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最終話 お約束の事故物件。これからも頑張ります!

 翌朝、月曜なので学校だ。制服に着替えて食堂に行くと、ユキさんが親父と母と席についたところだった。

 目線があったので会釈して、私は急いでハムエッグのお皿とご飯とお味噌汁をもらって三人の席に行く。

「おはようございます」

「おはよう」

 あれから親父にどれだけ飲まされたのかは知らないが、二人とも二日酔いの気配は全然ない。さすがザル。

 しかし、なんか戸惑った風に見えるのはなんでだろう? 私が首を傾げると、ユキさんが小さく咳払いした。

「なんだ? ユキ」

 親父がユキさんの様子に気づいて聞くと、

「いえ、そういや、女子高生だったなあ、と」

 うん、女子高生ですよ。今更ですよ。

「そうだぞ、女子高生だぞ、そこんとこよくわかっとけよ?」

「……はい」

 何言ってんだよ、親父はよ。

「この制服ももうちょっとで着納めです」

 一月からはほぼ自由登校だからね。

「そうそう、昨日お義父さんと話してたんだけど、みゆちゃん、共通テスト終わったら東京に引っ越してこない?」

「へ?」

「『へ』じゃないでしょ、ちゃんと話しなさい」

 母に注意されたが、だって「へ?」以外にどう言えと。

「二次試験は東京だし。第一志望は余裕で合格圏内なんでしょ? 即入居可物件探しておくから、今週末に東京来れるかな?」

 両親を見ると、既に内諾済みらしい。東京に行けるのはいいけど。

「あの、ユキさん」

「ん?」

「ユキさん、不動産のお仕事もしてませんでしたっけ?」

「土地も建物も、ホテルやビジネス案件も扱ってるよ?」

「つまり、ユキさんが探す物件って…………」

「そうだね。系列の不動産会社は顔見知りだらけだし。入居者が決まらなくて困ってる案件かなあ。ちゃんと綺麗にしてあげるよ」

 …………事故物件じゃん。

「受験生が全受験先付近の部屋を複数件押さえてたりするからね。第一志望の周辺は大学も多いし。今、俺が居候してる近くなら、便利だよ。第一志望乗り換えなしで行けるよ」

「え? 家賃高そうじゃないですか?」

「そこはほら、アレだから」

 …………事故物件ですね。

「大丈夫だよ、家賃補助も出るし、俺給料はいいから。残業代と出張費が多いからね」

 そうだった。ユキさんはブラックサラリーマンだった。でもちゃんとお金になるんだからブラックでもいい方なのかな。

「とりあえず、勝手には決めないから。情報は随時送るから、連絡先教えてよ」

 そういえば、まだだった。

 こうして、私たちはようやく、電話番号だのを交換した。これでメッセージも送れる。

「で、学校は大丈夫そう?」

 ユキさんは少食なので、食事もご飯は最初から半分くらいしかよそわれていなかったし、あとはお味噌汁とお茶だけ。私はご飯大盛なので、ユキさんが主に話す感じになっている。

「問題ないですよ」

 多分、ジャム事件とかもあったから心配しているんだろうけど、なんとでもなるのよね。

「そこは、信じてください」

「……わかった。信じておくよ」

 あとは、部屋数とか駅からの徒歩時間の希望とかいろいろ聞かれて、ほとんど両親が答えていた。二階以上、治安がいい、オートロック、とかね。うん、家賃がどんどん上がっていくなあ。まあ、一応、ユキさんはエリートだからね。神社からも新神宮様としての御手当てが出ているのに全然手をつけられていないから金持ちよ、とは、亜希さんの談。個人情報じゃないのかね。

「じゃあ、週末にね」

 そういって、別れた。

 さて、学校行くか。

 ユキさんは一度神宮様のところに報告に上がってから、親父に送ってもらって帰るらしい。

 とりあえず、なんとかなった。

 ああ、結婚したんだなあ、と思いつつ。

 うん、学校ね。すでに村の女の子たちに情報は届いている。そこからすでに関係各位には伝達が行っているだろう。金曜日にサンダルも運動靴も机の中身も空にしてきたからね、いたずらはできないわよ。これから毎日全部持ち帰り&鍵付きロッカー収納でいたずら防止をしよう。ああ、養生テープも持って行って、隙間対策もしないとね、ロッカーも下駄箱も通気の溝を内側から塞いでおかないとね。机の中は空のなかに何かやられたらすぐに証拠保全して先生に言えばいいしな。まあ、三年のこの受験期にそんな余裕があるのは、総合型か推薦で決まった人だろうから犯人なんかすぐわかる。

 重たいかさばるリュックを背負って、私は家を出る。まずはバスかな。運転席に近い最前列を確保しよう。人目にはつくけど、いたずらはできないし運転手は一谷家の人だから目を光らせてくれるでしょう。

 バス停に行くと、バスはすでに止まっていた。うん、どん詰まりの始発だからね。

「おはようございますー」

「おっ! おはようっ聞いたよ、みゆちゃん、おめでとう!」

「ありがとうございますー」

 人目に付くところに座ったから、バス停ごとにお祝いを言われる。おかげで、女性陣は何もできずに座席についている。うん、この調子で、乗り切ってみせましょう。

 神谷未冬十八歳! 夫は大企業本社勤めの超エリートで、村で知らぬ者なき新神宮様。

 これから、少しずつ、本物の夫婦に、なっていこうと思います!

 まずは事故物件な新居探し、受験、入学、結婚式、まだまだ頑張るぞー。



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