10月28日(金) アコーダンス
可愛がるだと? トーピードのところへいたとき、一体何度、訓練だと言われて肋骨をやられたか分からない。俺の体の中にある骨のうち半分は、彼女にへし折られてるんじゃないか。
俺にも彼女からテキストが来た。ホテルは移る予定だったらしいが、2階に部屋を押さえてくれとのことだ。連れがゾンビなのか? それともまさか、トーピードが噛まれたのか……いや、屈強なヴァンピールがゾンビ・ウイルスに感染などするはずもない。
取り敢えず、帰還次第210号室の角部屋にアサインすることはクロックから了承を取り付けている。
マルキもご愁傷様だな。俺もそこまでお堅い性格はしちゃいないが、宿泊客のホテル従業員に対するセクシャル・ハラスメントは由々しき問題だ。ミスター・パルファムも、久しぶりに娘と会ってきたから浮かれていたと言うのもあるだろうが。明日アンシャンテに会ったら、従弟が調子に乗ってるから叱るよう伝えておく。
3000ドルは今日付で振り込んだ。もう後戻りは出来ない。ここから先は、ひたすら稼ぐだけだ。
617号室から619号室にはミネソタかどこかの使い魔婦人会の団体旅行で、どの部屋の客もチップを俺限定で大盤振る舞いだったことは知ってるな。さっきオーダーがあって、618号室へダイキリをカート一杯運んだら、そこでは総勢7名がお揃いだ。適当に相手をしていたんだが、酒を勧められたとき、突然マンハッタンが現れた。気の弱い哀れな淑女達は金切り声を上げたり失神したりの大騒ぎになったが、そんなトラブルを起こしてでも俺に伝えたいことがあったらしい。何だと聞いてみたら、この男に飢えた豚達は、俺を酔い潰して好き放題に弄ぼうと企んでるんだと。(この文言は俺のコメントじゃない、彼女がそのままこう言ったんだ)
マンハッタンはバーまで降りて来られないから、俺の肝臓について知らなかったのはやむを得ない。しかし、婦人会の襲撃か。意図せず女を膝によろめかせるのは、モテる男の宿命だな。もちろん、丁重にお断りしてる。迷惑料のチップも貰った。彼女達は水曜日まで宿泊だから、それまでオーダーにはロベルタかマルキを行かせる。お前も危ないから、念の為近付くな。
マンハッタンと顔を合わせるのは数年ぶりになる。これでもう、彼女も隠れる必要は無くなった訳だ。助けてくれた礼をさせてくれと言ったら、何か花が欲しいそうだ。押し花にして大事に取っておくからと。勤務終わりにでも買ってくるよ。
今日は女傑の活躍が多い。1001号室でCPのお嬢さんが、外出中に男の死体を片付けておいてくれとのオーダー。これはお前が行ってこい。何ならお前、戻ってきたら彼女を誘ったらどうだ。
915号室の狼女は、以前から何度か利用しているシュガー・ヴァンピールと同伴して3時間の利用。時間になっても降りてこないので確認しに行ったら、どうやら血が獣臭いと言われてカッとなり、シュガー・ダディの頭を叩き潰したらしい。雑種野郎の方は夜になっても回復していなかったら(恐らくはするだろうが)病院前へ放り出してくること。財布は取り上げている。哀れな末路だ。女性の方はチェックアウトしたいと言ったので、帰らせたが、男は彼女にカルティエの結婚指輪とタグホイヤーを盗られた、と訴えていたんだと思う。パンチで歯が根こそぎになってるから何を言っているか皆目見当がつかん。
バンジョーか。だからあの質屋で、俺が早く選べと言ってもぐずぐず店の中をうろついてたのか。
別に向こうへ行ってから始めなくとも、今から練習すればいいだろう。お前、そう言うのは器用なんだから、3ヶ月もあればコードくらいは弾けるようになるんじゃないか。金が足りないなら幾らか貸してやるぞ(くれてやるんじゃない、貸すだけだ。ちゃんと後で返せよ)
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