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【完結】ドラグニカ ~剣と契り~【1stシーズン】  作者: 三城谷
第3章【黒き龍を纏う者】
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第三十話「霧原 零Ⅴ」

 ――やらなければ良かった。


 そうした後悔というのは、後から気付く事しかない。

そしてその後悔は、時間が経てば経つ程に根強くなっていく。

この龍紋の力を使ったのは二回目で、あの時から全てが変わってしまった。


 「……いや、もう後悔しても無意味だな」


 吐き捨てるようにそう言いながら、俺は自分の部屋へと戻ってきた。

いや、戻ってきてしまったが正しいだろう。

あの場所に……あんな場所に長く居たくなかったからだ。


 「今日の夜にでも出て行くか。ここに居る理由は、俺には無いんだから。そうだろ?」


 シャワーを浴びながら、鏡に映る自分に問い掛ける。

馬鹿げた行動でしかない。だけれど、今の俺にそんな余裕は無かった。

かつて浴びた事のある視線は、久し振りでも来るモノがあると感じたから。


 「――これの所為で、化物扱いだな。全く」


 全く以って、不愉快である。

あの時も同じ目をした人が居て、俺に同じ言葉を言っていた気がする。

ただずっと、怯えながら……来ないでと、懇願するように。


 『そんな事を考えても、もう今更だと思うよ?』

 「…………そう思うか?」

 『うん、とても無駄な事だと思う』


 これは自分の投影だ。あの頃の、無邪気な頃に地獄を知った俺だ。

その幼い者が、幼いが故に抱いた最初の感情の化身。


 『大人しく身を委ねればいいのに。そうすれば楽になるよ?』

 「俺はお前みたいに無駄な犠牲は出さないさ」

 『そうなの?制御出来る時間が限られてるのに?』

 「すぐに屈服させるさ。俺はお前とは違うやり方でやる」

 『そう。じゃあ仕方ない。もう少し待つよ。でも……本当にこのままで居られるかな?くくっ』

 

 そう言い残して、幼い俺の投影は消えていった。

あれは俺とは違う存在であり、俺よりも化物な存在だ。

龍紋を発動する度、あれはその感情を具現化させようと侵食してくる。


 幼い頃に抱いた感情を。復讐という目的を果たそうとする為の憎悪を。


  ◆


 『あーあ、面白くなると思ったのにな』

 『編入生も帰っちまったし、藤堂も戦意喪失』

 『あれがこの場所で3位とか、がっかりだな』


 観客席に居た者が、つまらなそうに声を大にして言った。

周囲に居た者たちがそれに便乗し、誰もが霧原零と藤堂亜理紗を侮辱し始める。

聞こえてくるのは罵声と非難の声。その声たちに自重さが無くなった途端――


 「……うるさい。龍紋も使えない役立たずが、大きな声を出すな。次はその眉間を撃ち抜く」


 ――銃を上空に放ったのは、藍原桐華だった。

周囲の声は制止し、彼女は嫌悪を表した視線を動かす。


 「へぇ~、きぃちゃんが苛立つなんて珍しい事もあるんだね」

 「……水無月、今は貴女の相手をする気は無い」

 「そう。ふうん、じゃあこうしようか!ここに居る全員の命を懸けて――」


 白衣を着た少女は、両手を広げて大声をあげた。

第3体育館が、いや施設全体を何かが揺らし始める。

地面が開き、サイレンが鳴り響く。施設の各地でそれは出現した。

そして白衣の少女、水無月は笑みを浮かべて言うのだった――。


 「――さぁ始めよう。ここからは命を懸けたデスゲームだ!クリア条件は、生き残る事だにゃん♪」

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