12月20日(火) アコーダンス
金勘定も魚の買い付けもサブスクの設定も、何でもかんでもこっちに面倒臭い手続きを押し付けておいて、いざことが滞ったら文句か。お前は主体性ってものがないのか。その癖堪え性もなくニャーニャー泣き言を喚きやがる。それでも男か。
探偵には金を渡してある。騒いだって始まらない、待つしかないんだ。忍耐強く。
さっき透析を嫌がって暴れるミスター・モナコを取り押さえてきた。途中で彼もぐったりして大人しくなったが、「あなたはトーピードの彼氏なんですか? それともエメラーダさんが?」って聞かれた。そんな関係には一度たりともなったことがないと答えたら、彼は「なら僕がトーピードを殺しても怒りませんね」だと。立場上、仕方ないとは言え、命の恩人に対して持つ感情じゃないな。トーピードに伝えたが、彼女は全く愉快そうに笑っているばかりだった。
ブランケットのオーダーを断ってるせいか、ここのところゾンビの死体は多いが、今の季節はウイルスが増殖しないからまだマシだな。ただ、確かにSRはそろそろ満員だ。業者の爺さんが腰を痛めたらしくて、回収にくるのが遅れてる。
ここのところ2階へ行く頻度が多いせいか、ヴェルジーネに「もっと香水付けなよ」と顔を顰められる始末だ。言われずとも分かってる。俺の方が彼女よりも嗅覚が鋭い。彼女が数日風呂へ入らずに俺の顔へ跨ってきても、こちらが何も言わずにいるってことを、彼女は理解していないらしいな。
蛇と違って、幽霊は匂わない。
612号室へ事前に踏み台を運び込んでおいたら、マンハッタンがその上でジルバを踊っていた。フリンジがチャラチャラした裾から覗く脚が魅力的だ。スカートの中へ顔を突っ込んでやりたいくらいだよ。正直に言ったら蹴飛ばされたが、残念ながら痛くも痒くもない……本当に残念な話だ。彼女に触れることのできる肉体があったなら、間違いなくベッドへ一直線に向かっていたことことだろう。彼女もそうなることを望んでいる。
死んだばかりか、取り憑ける体質の身体があったらいいんだろうが、さすがにそんなことを提案するのはな……彼女もまた、妖精達に近い、少し不気味に感じるほど無邪気な面がある。
彼女がそんな挑発的な真似をしてみせたのは、チェリーが廊下を歩いているところへ遭遇したからやもしれん。マンハッタンはチェリーを見かけると、やたらピリピリソワソワする。どうやら恋敵として妬いてるらしい。少し気をつけて見ておいた方がいい。
チェリーもここのところ、意味もなくホテル内をウロウロしてることが多い。ミスター・モナコの情緒不安定へ同調しているかのように……まさかゾンビ・ウイルスが感染したんじゃないだろうな。そうでなくてもトラブルが続発しているのに、これ以上厄介ごとが増えるなんざ、考えるだけでゾッとなる。
311号室は奇跡的に、イエティが宿泊してあるタイミングで冷房が吹雪の如く効きまくっている。SPKで仕事を請けたDJだとか言うその客はご機嫌で、チップを200ドルだ。これはピサンに入れてある。
SPKと言えば、俺がよくアンシャンテのところに行くから、サンジェルマンモーニが色々と勘繰って「私も一緒に連れてってよ」とねだってくる。このイエティをダシにすれば話は早いかもしれん。
サニーは上昇志向の強い女が嫌いらしい。恐らく従姉のパッシモーニもそうだからだろう。昔からよく比べられたそうだ。会うたびに顔へ爪を立てて引き裂きたくなると愚痴っていた。その割には自分より呑気なピムスモーニのことは馬鹿にしてる節があるしな。
俺が従姉と寝たら海へ引き摺り込んで溺死させてやるとサニーは脅してくるが、残念ながらパッシモーニはソノラ・モルナールと交際していると聞く。コックが無いのにどうやってだ?
$852.29




