21.幼い戦士に休息を
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リリーナに声をかけられて,ベリー達は雪の興奮から一旦離れる。
「じゃあこれから,よろしくね,リオン!」
「うん。魔法は使えないけど,前衛として頑張る」
表情を少し緩めて,リオンがそう答えた。
魔法は使えないって言っても,絶対それ強いでしょ……? と呆れたように呟くキャサリンの隣で,まだ雪と戯れていたゆめも興味深そうに巨大な鎌を見つめる。
透き通っているように見えるよく磨かれた銀刃は,滑り落ちる雪と重なって,一つの芸術作品のように輝いていた。
「ところで……リオン,一つ質問良い?」
ふと思い出したように,ベリーがそう尋ねる。
そして,首を傾げるリオンに,じとっとした目を向けた。
「……なんでそんなに平気そうなの……? 寒くない?」
「あー……」
ベリーが着ているのは,膝丈の桃色と金色のエプロンドレスである。
豪奢で可愛らしいが,動きやすさ重視のため,防寒は全く考えていない。
それに対して,リオンは身軽で動きやすそうな膝下丈のサロペットに,黒一色のコートに近い形状をしたローブを羽織っている。一見温かそうにも見えるが,ローブは薄い生地で,動く度に袖や裾が緩やかに揺れていた。
質問の意図に気づいたのか,リオンは少し眉を下げる。
「……これは師匠の特別製だから。寒いセイレーストでも平気なように,防寒の魔法? が沢山ついてるの」
愕然とした表情になったベリーに,リリーナが呆れたように袋の中から何かを取り出した。
「あ! 忘れてたー!!」
ベリーがハッとしたように,リリーナが取り出したキャラメル色のコートに飛びつく。
防寒対策として持ってきていた物で,最初に説明もしたのだが,ベリーは完全に忘却していた。
蜂蜜色の髪とよく似た色合いのコートを嬉しそうに羽織って,輝くような笑顔を浮かべる。
もう一枚似たようなコートを取り出してゆめに渡してから,リリーナは空を見上げた。
「……まだ時間はありそうですし……少しくらいなら遊んでもいいですよ」
「ほんと!?」
ぱっと表情を輝かせたベリーが,ゆめを伴って白い地面を駆けて行く。
そしてリオンも混ぜて,ゆめが話した遊び“雪合戦”を始めた。
微笑ましそうに眺めていたキャサリンも,ゆめに誘われて参戦する。
「……きゃさりん,魔法ダメだよ」
「つ,使ってないよ? 魔法……ツカッテナイヨ?」
ゆめにジト目で見られたキャサリンが慌てて杖をしまい,悲しげな表情でベリーに雪玉を投げた。
「いだっ!? キャサリンひどいー!」
「やられたらやり返す,倍返しー」
ベリーがむっと頬を膨らませる横で,リオンが巨大な雪玉を作ってキャサリンに投げる。
音速で飛んでいった雪玉をギリギリで避けたキャサリンは,流石に冷や汗が流れた。
「……ちなみに倍返しって何?」
「知らない。師匠が,かつての仲間がよく言ってたって教えてくれたやつ」
『ざゆーのめい』なんだよ と胸を張って,少し得意げな表情を浮かべる。
微妙な表情になったキャサリンは,ベリーが投げた雪玉を軽く避けつつ,軽く首を横に振ってからゆめに雪玉を渡した。
「べりー,投げるの下手……?」
「へっ!? 下手じゃないもん!」
少し面白そうな笑顔になったゆめが問うと,ベリーはぎこちない表情になって視線を逸らす。
「……あぁ,ベリーって力が弱いんですよ。なのになんで調理器具は折るんですかね……」
よくお菓子作りでボウルの中身を混ぜている時に,器具を根本から折るベリーを思い出したリリーナが苦笑すると,ベリーは顔を真っ赤にしてリリーナに雪玉を投げた。
けれど雪玉はリリーナが立っていた場所のかなり手前で地に落ちる。
「むー……! リリーナそっちのチーム入って! たたきのめすー!」
さらっと可愛らしくないことを告げながら,ベリーは楽しそうに手伝うリオンと,雪玉を大量に作り始めた。
結果的に,ゆめ・キャサリン・リリーナのチームに,ベリーとリオンは敗北した。
人数差もあり,結構な惨敗である。
全身雪まみれになりつつも,ベリーは楽しそうに笑ってゆめと白い地面に転がっていた。
リオンも疑問符を浮かべつつ真似をし,三人でころころと移動する。
そういうところを見ると,全員同じくらいの年齢に見えた。
実際同じくらいなのかもしれないが,リリーナとキャサリンには判別がつかない。
「……この子達が,魔王を討伐しに行くんですよね」
少し呆れたような,それでいて微笑ましそうな声音で,リリーナが呟く。
「まぁ,私達も行くんだから,大丈夫でしょ。それに,とても見た目通りの強さじゃないっていうか……?」
相槌を打つキャサリンは,若干声が引き攣っていた。
リリーナは苦笑しつつ頷き,少し遠くの方の景色を見つめる。
不安定な色合いの空を,一羽の鳥が去っていくのが見えた。
それは,魔物や魔族の王国,魔王領デスグラストがある方向だ。
まだまだ気配すらも感じられない魔王の存在が,やがて近づいてくることはわかりきっている。
あの時,グラッセリアを襲った恐怖の象徴を,リリーナは忘れられない。
それでも今は,恐怖や不安なんて感じなかった。
仲間に恵まれた感謝と,幼くてお転婆な姫を助ける覚悟。
そしてその先の明るい未来を,確かに感じていた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:終わり方が……! 20話と一緒!!
気にしないでくださいもう……。
あとそういえば,平和回なのに(?)魔王領の名前初出ですね。
そして! 次回に関してなのですが。
そろそろ第一章終了なので,魔王側回を書こうと思っております!
もうなんか,影も形も今までなかったので……。
(一言とは……?)




