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鳴素の共鳴  作者: 佐々木勇二


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プロローグ:楔

夜半過ぎ、北の山に立つ最古の塔が、内側から砕けた。

音ではなかった。

振動だった。

大地を這い、空気を割り、眠っていた者の胸を叩く、低く長い震え。

塔のコアから溢れ出した鳴素が、行き場を失って虚空へと駆け上がる。青白い光が夜空を二つに割り、見えない穴が開いた。

それは一瞬だった。

だが、穴はたしかに、開いた。

遠くの丘で、一人の男がその光を見ていた。

外套の裾が風に揺れた。男は動かなかった。光が消えるまで、ただ見ていた。瞳の中で青白い残像が揺れ、やがて消えた。

「……始まりだ」

震える声だった。喜びではなく、覚悟の声だった。

男は背を向け、闇の中へと消えた。

足音はなかった。

塔の番人たちは崩壊したコアの前で立ち尽くしていた。何が起きたのか、誰も説明できなかった。石の床に焦げ跡があった。中心から放射状に広がる、まるで何かが爆ぜたような痕。だが熱はなかった。触れれば冷たかった。

ただ一つだけ、確かなことがあった。

世界の何かが、この夜を境に、少しだけ変わっていた。


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