだ。
他の聖女たちのように呪文を唱えたわけじゃない。手をかざしたわけでもない。
ただーーー掃除をしただけだ。
リラに聖女としての素質があるかどうかはわからない。
あの日、違う名前のカップで洗礼を受けたがために、もし聖女として能力を持っていたとしても発動出来ないでいる可能性はある。
「ララ、相当怒っていたもんね…。」
リラはあの日のことをそっと思い出していた。
リラ自身はあの事故があってもなくても、さほど影響はないと考えていた。
誰かが意図的にしたのか、単純に間違っただけなのか。
それはわからないが、元々期待もされていないリラにとっては何ともなかったのかどうかすらわからない。
「ふふっ。」
リラは笑った。
1年……………。
実質もう1年もないのだが、それが過ぎるとリラは神殿を出ることになる、そう思っていた。
「もう…、期待するのは疲れちゃったの…。」
そして深く眠りに落ちたーー。
その日の夜、ミレイアはリラが部屋にこないことに不安がよぎった。
「どうしたのかしら……………。いつもなら、もうこの時間には来ているのに……………。。」
ミレイアは部屋をそっと出て、静かにリラの元へと向かう。
「あら。ミレイアさん、どちらに?」
神官見習いのリアーナに出くわした。
〝まさかまだこんな時間にいるだなんて……………。〟
ミレイアは焦った。規則では夕方以降の別塔への移動は禁じられているからだ。
「神官見習いさま、ごきげんよう。少し忘れ物をしたことに気付きまして…。」
咄嗟に思いついたことばだが、ミレイアはそれが通るとは本気で思わなかった。
〝嘘をつくのって…、結構難しいのね…。〟
ミレイアの心臓はドキドキと高く跳ねていた。
「……………。」
「そう……………。すぐに暗くなってしまうから気をつけるように。」
「ーーーー!!」
ミレイアは思わず笑みがこぼれそうになったのを必死で我慢し、
「心得ます。ありがとうございます。」
そう言ってリアーナに向かって深くお辞儀をした。
「……………。」
リアーナはミレイアをジッと見てからその場を去って行った。
〝ふぅー、危ない。私は貴族だし、筆頭聖女候補だから多少は甘く見てくれるかもしれないけど、リラなら話は別ね。もう、あの子とこうやってこっそり会うのも危険なのね……………。〟
そう思いながらミレイアはリラがいる塔へと足早に進む。
その頃のリラはーーー
まだ、しっかりと眠っていた。よほど疲れたのだろう。
リラの部屋の扉を誰かがノックする。
少し、遠慮がちにーーー
コン、コン、コン……………。
しかし、リラは眠っていて気付かない。
「……………。リラ?」
静かにリラの名前を告げる。ミレイアだ。
扉の外にはミレイアが立っていた。
〝リラ、もしかして行き違いになっちゃった?〟
ミレイアはノックをした手をギュっとした。
そして一応、部屋を覗いてみることにした。
キィィィ……………。
その音を聞いてミレイアはドキッとした。
そして静かに、ゆっくりと再び扉を開ける。
部屋は真っ暗だ。
〝やっぱり行き違いになったのかな……………。〟
そう思ってゆっくりとランプをかざして中に入ると狭い部屋だ、すぐにベッドに眠っているリラの姿が。
〝くすっ。〟
ミレイアは思わず笑みがこぼれた。
〝よっぽど疲れちゃったのね…。仕方ない、帰ろう。またね、リラ。〟
ミレイアはそっとリラにつぶやき、そのまま来た道を戻って行った。
〝―――――リラはいつもこのリスクを冒してまで私の部屋に来てくれていたのね……。〟
ミレイアのランプを持つ手に力がこもる。
〝同じ聖女候補なのに…!何故リラだけ…!〟
ミレイアの瞳が揺らぐ…。
―――悔しい!
ミレイアはもっと努力して早くリラを庇えるくらいの力をつけないと、そう強く思った。
そして
そんなミレイアをジッと見つめる黒い姿の人物…。ミレイアはその人物に気付かなかった。
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