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ハーリーバーリー・ハイツの人でなしども──狼男と豹男の業務日誌から  作者: 車海老 鯛焼
5月 ヴァンパイア・ウォンツ・トゥ・パーティー・オール・ザ・タイム
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5月4日(水) アコーダンス

 お前が買ってきたメープル・シロップだが、部屋に来たサンジェルマンモーニが持って帰っちまった。相当有名なブランドだったんだな、道理でうまいはずだ……


 ドロレスは今日も俺が8階にいる間、ずっと周りをうろうろして、山の思い出や、何とかって有名な俳優にみんなで食事へ連れてってもらったって話をしてる。彼女が元気を取り戻したようで何よりだ。


 それはそうとして、妖精や、お前達CPの生命倫理に対する感覚は、やはりどうしても理解できん。5人の女の子達が山へ登った。川遊びで姉妹の1人が魚に飲まれて行方不明になり、その代わり国立公園で退屈していた子が2人、一緒に都会へ出たいと言って、結局女の子は6人山を降りた。なのにどいつもこいつも、悲しいけどそんなもんだって平然としてる。何なら妖精達は、1人増えたなら賑やかになって結果的に悪くないと喜んでる始末だ。

 これは俺がパック(群れ)って規範で生きてきた人狼だからなのか? さっぱり分からんな。


 1101号室へお邪魔した帰り、廊下でチェリーと鉢合わせした。半分笑いながらだったが、最近彼女の肌に湿疹ができたのはそのせいかと詰られた。俺は病気なんか持ってない、まずいと思ったらすぐに診療所へ行く。もしも何かに罹ってるなら、それは間違いなくアルクディアだ(あと言い忘れたが、俺はあいつと一緒に風呂なんか入ってない。想像しただけで寒気がする)


 昼過ぎに出勤しようとゲンソーラー通りを歩いていたら、例のウォーキング・デッド協会とそのシンパが抗議運動をしていた。ニュースになってる、雨が降ってるのに外のテラス席へゾンビ客を無理やり追い出したスターバックスって、あの店か。クロックはいつもあそこで血液入りコーヒーを買ってるから、すっかりイライラしていた。いい気味だ。


 このホテルにもいつあの手の集団が押しかけてくるか分からないと、経営者達は危惧しているらしい。ゾンビ客のアサインを、これまでの2階のみから、段階的に増やしていくかもしれないとのことだ。うんざりする。マルキなんかは大学出らしく、「それも時代の流れですよね」なんて賢しらな口を聞いていたが、そんなに言うなら一度、一人でゾンビの部屋担当に回してやろうか。

 それに清掃担当のシルキー達が黙っちゃいないだろう。今でも2階を片付けるのは、最も地位の低い幽霊だって聞く。それも、粘り強い交渉でようやく引き受けてくれることになった結果だ。 


 土曜日から、一週間ほど吸血鬼のソノラとスティンガーのモルナール兄弟が宿泊する。俺のジム仲間の人狼オーレ(あいつも宿泊だ、部屋を押さえてある)の上司で、SPKやアリンの実質的オーナーだ。アップタウンの住居を改装するらしいが、滞在中暇潰しにパーティーでも開くかもしれないと。

 モルナール一族はこのホテルの全盛期に、かなり儲けさせてくれたそうだから、とにかく礼を失するなとクロックも張り切ってる。街の名士だ、チップもじゃんじゃんくれるぞ、気を引き締めろ。


 暖かくなったからか、引きこもっていた714号室の巨人が時々外出してる。次の失業保険の支給日に呼び止めて金を払うよう促せとクロックが抜かしていたが、自分で言えないってのか、全く。

 やるにしても、何か対策を考えないと。この前の時みたいに投げ飛ばされるのはごめんだ。どうせならこのホテルから永遠にチェックアウトさせられれば言う事なしなんだがな。そんな度胸すらクロックにはない、統括本部長が聞いて呆れる。

 

 お前がここのところずっと探し回ってたワイヤレスイヤホンだが、俺の部屋の充電器に突っ込んだまま忘れていっただろう。ロッカーに放り込んどいたぞ。こんなボロいのいい加減に捨てて、新しいのへ買い替えろよ。充電もすぐに切れるし。お前は変なところでも物持ちがいい──感心してない、馬鹿にしてるんだ。


$2,403.15

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