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現代社会に居場所なさそうなので異世界で新生活始めることにした~女神の誘いは波乱の始まり~   作者: まんぼうしおから


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5・大漁

 帰り道。

 死臭と死体を、さっさと通り過ぎ乗り越え、街の外壁を抜けて。


 あの、俺の専用席となったところに。

 川沿いにある、あの小岩に向かう。


「へへへ、笑いが止まらんぜよ」


 大漁だった。

 こんなにいっぱい手に入るとは夢にも思わなかった。


 背中にしょってる戦利品。

 その重みが、実に心地いい。

 心地よさのあまり、口から勝手に不気味な笑いがこぼれてしまう。



 ──小岩に到着。


 鼻唄混じりに、すぐさまズタ袋の中身を確認する。

 袋の口を開き、たまらず手を突っ込んで、入っているものを鷲掴み。

 乱暴に戦利品を取り出す。


「うふふ、ふっふふふ」


 出てきたものを見て、鼻唄が、本格的な含み笑いへと変わる。


 飲み物探しこそ不発に終わったが、他は大成功だった。

 干し肉。干し魚。

 乾燥させた果物。アーモンドとかの木の実。

 長持ちする食い物がこんなに手に入った。

 凄い。


 これなら、チビチビ消費しながら旅をすれば、食べる物が何もかもなくなる前にどこかの国にまで到着できるのではないかと、そう思う。


 到着さえすれば、あとはどうとでもなる。

 安く買い叩かれないよう、気をつけて、手持ちの宝石を売る。

 気をつけたところで相場とかわからんし、無駄なあがきかもしれんけど。

 それを当座の生活費にして、その間に自分でもやれそうな職を探す──というプランだ。


 ざっくりとした、しかしわかりやすく、手堅さのあるプラン。

 それがうまく実行できるかどうか。


 ……だが、今はまだ、そこまで先のことを悩むことはない。

 それは早い。


 だってまだ大規模火災ゾーンにいるんだから。


 悩むのは、鎮火する様子がずっと先らしいこの地獄を脱け出してからにしよう。


 まずは、よその土地に踏み込まないと。

 どこでもいいから、でもできることなら欲を言うと犯罪とかあまり起きない国に。

 全ては、そこからだ。


「食い物も見つかったし、今日は贅沢──いや、それはナシか。調子に乗るとろくなことにならないよな。たくさん食うのは、どっかの国に着いたらにしよう」


 今は、ゲームで例えるなら、エリアを探索してアイテムを見つけ、それらを消費しながらやりくりしていくパートだ。

 後先考えずアイテムを使い切れば手詰まりになる。


 敵を倒して得たり、探索で見つけた金でアイテムを購入したりする、安定したパートじゃない。

 それはよその国に着いてからの話だ。


「今は節約生活だな」


 探す以外に食い物を手に入れることができない状況なんだから、それがいい。

 しかも、旅を始めたら、その探すことすら困難になる。

 あるものだけで生きていかないと。


 飢え死になんてお断りだ。

 質素にいこう。



 そう決意して、それからやはり、


「……もうちょい持ってくるか」


 食い物や金品はあればあるほどいい。

 持ち過ぎたせいでタチの悪いものを呼び寄せることもあるだろう。

 けど、持ってなさ過ぎるせいで困ったことになるケースのほうが、はるかに多いに決まってる。


 ズタ袋を置き去りにして、俺はまたあの、ぐるりと高い壁に囲まれた巨大な死体置き場に向かっていった。



 特にトラブルもなかった。

 一回目と同じように持ち帰れた。


 もう死体も見慣れて死臭も嗅ぎ慣れた。


 食料の詰まったズタ袋が二個になった。

 宝石袋も二個になった。



 もう一回だけ、遅い昼飯を食べてから、欲を出してまた行った。


 食料の詰まったズタ袋が三個になった。

 宝石袋も三個になった。


 時計がないから正確な時刻はわからないけど、もう、おやつの時間はとっくに過ぎてるはずだ。



「……ん、流石にズタ袋みっつとなると、ちょっぴり重いか」


 欲張って詰め込んだせいで、一袋につき三十キロはありそうだ。

 それがみっつ。


 つまり、約九十キロ。


 結構な重さではあるとは思うけど、ぜんぜん持てたりする。

 同年代の奴がこんなことやったらカエルみたいに潰れるだろうけど俺は凄いので余裕。

 なんならもっと持てる。


 ただ、どうやって持ち運ぶかというのが、問題だ。


 俺は力こそ人間離れしてるが、体格は、同年代と比べたらまあまあデカイってくらいのものだ。

 身長は百七十センチちょい。

 肩幅も、身長に相応しく、それなり。


 これだとズタ袋をみっつ背中に乗せるのが限界だろう。

 引きずっていくのなら何袋だろうと関係ないが、そんなことして破れたら元も子もない。

 台車や荷車があればなぁ……。


 これ以上やるってんなら、以前にネットで見た昔の蕎麦屋の出前みたいな無茶をやるか、フォークリフトのいらない空手家の真似をするか。


「そこまでしなくても、いいよな」


 メシの蓄えられた袋が、三個。

 もうこれだけあればいらないか。


「それに、いつまでも準備ばかりしてられない。あの令嬢に見つかる前にこんなとこから去らないと……」


 太陽も傾き、夕方になりつつある。

 出発は明日にして、今日は晩飯食ってさっさと寝るか。


 明日になればさらに弱火になってるだろ。





 そして明日の朝。



 よかった。

 欲張っておいてよかった。

 ついこないだまで小学六年生だった俺の見通しは、甘そうで意外と正しかった。


 燃え上がる、嫌な人間だらけだった街。


 放火魔女の炎は、その勢いをさらに強めていた。

 弱火になるどころか、恐ろしいことに、街の外壁すらも燃やし始めている。

 外壁があんなことになるんじゃ、街中の石造りやレンガ造りの家もやられてしまってるだろう。

 なら、地下にあった食料や、上の階にあった金品も……。


 昨日の内に家捜しをやれるだけやっといてよかったと、本当に、心の底からそう思った。


 ここがこんなことになってるなら、他の街や村も、同じくらいに駄目押しくらって滅んでるに違いない。

 この国が終わったんじゃないかという、俺の推測。いよいよ当たりかもしれん。



 しかも、さらに困ったのは。



 二体の謎の飛行物体が、朝日に照らされながら、遠くの空で、ぶつかったり飛び道具を飛ばしあったりしていたことだった。

 なんだあれ。やばいな。

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