表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/104

7月18日(月) アコーダンス

 タピオカは一旦、タッパーに入れてある分を全部廃棄した。あからさまに変色しているし、匂いも怪しい。こんなものを301号室に持っていたアホは誰だ。


 チェリーは野菜作りよりも先に励むべきものがあるだろうに。

 彼女がよその男のところへ泊まり込んだら、今度はミスター・スプリッツァーが1105号室へ女を連れ込んでいる。あんな性病の特売セールみたいな女、チェリーとは比べることも馬鹿らしいほどだ。それでもとにかく、あの長耳には従順だし、彼女も賭場で拾ってきたらしい。

 今思い至ったが、チェリーがこれまで男に同伴してカジノへ出かけたことは愚か、ギャンブルへはまっている素振りを見せたことすら一度もない。やはり共通の趣味、価値観のない者同士の関係性は、長続きしないのだろう。

 とにかく俺は、昼休みに診療所で抗生物質をもらってきた。


 マンハッタンの焼き餅なんか可愛らしいものさ。カリフォルニアの娼婦達と言ったら……あの時は、ちょっとくらい刺されてやった方が連中も鬱憤を発散できて良かろうと魔が刺した。まさか黒魔術の嗜みがある奴がいるなんて思いもよらなかったからな。お前が止めに入らなきゃ、俺は一生女とヤレなくなってたかもしれん。


 タイピンは確認した。別に俺は漢方の効果を否定してる訳じゃない。中華料理だって好きだ。さっき診療所の帰りにエッグタルトを買ってきた、お前にも一個分けてやる。

 

 マルキはドワーフの血を引いてると言え、これまで人間と変わらない生活環境で生きてきたと聞く。いわゆる朝型生活って奴だ。そうなると、やはりホテルでの就業はかなり辛いものがあるだろう。

 俺達もそうだったと言えるが……これは頑丈に産んでくれた親に感謝だな。というか、お前は勤務中にも暇さえあれば昼寝してる。さっきも例の非常階段で居眠りしやがって、バレてないて思ってんのか。俺が覗きに行ったの、気付いてなかっただろう。無防備な奴め。


 シリアル・キラーか。これも人間の文化の逆輸入なのかもしれんが、最近は吸血鬼ばかりを標的にした人狼やら、おかしな奴らも色々増えているらしいからな。ヴァチカンの連中も、自分の目の届かないところでトラブルを起こして欲しくないんだろう。

 このホテルは昔から、一種の治外法権的な位置付けだったとは言え、近頃は品のない連中も増えている。909号室に客が放置していった死体、どうやらゾンビ・ウイルスへ感染していたらしい。失血死しているものかと思って片付けようとしたら、いきなり起き上がって噛みつこうとしてきやがった。咄嗟に椅子を叩きつけて牽制した(今は金がない、悪いが弁償金はピサンから出すぞ)が、あわやコザックがやられるところだった。

 シェイプ・シフターはウイルスに弱い、細胞の関係上、増殖速度が凄まじく、あっという間に腐敗する。今までもコザックは2階にはやらないようにしてたが、厄介だな。


 死体は頭を握り潰した後ビニールシートをかけてある。今回は全身用のLサイズを使ったが、部分用のMサイズの在庫がなくなっていた。さっきアマゾンで発注してある。ここのところ、体液の漏れ出しが激しい部位は二重で包むようになったから、減りが早い。お前も気をつけて見ておけ。


 あの妖精の子をジレの胸ポケットに入れていたのは、結局寝かしつけ出来なかったからか。随分懐かれてるじゃないか。

 年少の妖精達は年長者達が働いている間、好き放題している。さっきも電話でワイワイキャーキャー「フォンダンショコラとタピオカチーズティーをください」なんぞと掛かってきた。子供達からのオーダーは一切無視してくれとお姉さん達からは頼まれてる(彼女達は余裕のある生活をしている訳じゃない)俺も、あまり甘やかすのは良くないと思うが……まあ、子供だしな。結局、ロベルタは気を利かして、フォンダンショコラだけサービスしてやったようだ。


$2,122.8

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ