第10話:玉に込めた願い
聖女適正テストの日
16歳になった王国の女子は全員集められて王宮の中にある神殿でテストを受ける。
ここまで集められた女の子たちはみなテストに合格した。残るはリラだけとなった。
リラは緊張のせいで、指先で髪をくるくるといじる…。
遠くの席から見ていたミレイアはリラが緊張していることはお見通しだった。だが、今はリラのそばに行くことも出来ない…。ずっと黙ってリラの様子を見守っていた。
「どうした?君で最後なんだが…。まぁ、結果を見るまでもないようだが…。決まりなのでな、受けてくれ。」
国王はリラの髪色を見てそう判断をした。こういうことには慣れっこだったはずだけど、リラは唇をギュッツと噛みしめた。そして顔を上げてテストのための玉にそっと手を伸ばした。
「さあ、その玉に触れてみよ。」
神官長もリラに向かって他の子に比べて低く冷たい声で言った。
「……………。」
リラはチラッと神官長の方を見たが、
〝そうね、光ろうが、光らまいが、どっちでもいいわ。〟
そう思ってふいっと玉の方を見た。
〝────チッツ、生意気な…!〟
神官長はどうやらそのリラの行動が気に入らなかったようだ。
〝玉さん、私にとっていい結果となりますように…。〟
そう心で願いながらリラは玉の上に〝ピタッツ〟と手を乗せた。
シ…………………………ン……………
玉が光る気配はしない。
リラはニッツと笑った。
〝これが答えなのね。玉さん。〟
そして彼女が玉から手を放して
「すみません、私には資格がないようです。」
そう言ってペコリとお辞儀をして自分の席へと向かった。
みながリラの潔さにあっけにとられていると、玉がポワッツと弱く光った。
「────────!?」
皆が光ったのを確かに見たのだが、
「は?今、光った??何色だった?」
そう、色を判別するまで光は持たなかったのだ。
「────────ちょ、ちょっと待て。」
そう言葉を発したのは国王だった。
リラはふいっと振り向いて国王を見た。
「はい?私のことでしょうか?」
リラ自身は玉が光った瞬間を見ていないからどうして自分が呼び止められたのかがわかっていない。
「そうだ。お前だ。お前も聖女見習いとして迎えいれよう!」
国王が突然発した言葉に神官長が驚いていた。
「陛下?!」
神殿の中はざわついている。リラはどうしてこんなにざわついているのかわからなかった。
「え…、でも、私、玉が光ませんでしたが……………。」
首を傾げながらリラは答えた。
「いや、今確かに弱いが光ったのだ。可能性のある者を普通の生活をさせるわけにいかない。お主も神殿に所属せよ。」
「……………。わかりました。」
そう返事はしたものの、リラ自身、〝光った?〟と、納得がいっていなかった。
ずっとリラを見ていたミレイアは口元の口角がゆっくりと上がっていた。
その後、国王による聖女の洗礼式となる。
そのまま全員が神殿で待機し、既に聖女見習いとなった先輩たちの手によって場は整えられた。
洗礼式で必要な聖水を一人ずつ用意された。カップには名前が書かれている。
リラはそのカップをジッと見つめた。
〝これはどうするのかしら?飲むの?それとも……………?〟
そんなリラの様子を見ていた隣の子が
クスっと笑って
「それ、飲んじゃダメよ。このあとちゃんと説明があるまで持っていなくちゃ。」
嫌味を込めてリラに説明をした。
だが、リラにそんな嫌味が通じるわけがない。
「そうなのね、ありがとう!教えてくれて。」
そう言って満面の笑みを浮かべた。
「────うっ………。」
嫌味が通じない相手を見てたじろぐ。どんなに金髪が綺麗でも心のもちようで比較するとリラほど聖女に向いている人間はいないだろう、とミレイアは思っていた。
そう、ミレイアも実はリラに対しては恐れを抱くことがある。あの底知れない〝人を疑うことをしらない純真さ〟それこそ、聖女の証ではないのだろうかと考えていた。
〝でも、私だって負けないわよ?絶対に大聖女になるんだから!〟
ミレイアはリラを友達としてではなく、ライバルとして見ていた。
洗礼式では名前が書かれた聖水の入ったコップを手渡された。
神殿の中の聖なる泉の中に聖女候補が入ってひざをついて両手を胸の前で組む。そして祈りを捧げ、国王と、神官長から頭の上にその聖水をかけもらうのだ。
もし、違う人間の聖水をかけた場合は聖女としての力を発揮できなくなってしまうので、名前の確認は必須だった。
だが、リラは自分の名前を読むことが出来ない。
今、リラの手にあるのは「ララ」と書かれたコップだった────
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