任務その18 王国最恐を賭けた究極の対決! ~その1~
ひっさびさの予約投稿!|д゜)
でもなんか展開的にちょびっとホラーになっちゃったから、みんな気を付けてね!
サフィア王国王城、騎士団長執務室──
「さぁ次はこの料理をお願いします」
「……あぁ……」
午後の休憩時間、執務室には普段と違う光景が広がっていた。
「どうですか?何か変化は?」
「……いや……特にないが……」
多種多様な料理が執務室のテーブルにズラリと並んでいる。それを魔法使いや医師などが見守る中、騎士団長のアルフレッドが食しているのだ。
「何だかすごいことになりましたねぇ」
傍らで見守る補佐官は、アルフレッドの為に用意された豪華な料理を勝手にちょこちょこつまみ食いしながらそう呟いた。
先日の庭園での一件により、激辛料理でアルフレッドの火魔法の才能が開花したことから、様々な料理を食すことで新たな魔法の発動があるのではないかと、王国上げての調査が始まったのだ。そんな展開になるとは誰が想像しただろう!(作者も思いもよらなかった!)
そんな作者の都合はさておき、アルフレッドは食の好みに関わらず、豪華な宮廷料理から聞いたこともないゲテモノ料理まで、様々な物を食す実験台と化していた。
「……うっ……こ、これは……!」
「早速効果があらわれたか?!どうだ?何か魔法発動の兆候が?!」
怪しげな黒い物体を食してうめき声を発するアルフレッドに、すかさず研究員の魔法使いが身を乗り出す。
「ま、マズイ…………」
周囲の期待とは裏腹に、単にマズイだけの食べ物だったようだ。マーガレットの作ったものではない為に、普通にマズイものはマズイと言える素直な騎士団長だ。
「……夜光ヤモリの炭焼きという珍しい料理だったんですがね……残念です」
「っ──!!」
魔法使いのその言葉に、怪しげな黒い物体もちょびっとだけつまみ食いをしようと手を伸ばしていた補佐官は、そっとヤモリの炭焼きを皿に戻した!行儀の悪い男である!
そんな男達をよそに、マーガレットは全部食べるまで帰れまテン!状態の団長を心配して問いかける。
「あの、本当にこれって効果があるんですか?一応料理として一般に流通しているもののようですし、普通に皆さんこれまで食べてきて、誰も新しい魔法が発動したとかいう話はなかったと思いますけど……」
「それを調べる為にやっているんですよ。何事も検証しなければわかりませんからね」
研究オタクの魔法使いはシレッと答えた。単純に新たな魔法の発動に興味があるというのもあるが、騎士団とはあまり仲がよろしくない魔法師団の普段の恨みが籠っていないとも限らない。並ぶ料理には本当に料理かどうか怪しげな見た目のものも多かった。
「でも休憩中にこんなのは……いつもなら団長の好きなお菓子とかをお出しして、休憩後の仕事に向けて英気を養っているはずなのに……」
「マーガレット……(じーん!)」
騎士団長を思いやる書記官の言葉に、アルフレッドはマズイ料理をもぐもぐと咀嚼しながらも感動に打ち震えた。隣で明らかに大丈夫そうな料理に手を付けている補佐官とはエライ違いである!
「そ、そうは言っても王国を守る騎士団長として、新たな魔法研究に貢献するのは当然というものです!ねぇ?王太子殿下?」
「あー、まぁそうかもねぇ」
何だか面白そうなことが始まると思って野次馬しに来たケビンに、同意を求めだす魔法使い。だがケビンは流石にこれではアルフレッドが可哀想かと思ったのか、とんでもない提案をしてきた。
「というか魔法研究に貢献するんだったら、普通に魔法使いが実験台になるのが一番じゃないのか?」
「!!!!???」
「あ、そうかもしれないですね。普段から魔法を使っている方々の方がより発動しやすくなるかもしれないですし」
「そ、そんなことは……!」
王太子直々のとんでもない提案に急に慌てだす魔法使い。どうやら相当ヤバイものを用意してきたに違いない。憎き騎士団長に食べさせるのであれば構わないが、自分が食べるとなると話は違ってくる。焦った彼は更にとんでもない方へ話を持っていった。
「それならば!魔法が使えない騎士にもどういった効果があるか検証しなければならないでしょう!えぇ!そうですよ!魔法使いだけが犠牲になるのは不公平というものです!」
「っっ!!!!」
豪華な宮廷料理を口いっぱいに頬張っていた補佐官は、思わずブハッ!と吐き出してしまいそう(※モザイク案件)になった。とんでもないとばっちりである!
だがそんな憐れな補佐官の想いとは裏腹に、面白いことに目が無い鬼畜な王太子ケビンはニヤリと笑みを見せると、その提案に頷いた。
「ならば騎士団と魔法師団とで互いにこれだという料理を用意して、食べさせあうのはどうだろう?面白くなりそうじゃないか」
こうして王太子ケビンの宣言の下、第一回騎士団VS魔法師団(※ゲテモノ)料理選手権が開催決定したのである!
********
──一週間後──
「おー、スゴイ集まったなー」
「本当に……とんでもないことになってますけど……」
野外の訓練場に集まった人々の目には、普段見ない光景が広がっていた。大きなテーブルがセッティングされ、そこにずらりと並んで座る騎士団員と魔法師団員達。料理はまだ並んではいないが、これから次々と運ばれてくるのだろう。周囲には面白い催しがあると知ってやって来た王城勤めの人々がその様子を見守っていた。
「えー、それでは第一回騎士団VS魔法師団(※ゲテモノ)料理選手権を開催いたします。ルールは騎士団と魔法師団それぞれが持ち寄った料理を互いに食べること。新たな魔法の発動が確認されたら、その料理を作った者の勝利となります。また新たな魔法を発動させた者にも報奨金が出ますので、皆さん頑張ってください」
王太子ケビンの侍従が淡々とイベントの説明を始める。また第一回と銘打っているところが何とも怪しいが、それでも一応ちゃんとしたものになるように報奨金も用意しているようだ。
「団長達大丈夫かしら……」
「まぁ大丈夫だろう。遠征の野営とかで(※ゲテモノ)料理には慣れているだろうし、こういったイベントごとが好きな奴らだ」
「そうですけどねぇ……魔法師団の方々の用意した料理も気になりますが……」
貴賓席のケビンの隣で観戦しているのは、書記官のマーガレットである。今回騎士団側として出す料理の中には、マーガレット考案のレシピもいくつか含まれていた。本人曰くちょっぴし料理が苦手だということである。実際はアルフレッドが火を吹くほどに凄まじく壊滅的な才能の持ち主であるが。
「魔法師団の方のは俺もどんなのかわからないな……一応人体に害が無いようにとだけは指示しているが……」
騎士団の面々が聞いたら卒倒しそうな内容の会話である。だが騎士団VS魔法師団という形をとっている通り、これは両団の矜持を懸けた闘いなのだ!協力して国を守る使命を持つ彼等だが、どうにも仲が悪い。仲良くしてね♪と王太子直々に命令することは簡単だが、そうなると余計な鬱憤が溜まるだけだろう。だから敢えて対決という形をとって、互いへの不満をぶちまける場を設けたのだ。
「それにしても観客の方も随分と豪華ですね。大神官様までいらっしゃるとは……」
「あぁ、以前からアルフレッドの光魔法に興味を示されててな。今回の事をお伝えしたら是非観戦したいと言うので、客席も設けたんだ」
そう言って視線をやるのは少し離れた場所にある貴賓席の一団。白く輝く法衣に身を包むのは、神殿の神官たちに囲まれた大神官だ。その衣の白さ以上に日差しの下で頭髪の少ない寂しい頭が輝いている。まるでよく磨かれた鏡のようだ。
そんな観客達が見守る中、試合が始まったようだ。
「それでは一品目、先攻・後攻はこちらのコインで決めます。両騎士団長よろしくお願いします」
「わかった」
「ふん!仕方ねぇな!」
細長いテーブルの一番端に座るのは騎士団長のアルフレッドと魔法師団長のセラドだ。両人とも目の前の相手を睨みつけた後、傍らに立つ審判役の侍従に視線を向ける。侍従がコイントスをしてそれを手の甲へパシリと打ち付けて隠した。
「表だ」
「はっ!馬鹿め、裏だ」
意見の分かれる両者。だが超人的な動体視力の持ち主であるアルフレッドには絶対の自信があった。何せ書類に目を通しながらも常にマーガレットの様子を日々観察……見守っている男である。その動体視力は日々研鑽されているから、今のコイントスについてもあてずっぽうではなく、実際に見えたからこそ表を選んだのだ。しかし──
「……裏です」
「!?!?」
「セラド師団長、先攻・後攻どちらになさいますか?」
「当然先攻だ!」
勝ち誇った顔で先攻を宣言するセラドに、アルフレッドは驚愕に目を見開いている。絶対的な自信があったのにも関わらず間違えたのだ。これから始まる壮絶な戦いに向けて暗雲が立ち込め、傍らで見守る騎士団員達にも不安が広がった。
そんなやり取りを観客席で見ていたケビンは、なるほどとうなずいた。
「ふむ、恐らく幻惑魔法を使ったなセラドの奴」
「幻惑魔法?」
「あぁ、アルフレッドがコインの表裏が見えていることを承知の上で、敢えてそれが逆に見えるようにしたんだろう。魔法師団長を務めるほどの男だ。造作もない」
「そんな……なんて卑怯な手を……」
「まぁ先攻か後攻かを決めるだけだからな……だがあの感じだと後々に影響することを考えてのことだろう。勝負はもう始まっている。俺達はただ見守るしかないさ」
「……そうですね……団長……頑張ってください!」
──────
先攻・後攻が決められ騎士団員達の前に料理が運ばれてくる。銀の蓋で覆われていて中身はまだわからない。並び終えると同時に審判が声を上げた。
「それでは先攻魔法師団側の料理一品目、開けてください」
審判の言葉に続いて、騎士団員達はそれぞれ目の前の蓋を開ける。
「こ、これはっ──!!」
怪しげなスモークがテーブルの上を這うようにして広がっていく。暫くすると靄の奥に隠された料理が見えてきた。
「……これは?」
緑や赤の葉物が皿にこんもりと盛られ、そこに不思議な色の液体がかかっていた。一見すると普通のサラダのように見える。だがこの催しの目的を考えれば、普通のものでないことは確かだろう。
訝し気にその料理を見つめていると、小馬鹿にしたような笑い声が目の前から聞こえてくる。
「はっ!早速怖気づいたか?」
「……そういう訳じゃない」
アルフレッドの目の前に座るのは魔法師団長のセラドだ。既に勝ち誇ったような顔をしているから、余程自信のある一品なのだろう。
「じゃあさっさと食べてみろよ」
「……わかった」
「だ、団長……」
ここまで煽られて情けない姿は見せられないと、アルフレッドは料理に向かう。傍らでは道連れという名の犠牲になった他の騎士団員達が泣きそうな顔で見守っていた。何せ新たな魔法属性発動の研究とかいうよくわからない理由で、ゲテモノ料理を食べさせられるのだ。報奨金が出るとはいえ、どんなものを食べさせられるのかわかったものではない。
そんな騎士団員達の嘆きを一身に背負って、まずは騎士団長であるアルフレッドがその料理を口にした。緑やら赤やらのカラフルな葉っぱが、むしゃむしゃと口の中へ入っていく。観客達の目には「熊が草食ってるのマジ草www」と面白おかしく映っていたが、本人はいたって真剣だ。
むっしゃむっしゃと咀嚼を続けるアルフレッドの様子を、皆が固唾を飲んで見守っていたその時──
「むっ……!!」
「「「(ごくり……!)」」」
「……マズイ……」
「「「(やっぱり!!)」」」
「……だが意外とクセになるような……」
「「「(えっ!?マジで?!)」」」
「まぁ……食べられなくはないな……」
「チッ……!」
平気な顔をして食べる騎士団長に魔法師団長は盛大に舌打ちをした。一体どんな料理なんだと不安になる騎士団員達だが、上官が食べたのに自分達が食べないわけにはいかず、勇気を出して口に入れる。
「うぐっ……!!」
「がはっ……苦っっ!!」
普通にサラダの感覚で口にしたが最後、凄まじい苦みが騎士団員達を襲う。ハッキリ言って毒草でも盛られたのかと思うくらいの苦さだ。この瞬間、上官のバカ舌疑惑が団員達の間に浮上した!
「ははははは!それが普通の反応だろう!どうだ!魔法師団特製薬草サラダの味は!魔力をたっぷりと注いで作った特別製だからな!まぁとてつもなく苦いやつだが!ははははは!」
悶絶する騎士団員達の様子に機嫌を直したのか、セラドが高らかに笑った。どうやら魔法師団で特別に栽培をしている薬草が材料になっているようだ。
「くっっっそマズイ!!」
「まだその辺の草食ってる方がましだよ!」
「……うっ……俺、もうダメだ……(バタンっ!!)」
皿に盛られた料理を完食しなければならないため、騎士団員達はあまりのマズさに苦しみながらもなんとかそれに耐えて食べ続ける。しかし耐え切れずに気絶する者もいた。
倒れた団員についてはすぐに医師とその助手がやって来て、団員を担いで退場していく。他の団員達は「あれ?これってさっさと退場する方が得なのでは?」と気が付いたが、退場した先で治療と称しての実験体としての運命が待っている為、そこは非常に微妙な所である。王国の為の尊い犠牲は騎士団という職場にはつきものなのだ!
団員達が完食したのを見計い、別の医師や検査役の魔法使いが一人一人の隊長を調べていく。魔法属性を調べたり魔力値を調べたりしているのだろう。団員達は元々魔法の使えない者が多いため、新た魔法能力の開花は王国にとって喜ばしいことである。だが結局どの団員も特に変化は見られないとのことだった。
「えー、続いては後攻の料理をお願いします」
審判の言葉に続いて、騎士団側が用意した料理が運ばれてくる。だがどうやら全てが運ばれてきているわけではないようだ。何やら裏方が騒がしい。
「す、すみませんっ!どうも食材が逃亡したようで……!」
調理担当のものだろうか。慌てた様子でやって来る。
食材が逃亡って一体なんだよ──と、誰もが思ったが、騎士団員達の反応は別だった。
「おい!やっぱ生はダメだったんじゃないか?!」
「だがインパクトっつったら生だろう?!」
「眠らせておいたはずなのに……やっぱイキが良すぎたか?!」
およそ食材について語っているとは思えないような会話である。だがあらかじめ食材が逃亡する可能性を見越していたようだ。何人かが席を離れ、逃亡した食材を探し始める。
「えー……とりあえず全部の準備には時間がかかりそうなので、用意ができたものだけで始めましょうか。それでは騎士団側の料理一品目、開けてください」
──パカッ!シュタタタタタタッ!!──
「「「!?!?!?!」」」
魔法師団員が蓋を開けた瞬間、何かの影が皿から飛び出し、そのまま逃亡した!明らかに何かの生物である!
「ほら!やっぱ生だから逃げちゃったじゃんか!」
「いや、だってお前、勝つなら絶対に生きているやつの方が有利だって──」
一体何を食わせようとしたんだお前ら──と誰もが思ったその時──
──ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!──
「「「!!!!!」」」
凄まじい絶叫が会場内にこだました。鼓膜をビリビリと破らんばかりのその音に、皆は耳を塞ぐ。それは皿にいた食材が発したものだった。
「……マンドラゴラか……はっ!だが逃亡してんじゃ意味ねぇな」
馬鹿にしたように笑うセラドの言う通り、騎士団側が用意した一品目は、生のマンドラゴラであった。
マンドラゴラは調薬に使われる魔法植物の一種で、根っこの部分に顔のようなものがあり、人間の手足が生えたような形をしている。採取の際に下手をすれば凄まじい絶叫を放ち、それを聞いた者を戦闘不能に陥らせるという恐ろしい植物だ。
飛び出していったマンドラゴラは、頭(?)からソースのようなものを垂らしながら、シュタタタタッ!と王城の影もびっくりの素早さで逃亡を図っている。
一方の皿に残っている方のマンドラゴラは、サラダ菜を布団代わりに体にかけ、気持ちよさそうにスヤスヤと胸(?)を上下させ眠っているようだ。そのあまりの気の抜けたシュールな光景に、流石の魔法師団員達も「ほ、本当にこれを食べるのか……?」と若干顔を青ざめさせている。流石に生きた生のマンドラゴラを食べるのは、精神的にクルものがあるようだ。
「し、師団長……」
「あぁ……おい、流石にこれは料理とは言わないんじゃないか?ただ引っこ抜いてきたマンドラゴラをそのまま出しただけだろう?」
縋るような魔法師団員達に促され、師団長のセラドが騎士団側に苦言を呈す。料理対決だというのに調理も何もされていない食材を出すのは、ルール違反だと言わんばかりだ。しかし対する騎士団長のアルフレドは冷静に答える。
「なに、生食は普通のことだろう?そちらの先ほどの薬草も生だったではないか。それに野営で火の焚けない時などは、生でかじることも普通にあるぞ?」
とはいえ流石に動き回らないように絞めてからだがな、と心の中でだけ補足するアルフレッドである。
実際に生食のマンドラゴラは、戦闘時のドーピング的な役割で食されることがあり、それこそ先日の長期遠征時には、騎士団員達も何度口にしたことかわからないほどである。その貴重な味を魔法師団員達にも味わってもらおうという悪戯心で最初の一品になったのだ。
そんな騎士団長の主張に、審判は料理担当や検査役の魔法使いなどと話した後、この料理は違反ではないとの判断を下した。つまり魔法師団側は完食しなければならない。
「協議の結果、料理に問題はないので、魔法師団側は実食を続けてください」
「チッ……!クソが!」
思惑が外れて悪態を吐くセラド。しかし王太子主催の手前、嫌だ食べたくないなどと突っぱねるわけにはいかない。
仕方なくその眠りこけている食材の葉っぱの生えた頭の部分を鷲掴み、睨みつける。すると振動を感じたのか食材がふと目覚めたようだ。
──ふぎゃっ……──
──ボワッ!!──
「っ!?!?!?!」
マンドラゴラが目覚めたと同時に、ボワッとセラドの手元に青白い炎が現れる!一瞬で高温に熱されたマンドラゴラは、あっという間にこんがりイイ感じに焼けていた。それをセラドは何食わぬ顔でガブリと食べている。自身の魔法で勝手に調理したのだろう。
「そ、その手があったか!」
セラドの調理を見ていた他の魔法師団員は、助かった!とばかりに自分達も魔法を使ってマンドラゴラを調理しようとした。しかしすかさず騎士団側がストップをかけた。
「おい、それこそルール違反だろう?生で食してこそこの料理には意味がある。そうだろう?審判」
「そうですね。提供側の意図と違う形で料理に手を加えることは、今後禁止いたします」
「そ、そんなぁ……」
審判の判定にガックリと肩を落とす魔法師団員達。その頃には逃亡を図っていたマンドラゴラも捕縛され、皿の上にしっかりと戻されているようだ。気絶でもしているのか頭の葉っぱは若干萎びており、ソースの海に顔を突っ込んでぐったりしている。益々シュールな光景だ。
「ほら、何をしている。さっさと食さんと次の料理にいけないだろうが」
「っ…………」
騎士団長のアルフレッドにそう言われ、魔法師団員達は苦悶の表情で自分達の目の前にある料理に目を向けた。スヤスヤ気持ちよさそうに寝ているのもあれば、逃亡を図った末に捕縛の為に昏倒させられたのもいる。だがどう見ても生の状態のマンドラゴラは、無駄に人間味あふれていて食べるのに非常に抵抗があった。
「くっ……ままよっ!!」
一人の団員が勇気を振り絞って昏倒しているやつをひっつかみ口に放り込んだ。歯をその豊満な根っこ(身体)に立てれば、「ぐぎょっ!」と不気味な声が口の中に響き渡る。思わず「おえっ……」となってしまうが、そこは根性で堪えて悲鳴のような声が聞こえなくなるまで咀嚼し続けた。
そんな勇気ある団員の行動を見て、流石に自分だけ逃げることはできないと覚悟した者達が次々とマンドラゴラを口にしていく。悲惨だったのは大人しく皿の上で寝ていたマンドラゴラに当たった団員だろう。口に入れた瞬間に起きたのか、凄まじい絶叫を口内に入れた状態で聞く羽目になった。しかも驚いたその拍子に丸飲みしてしまい、食道から胃へとマンドラゴラが絶叫したまま体内を下へ降りていく。
喉を通過したところで耐え切れなくなったのか、その魔法師団員は白目を剥いて気絶してしまい、すぐさま医師たちがやって来て彼を引きずっていってしまった。治療の末に様々な検査という実験がされるのだろう。
それを見た他の魔法師団員達は、寝ている奴を先に叩きつけて昏倒させてから食すという、涙ぐましい食事法を編み出すことに成功した。そうしてようやく生きたマンドラゴラの完食という壮絶な最初の一品を終えたのだった。
だがそれは本当の終わりではない。
「最初の一品ではどちらも新たな魔法属性の発動は確認できなかったようです。それでは二品目に進みましょう──」
悪魔のような審判の言葉に、この地獄の料理対決がまだまだ続くことを、誰もが思い知るのだった。
いやー、マンドラゴラの展開が面白いかな~と思ったら、読み返すと結構グロな感じな気が……。まぁ書き終わってから気付いたんで、致し方ナッシングだな(-。-)y-゜゜゜




