第三十二話「霧原 零Ⅶ」
施設全体に現れたのは、機械仕掛けの龍。
だがその威圧感は、本物の龍に近いモノを持っている。
それを感じていたのは、施設に居るドラグニカと呼ばれる者たちだった。
『くそっ!どうして、龍紋が反応しないんだ!』
『いいから逃げろ!!』
『きゃあっっ!!』
会場から逃げる者。
施設の中で蹲る者。
誰かと手を繋ぐ者。
「水無月さん、あなたは何を考えているのですか!?」
「私はちゃんと言ったよ?生と死を懸けたデスゲームだって。あの龍は、私が作った龍たちで、個々の能力はあなたたちの研究データを基盤にした物。研究者というのは、時には非情にならなきゃいけないんだよ?九条咲ちゃん」
「っ……桐華!!亜理紗!!執行部はこれより、討伐隊として動きます!各生徒は避難して!生徒会に登録してる者は、全員各生徒の事を守って見せなさい!!」
「あら、いい子にゃんだから♪」
「生徒会長として、執行部部長として、当然の判断です。もう誰も死なせない。……その為にこの場所を作ったんだから」
咲がそう呟くと、水無月は嬉しそうな笑みを浮かべる。
取り押さえられる水無月のその視線には、何か優しさのような物が含まれていた。
「亜理紗、動ける?」
「……え、ええ。けど私、手が震えて……」
「亜理紗……(これじゃ戦えない。龍紋の発動どころか、内側から喰われかねない)」
微かに震える亜理紗を見て、桐華は深呼吸をして銃を出現させる。
元から発動してたオルトロスの銃ではなく、もう一丁の銃を出現させていた。
それを見て亜理紗は、機械龍を元へと向かおうとした桐華の腕を掴んだ。
「それは駄目ですわ!」
「大丈夫。時間制限は守るから、亜理紗は避難してて」
「桐華さん!!」
竜巻を出現させた桐華の腕から、亜理紗は風圧に負けて離してしまった。
離れた事を確認した桐華は、機械龍を見据えて二丁の銃を交差して目を閉じた。
「――行くよ、オルトロスッ!ケルベロスッ!」
そう言い放った桐華に反応するように、彼女の龍紋は赤と青の光を放った。
その光に包まれた彼女を見て、亜理紗は拳を握った自分の頬を殴ってそれを呼んだ。
「私だけ何もしない?そんな訳には行きませんわ、藤堂亜理紗!――トライデントッ!!」
亜理紗がそう叫んだ瞬間、上空から落雷が彼女へと落ちる。
雷に包まれた彼女と竜巻に包まれた彼女……双方の光が消えた時、それは姿を現した。
「くぅちゃん、あれが執行部なのかにゃ?」
「……そうですよ。私を含めた執行部の真の姿です。その目に焼き付けて下さい?あれが私が集めた精鋭のドラグニカ……「電撃姫」と「双撃姫」です」
雷撃を纏った槍を持ち、脚部を龍化させた藤堂亜理紗。
炎と水を纏う銃を持ち、両腕を龍化させた藍原桐華。
序列第5位と第3位の共同戦線が開始されたのであった――。




