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家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~  作者: うるいあ
3章 平民の実習期間

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59 恋と矜持と友情


同性愛者を装う異性愛者だった彼は、友情を結んだ女性に手を出し、その理由を「貴方が魅力的だから」と半ば被害者のせいにした。苦しみながらも、秘密の共有によって見せる甘美な夢の世界で少女たちは彼を許した。恋愛結婚に憧れながら、政略結婚をせざるを得ない、少女たちには、それは小説の中の主人公だけが味わうことのできる、純愛という名の夢だった。悲恋で彩られ、日常に戻ることが容易であったのならば、執着する意味もなかったのかもしれない。

ただ、一人泣き出した私の……友人、であった彼女に、その事実を告げられ、オロオロと泣き崩れながら戸惑う様子を見て、私は激高した。


許せなかった。


おかしい。そんなものは異常だ。馬鹿にしている。

だから、次期王妃としてその罪を追求しようとした。


結果、その子は私を陥れ、断罪からの幽閉からの自殺未遂で前世がカモーン、だったわけだ。


ハイド様が、この事情を知らなかったわけがない。


つまりあの方は、闇に葬る、という判断をしたのだろう。

貞操を守りきれなかった者が何人かは知らないが、狙われ、結果応えたは中級から低級貴族。そういった事情を「多少の」として、地方や後妻や第二夫人に特権なりお金を積むなりすれば、問題は解決できないこともない。

それでも、そうしてでも獣人との友好関係を築くことができるなら、隠蔽は選択肢に入る。

獣人を中心とする森にはたくさんの資源があったし、友好を深める意味であのオネエもどきは学園にいたのだから。また、唐突に現れるダンジョンは特需として認識されていて、その発見や攻略に、獣人は今や無くてはならない。ダンジョンがあるから、種族間の抗争がない。


だから、ある意味この国の政策は成功したのだ。

一人の少女に惚れた、それだけで有利に事が進むのであればお安い。

むしろその醜聞が、今後の取引材料となれば、数十年は有利とかんがえられる。恋よりも何よりも、事件そのものがその年数をより保証する。

次期王たるハイド様ならば、そう判断しただろう。それに国家を担う貴族たちが追従した。

そして被害者である淑女たちは、それを受け入れた。

皆がそれを忘れることで、了承された。

真実を知らぬ者は、知らないでいられるよう。

話そうとするものは、排除する。その姿勢を示さねばならない。


ああ、そうか。

私は見せしめに、ちょうどよかったのかもしれない。


『貴方は最低の人間よ、獣だわ』


あれは結局、私が言うべきものじゃなかったんだろう。


でも、どうしても許せなかったのだから、仕方ないわ。

それが、恋い焦がれる少女だったからなのか、次期王妃としての矜持だったのか、――大事な友人を傷つけられたからだったのか。

それとも、アリアの嫉妬に狂った故に、取り巻きの一人に過度な怒りをぶつけたのか。

前世の倫理観が、にじみ出た結果の違和感だったのか。

ゲームのシナリオゆえの、強制力だったのか。


どうにもあの時の感情はぐちゃぐちゃで、今は整理できるものではない。マグマみたいに揺れて、憤ったあの感情を細切れにして理由をつけても、きっと納得なんてできない。


――王様や王妃様が、どの段階でこの醜聞を知るのか。バレないわけがない。子供だましなんか文字通り通じない相手だ。

私と王妃様が共有していた政策方針は、現在の状況を強化するものだった。その方針は当然王様の了承を受けてのことだろう。ハイド様が次期王とはいえ、その権限でここまでのことが許されるのか――そして、強行できるのか。

それは、ハイド様の王位継承を後押しするほどの成果をもたらすものなのか。っていうか、ハイド様はそうしなきゃいけないくらい、王位が不安定なものだったんだろうか? 私の目から見たら他の追随を許さないくらい優秀で、加えて他に目立った王位継承者はいないはずだ。


もはや、そんなことはどうでもいい。どうでもいい、ことにしなきゃいけない。

もう、私はあそこに戻らないのだから。帰らないのだから。



ユーフェミアはいなくなったんだから。



「言えなくてごめんね」


心配してくれる、この子達に聞かせられる内容じゃないのだ。

三人は、思ったより大人だし、酷い状況にも対面しているだろう。

例え、この三人がどんな修羅場をくぐり抜けていたとしても、私の心情として子どもにして良い話じゃない。

揺れるのは、茶色の髪。頬にかかって、ちょっとチクチクする。以前の髪よりも固くて、弾力のあるそれは、頭を戻すと跳ね返るみたいに視界から消える。


「ま、こっちにも言えないことはあるし」


ちょっと悪ぶったスタ君が、にやりと笑って沈黙を破った。


「……ああ」


頷いたテル君に、ほっとしたヨーイ君が肩の力を抜いた。



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