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3月20日(日) アコーダンス

 意地を張る前に現実を見ろ。それともう80年は言い続けてるが、俺はネズミは、しかも河原で捕まえてきた奴なんか食わん。


 何が厳しい態度だ。1105号室と709号室のベランダがカラスに襲撃されて大変なことになってる。

 ダーク・エルフは構わない、奴は元々ゴミの中に住んでるようなものだからな。ポリ袋の中身が散乱していたところで気付きもしないだろう。


 ヒッチビーから連絡があった時、俺がフロントにいなかった理由を教えてやろう。リーフレタスのプランターをクソ鳥にひっくり返されて、ミスター・スプリッツァーに「だからそんなもの育てても意味がないと言ったんだ」と散々嘲笑された挙句、泣きながらタイルの上に散らばった土を片付けていたチェリーを手伝ってたんだよ。

 お前のせいで、彼女の1ヶ月の努力は無に帰した。すっかり弱り果ててる。人間は肉体だけじゃなくて精神的にも脆いんだ、本来はこんなところで暮らすべきじゃない。しかも彼女は遠く魔女の血筋を引いているから、夜歩く者たちに狙われやすいし、こうして食い物にされる素地がある。


 ヒッチビーについては、お前の言葉をそのまま返す。余計なお世話だ。彼女はさっき、1年に2回しか会わない旦那と夜食に行った。明朝帰ってきたら、そのままチェックアウトしなければの話だが、せいぜい慰めてやるさ。


 アルクディアも間抜けだな。俺は忠告してやったんだが、あいつは注射が嫌いだからとかごねて、診療所へ行かなかった。抗生物質を打っていたら、病気になることもなかったろうに。


 408号室の夫婦だが、夫の方に、人間用の粉ミルクを売っている場所はどこかと聞かれた。益々怪しい。俺達が介入する話じゃないが、ポリが来るとなれば話は別だ。


 ホイストの顔色は死人みたいだが、どうやら病院に行ったらしい。診断書を提出したと聞いた。まあ、元々小鬼なんて半分はゾンビみたいなものだ。だからお前も面と向かって「ハーフ・ゾンビ」とか呼ぶな。余計なトラブルを起こすんじゃない。


 今日もまたマンハッタンが死体を作った。気持ちは有り難いが、そんな頻繁に貰わなくても間に合ってる、と言うか、そろそろ冷蔵庫に入らなくなって困ってるのが正直なところだ。今日は1体だけ持ち帰って、残りはアルクディアにやったのと、回収にも出した。

 ここのところ、客への対応を含めて日に3回は6階に足を運んでるが、彼女とは全く会うことがない。ふわふわ浮いてる後ろ姿に声をかけたらシルキーだった。

 昔は彼女も、もう少し俺の前に姿を現してたし、普通に話をしていたように思うが、そういえばもう1年はまともに遭遇していない気がする。俺は元々幽霊への感応力があまり高くないことを差し引いても、少し異常なくらいに。完璧に避けられてるな、これは。

 彼女は綺麗なハニーブロンドの髪の持ち主だ。この前ググって生前の写真を見たが、今も美貌は衰えてないんだろう。


 221号室にルームチェンジしたゾンビの件。まさか部屋から生配信をすると思わなかった。それに、やってきた迷惑ユーチューバー仲間が、2階だって言ってるのにエレベーターを使おうとしたところを呼び止めたのは俺だ。そう、言葉で交渉しようとした。幸い俺の口には舌がついてるからな。

 ゾンビの体は腐敗してる。あんな勢いでカンガルー・キックなんざ喰らわせたら、そりゃ胸から頭までミートソースみたくグチャグチャになるだろうさ。


 張り切るのは構わないが、助けを期待するな。一緒に掃除させられたのは俺だぞ。服についた匂い、ピクシー達でもこれをどうにかするのは無理だ。また弁償じゃねえか、くそっ。

 クロックは「聞かなかったふりをする」と言ってる。その代わり、3人分を入れたゴミ袋5つは俺達で捨ててこいと。今日の仕事上がりに焼却場へ行くから、ロッカーで待ってろ。あと処理費用はお前が出せ、制服代はピサンから出していいから。


$3,067.76

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