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6月22日(水) エメラーダ

 ヘアスタイルが全然決まらない! これだから雨は嫌いなんだ、早く南の島に行きたいよ!

 笑うなよアコード、笑ったら怒るからな、本気だからな。


 出勤していきなり、勃起したままの死体を片付けさせられるなんて最悪だ。せっかく風呂へ入ってきたのに。

 この連日の空模様で、誰もが陰鬱な気持ちになってる。403号室が雨漏りを起こしていたから隣室へルームチェンジ。家族連れだったんだけど、子供は泣いてる、父親はずっとグチグチ文句を垂れていて、母親は爆発しないでいるのが精一杯って顔で宥め続けるって、客観的に見たらつまんないコメディみたいな有様。


 ミセス・ラ・プレイスは湿度が高くて股関節が痛いそうだし、ミスター・パルファムは低気圧性の頭痛でベッドにこもりきりでアスピリンを1時間に3錠ずつ飲んでいる。オーキッドの肌は心なしかジトジトして、地下鉄の中で汗ばんでるおっさんみたいだしさ、ウエーッ。


 車寄せの周りと中庭の出入り口は3時間に一回くらいモップをかけている。駐車場は屋外の方が、もうすぐ水溜りで水没しそうだ。人間の宗教だと、一度世界は洪水で洗い流されて、それからすっかり綺麗になったんだろう。助かった奴ら、よっぽど水はけの良い場所へ住んでいたに違いない。それで、水辺から離れてた。アワーグラス・リバーのドブ臭さがフロントまで流れ込んできて、まるで川の中で暮らしてるみたいだ。


 水面が濁った漣を立てるような風が吹いて、臭いミストを浴び続けるのに耐えられなくなったんだろう。橋の下に住んでいた野良猫達が何匹か街に避難してきてる。軒下を貸してやった時に話してたんだけど、最近、下町ではゾンビ・ラットが流行ってるらしい。元々は人間のゾンビがマンホールの下に潜んで、ワニやホームレスを食いながら冬を越していた。その残骸を齧ったらネズミがウイルスに感染して、しかもこのジメジメな季節で菌が繁殖したもんだから、4区の辺りなんか悲惨なことになってるとか。自分も感染したら怖いから、ウイルスに耐性を持ってるスーパー・ラットしか食べないようにしてるって言ってる奴もいた。ゾンビよりも化学添加物の方がまだマシってこと?


 納得がいった。ここ数日、立て続けに、SRに放り込んでたゾンビが復活してる。しかも腐敗を増しながら。斧で首を叩き切るにしてもネチャッと糸を引いて、消毒して研いだ後にちゃんと油を塗ってるけど、いい加減買い替えたいな。でもクロックに言ったら自費で購入しろって言われそうだ。


 ラット達はホテルにもやってきたらおっかないし、クロックに報告したら、とりあえずSRに積んであるネズミ捕りと猫いらず(いやな名前だ)を全部出してきて設置することになった。みんなで時間を見つけて、罠の埃を払って手入れするようにって。事務所の隅に積んである。

 噛まれても実害のない、というか実体がないからネズミ達が歯を立てられないシルキー達にも目を光らせるようにって周知しておくそうだけど、難しいだろうな。彼女達、変なところで乙女さを発揮して、ネズミが足元を走り抜けようものなら、バンシーみたいな悲鳴をあげたりするから。

 マルキは「先輩が捕まえたらどうですか」なんて馬鹿なこと言ってたけど。俺だってゾンビ・ラットなんかいやだ。


 コモドールの髪がロックグラスに入ってたところで、俺は驚かないよ。あいつ、21世紀にもなって、メタラーみたいなロン毛だし。

 奴はお前に惚れてるんだって、ロベルタが言ってた。だから大人しく引き下がったんじゃないの。そうじゃなきゃあの頑固なヴァンピールが、酔っ払いの喉に噛み付かなかった説明がつかない。


 ミスター・パルファムの部屋に鎮痛剤を持って行った時、ミス・アンシャンテが俺の顔を見つめて「私とメイクラブしたいの?」って聞いてきた。お前、何か余計なこと言っただろ! ほんとにやめてくれよ!


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