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現代社会に居場所なさそうなので異世界で新生活始めることにした~女神の誘いは波乱の始まり~   作者: まんぼうしおから


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8・さらばマント

「どうするの? 私はあまり気が短くはないほうだけど、優柔不断は嫌いよ。無意味に待つのは耐えがたいわ。だからね、私が短絡的な衝動に突き動かされそうになる前に、早めに答えを出して」


『賢明な判断を、期待します』


 左右からくる、圧。

 精神的に潰されてしまいそう。嘘だが。


「どうするも何も、判断は決まってるよ」


 こいつらが、黙っていればそのうち諦めてくれるなんてことは、ない。

 それは口振りからわかってる。


 だらだらと時間稼ぎをしたって、助けなんかどこからもこない。


 なら、こいつらの忍耐力というタイムリミットがくるまで、考えてるフリをすることもない。

 さっさと言おう。


「これは渡せない。壊されるわけにもいかない」


 はっきり言ってやった。



 ──空気が変わった。



 「返事次第では攻撃するからな」という気配から。

 「いつ攻撃してやろうかな」という気配に。


 右側からくるのは、やはり炎だろう。

 これはわかりきっている。


 左側だが、これがわからない。

 謎。

 何か銀色のものを飛ばして戦っていたのは見えたが、いかんせん遠すぎて、その具体的な正体がわからなかったのだ。

 わかってたら対策できるって話でもないんだけど、でも知ってると知らないとでは天と地だ。


「一応聞くけど、命が惜しくないの?」


 魔女が言う。

 さっきまでと違い、目が座っている。


「惜しいよ」


 この世界にお引っ越ししてきたばかりなんだ。来て数日で天国なんか行ってられん。


「だからって、こいつをおとなしく差し出す気もないね」


 これがどこぞのダンジョンで見つけた伝説の武器とかなら、ためらうことなく渡してた。

 でもこれは違う。


 女神からの貰い物だ。


 世界が揺らがないよう、安定するよう、楔として居座る代わりに貰ったのだ。

 貰ったというか軽くゴネたらあっさりくれた追加報酬に過ぎなかったりするのだが、でも、神から授かった武器なのは確かだ。

 渡すのはあまりに惜しい。


「馬鹿な子ね。渡せば死なずに済むのに」


「ハッ」


「何がおかしいのかしら? 頭でもおかしくなったの?」


「なら聞くけどさ、渡せば助かる保証がどこにある? あんたらが本当に約束を守ってくれるって、なんで信じられる?」


『正論ですね。しかし、この状況……あなたは、我々の誠意を、信じざるを得ないのでは……ありませんか……?』


 ガイノイドが言う。

 瞳らしき部分の青い光が、赤へと変化していた。敵対モードかな?


「無理だね。だいたい、何が誠意だよ。言うこと聞かないと殺すなんて、脅しの最終段階を初手からかましてくる奴らの誠意ってなんだって話さ。それに……」


『それに? 他にも、我々の提案を拒絶する……合理があるのですか……?』


「ああ。あんたらは俺がこの申し出を呑まないと死ぬと、呑むしか道はないと決めつけてるけど……そうとも限らないだろ?」


「いいえ、限るわ」


 ──右方向から。



 冷たい宣告と共に、灼熱の炎が浴びせられた。



「無駄な時間だったわね。最初からこうしておけば良かったわ」


『……警告をいくつか飛ばし、すぐさま、殺害に踏み切りましたね。躊躇のない振る舞いです。人型といえど、やはり、倫理を有しない災獣……排除すべき……』


「出会った時からそうだけど、変わらず大きな口を叩くものね。たかだか氷属性のゴーレムが。この国を守る者から壊す者と化した──魔女たる私に対して」


『深刻な破壊をもたらすレベルの……可能性を示唆した、発言……。一刻も早い、徹底した駆除をしなければ。最優先、駆除対象……』



「──いや、俺をおいてけぼりにして話を進めんなよ」



『「!?」』


 赤い炎に、包まれたまま。

 俺は平然と二人の話に割って入った。


 ……おお、どっちも驚いてる。

 びっくりしてるびっくりしてる。

 ふふ、まあ、そりゃするよな。しないほうがおかしいか。燃えてるのに死んでないんだから。


 魔女のほうは眼を見開いて愕然としてるし、ガイノイドのほうも、眼しかないから表情に乏しいけど、それでもなんか驚いたような雰囲気が顔から出てる。


 そうそう、それと。

 こっちの銀色のほうは、氷の属性だとか言ってたな。

 つまり、氷の塊を飛ばしたり、冷気を放出して凍らせたりとか、その手のことを得意としてるってわけか。いいこと聞いた。


 貴重な情報ありがとな魔女さん。

 火炎ぶっぱで燃やそうとしてきたのは、それでチャラにしてやるよ。


「よっ……と」


 マントを脱ぎ、埃を落とすように振る。

 その勢いで、炎が飛び散る。

 勢いに耐えきれず、マントがちぎれ飛ぶ。


ばさっ、ばさばさっ


 燃えてボロクズになったマント。

 炎を振り飛ばしてはみたけれど、これではもう使い物にならないな。火事場から拾ってきたばかりの布切れにしか見えない。


 再利用を諦め、そこらにポイ捨てする。

 さらばマント。

 

「わかっちゃいたが、やっぱヤバい炎だな

……マントがやられちまった」


 ただ、他の衣服やブーツは無事だ。

 やられたのは、マントのみ。

 この女がぶちまけてきた炎も、俺のスキルを突き抜けて、体や服にまで影響することはできなかったらしい(あちらさんも本気の炎ではなかったと思うが)。


 そう。

 俺が持つ、三種のスキルのうち、ひとつ。

 生まれついで持っていたスキル。



 それが、あらゆる攻撃に耐性がある『すべてにつよい』のスキルだ。



 常に発動してるというか、そういう体質というか……ま、俺も細かいところはよくわかんないけど、多分そんな感じなんだろうなとザックリ認識してる。

 で、今回。

 魔女の炎もそれで耐えたと。


「服が無事なだけでもマシか。とんでもないね、魔女の力ってのは。反転させたとか言ってけどさ、国を守るための力をそのまんまヤバい力にしたってだけのことはあるよ」


「バカな……」


『……理解不能。あり得ない事態が、起きている。先ほどの、熱エネルギー攻撃は……人間の耐えうる火力では……』


 そうなんだ。

 結構ひどい熱量だったんだな、今の。

 そんな、人間に対してやり過ぎなほどの炎で攻撃しやがって。どうしてくれようかこのアマ。

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