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4月29日(金) エメラーダ

 516号室の卵、事務所の冷蔵庫のタピオカ用タッパーへ入れておけば良かったのに。絶対見分けなんかつかなかったよ。


 俺の両親は勤勉な性質だったけど、あまり貯金をするって概念がなかった。そもそもどれだけ働いたって、薄給と子沢山じゃ、とても金なんか貯まらなかったしな。俺も溜め込むのは苦手なんだ。だから711号室のミスター・ベラーノの気持ちだって、全く分からないことはない。

 そういうお前だって、宵越しの銭は持たない主義の癖に。結局、俺達はそもそも貯蓄とか、安定志向ってものに向いてないんだよ。

 それでも、俺達だって男一匹な訳だし、お前のいう通り、施し物を求めて手を差し出す生活なんて、本来よくないんだろう、きっと。特にお前は、そういうのをものすごく嫌うから。


 一ヶ月も待つ必要なんてなかった。ロビーで酔ったミスター・スプリッツァーに突き飛ばされ、チェリーが転んで頭を打った。すぐ意識を取り戻したけど、ウーバーで病院に送り付けてある。配車を待ってる間、ミスター・スプリッツァーは涙ぐみながらチェリーに謝ってた。毎度の話になりつつあるとは言え、付き合わされるのはいい加減うんざりだな。

 あと、アルクディアとお前から同じバスボムの匂いがした。もしかして3人で入ったのか? 


 この数日はとにかく血まみれの日々が続いてる。


 マンハッタンが作った死体。これは、業者への回収最低人数が復活したから、引き取ってもらった。まだ彼女には伝えてない。あんまり張り切られると、こっちの労力が増えるもんな。


 1003号室から変な声が聞こえるって隣室の苦情があって、空室だった部屋を確認しに行ったら、タンスの中に瀕死の青年が折り畳まれた状態で詰め込んであった。コンクル通りに捨ててきたけど、この部屋でヴァンピールの客がチェックアウトしたのは昨日の朝のはず。シルキー達はとっくに清掃へ入ってる。どうして置いてあったんだろう。


 合点が行かなかったと言えば、613号室の二人連れ、どうやら生まれ変わりたての方は、儀式の直後にエクソシストへ銀器で負傷させられたらしい。まだ肉体が吸血鬼として馴染んでいない、どっちつかずの状態での怪我だから、ありとあらゆる手段を尽くしてるようだ。でも、難しいだろうな。最近あの部屋の前を通りかかるたびに、死の匂いがぷんぷんしてくる。

 例えいくらかは吸血鬼と言え、耐えられるだけ苦しみを長引かせようとするのは酷だと思う。さっさと楽にしてやればいいのに。けれど、主人の方の吸血鬼は、随分と入れ込んで、もうずっと付きっきりだ。あいつらにも一応、愛情なんてものはあるんだな。


 803号室のドロレスは、お前にフラれて以来、一昼夜ベッドに潜って泣き通しだったそうだ。舞台も目を腫らしながら頑張ってたって、健気じゃないか。

 彼女が傷心旅行に出たいとせがむから、今度のメイン州行きに連れて行ってやることにした。そしたら彼女の姉妹達もわらわら集まって、総勢5人のガール・スカウトになっちまった。彼女らのお姉さんも止めてくれればいいのに、妖精って生き物はとことん厚かましい。

 仕方ないから、クライミング中はリュックサックに入れておくよ。早速皆、何を着ていくとか、小石で窯を作って太陽光でパンを焼くだとかはしゃいでいる。

 彼女達は幼い頃に故郷の妖精の国を出て、ずっと都会でどさ回りを続けているんだ。根本的に、自然への憧れがあるのかもしれない。


 お土産リスト、いるなら早く寄越してくれ、直前になったら忘れちゃいそうだ。


 俺が旅行へ行ってる間に、メガ・ミリオンズの当選発表日が来る。山の上だとスマートフォンの電波が届かないかも知れないから、お前が確認しといてくれ。まだくじ札は持ってるよな?

 当たる訳なんてないって分かってるけど、ちょっとでもチャンスがあれば飛びつく。よく考えたら俺、今までずっと、そういう生き方をしてきた。別に後悔しちゃいないけど。


$2,804.04

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