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11月17日(木) エメラーダ

 ミスター・イムホテップの悲鳴は思った以上に凄まじかった。あんなガリガリに痩せた体のどこからそんな声を出せるんだって驚いたよ。

 ハーピーの子も協力してくれたから助かったね。彼女はやっぱり大した女だと思うよ。あの騒ぎをBGMにして、優雅にタピオカチーズティーとフォンダンショコラを愉しんでたんだから。

 あれだけ叫んで、しかも4時間近く600℉(315℃)の棺桶の中で身体中の水分という水分を蒸発させたんだ。さっきマルキが何食わぬ顔で氷水を持って行ったそうだけど、さすがにもう、一言も発する気力はなかったってさ。


 エクソシストが819号室のミセス・コロンブスのところへ、彼女の息子さんと一緒に。ミセス・コロンブスは施設に行くのを渋っているようだったけど、もうここへ来る時点で家も家財道具も全部処分して、身一つなんだからって説得していた。ミセス・コロンブスの夫は認知症になった挙句、トランスした状態でフラフラ徘徊していたら、車に轢かれて亡くなったらしい(別に俺は聞き耳を立てていた訳じゃない。ルームサービスのエヴィアンを持って行った時に、親子とエクソシストが話してたんだ)

 で、帰り際に息子さんがフロントへ寄って、来週の火曜日にチェックアウトしますってさ。彼女とたまにに世間話をしていたミセス・ラ・プレイスが寂しかるよ。


 お前がもしボケちまったら、狼の時も人間の時も首輪をつけて繋いでおくからな。徘徊なんかされたら、俺の力じゃ絶対に止められない。ここから歩いて故郷のデトロイトまで帰っちまうかも。


 ホイストはやっぱり鼓膜がイカれてたらしくて(破裂はしてなかった)診察代を払えっていうんだけど、もう一発、今度は反対側の頬も張り飛ばしておいた。やっぱり払わなきゃいけないのかな。あんなちょっと、撫でるみたいだったのに、大袈裟すぎるよ。大体、先にマルキを困らせたのはあいつなのにさ……そう言ったら、マルキに「私を言い訳に使わないでください」って怒られちゃった、あーあ。


 今日は仕事終わりにマティと飯へ行く予定だったんだけど、仕方ないな。オーキッドもお袋さんが病気なら。マティが代わりに私がそっちに行ってあげるって、1020号室のルームサービスのオーダーを持ってきてくれたんだけど、そんな時に限ってトラブルが起こるしさ。がっかりだ。


 305号室へ行った時は怖い顔をしていたつもりもないんだけど、客のジジイは心なしか腰が引けてたような気がする。それとも、クソを詰まらせたのが決まり悪かったのかな、当然だよね。

 トイレはゴムカップでギュギュッとやったらすぐに流れたけど、そうしたら今度はバスタブから赤っぽい水が噴水みたく溢れ出して、どうにもおかしいなと思って隣の304号室を見に行ったんだ。確か宿泊者は人間だってよな? チェックアウト直後だったみたいだけど、もう最悪だった。バスタブでは死体を解体して残骸もそのまま、バラバラにした肉片をトイレに流してる。シルキー達が来る前で良かったのか悪かったのか……クロックが来てくれて一緒に片付けたよ。で、時間が掛かりすぎたから、マティは帰っちまった。本当にひどい! 今度からは人間の客が宿泊した時にも、死体を作った際の注意書きを部屋へ置いておくべきかな。

  

 妖精達だけど、とうとうドロレスまでいなくなった。お姉さん達が仕事に穴が開くと困っている。このままのペースでいなくなったら、来月にも歌劇団は解散する羽目になるよ。

 もしも定期的にホテルへ侵入している奴がいないのなら、下手人は宿泊者ってことになる。もちろん、やれることに限度はあるけど、今以上に目を光らせた方がいい。

 問題は、どれだけ俺達が注意して見張ってても、妖精達が一向に警戒心を呼び覚まさないことだけど……監視カメラへ映るよう、エントランスを通るようにって注意したのに、言うことを聞いているのなんか半分もいればいい方だ。


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