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お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第一章 少女達の旅立ち
23/32

21.幼い戦士に休息を

誤字,脱字報告受け付けております。見つけた際は遠慮なく報告して頂けると幸いです。

感想,レビュー等大歓迎です。

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 リリーナに声をかけられて,ベリー達は雪の興奮から一旦離れる。

「じゃあこれから,よろしくね,リオン!」

「うん。魔法は使えないけど,前衛として頑張る」

 表情を少し緩めて,リオンがそう答えた。

 魔法は使えないって言っても,絶対それ強いでしょ……? と呆れたように呟くキャサリンの隣で,まだ雪とたわむれていたゆめも興味深そうに巨大な鎌を見つめる。

 透き通っているように見えるよく磨かれた銀刃は,滑り落ちる雪と重なって,一つの芸術作品のように輝いていた。


「ところで……リオン,一つ質問良い?」

 ふと思い出したように,ベリーがそう尋ねる。

 そして,首を傾げるリオンに,じとっとした目を向けた。

「……なんでそんなに平気そうなの……? 寒くない?」

「あー……」

 ベリーが着ているのは,膝丈の桃色と金色のエプロンドレスである。

 豪奢ごうしゃで可愛らしいが,動きやすさ重視のため,防寒は全く考えていない。

 それに対して,リオンは身軽で動きやすそうな膝下丈のサロペットに,黒一色のコートに近い形状をしたローブを羽織っている。一見温かそうにも見えるが,ローブは薄い生地で,動く度に袖や裾が緩やかに揺れていた。

 質問の意図に気づいたのか,リオンは少し眉を下げる。

「……これは師匠の特別製だから。寒いセイレーストでも平気なように,防寒の魔法? が沢山ついてるの」

 愕然がくぜんとした表情になったベリーに,リリーナが呆れたように袋の中から何かを取り出した。

「あ! 忘れてたー!!」

 ベリーがハッとしたように,リリーナが取り出したキャラメル色のコートに飛びつく。

 防寒対策として持ってきていた物で,最初に説明もしたのだが,ベリーは完全に忘却ぼうきゃくしていた。

 蜂蜜はちみつ色の髪とよく似た色合いのコートを嬉しそうに羽織って,輝くような笑顔を浮かべる。


 もう一枚似たようなコートを取り出してゆめに渡してから,リリーナは空を見上げた。

「……まだ時間はありそうですし……少しくらいなら遊んでもいいですよ」

「ほんと!?」

 ぱっと表情を輝かせたベリーが,ゆめをともなって白い地面を駆けて行く。

 そしてリオンも混ぜて,ゆめが話した遊び“雪合戦”を始めた。

 微笑ましそうに眺めていたキャサリンも,ゆめに誘われて参戦する。


「……きゃさりん,魔法ダメだよ」

「つ,使ってないよ? 魔法……ツカッテナイヨ?」

 ゆめにジト目で見られたキャサリンが慌てて杖をしまい,悲しげな表情でベリーに雪玉を投げた。

「いだっ!? キャサリンひどいー!」

「やられたらやり返す,倍返しー」

 ベリーがむっと頬を膨らませる横で,リオンが巨大な雪玉を作ってキャサリンに投げる。

 音速で飛んでいった雪玉をギリギリでけたキャサリンは,流石に冷や汗が流れた。

「……ちなみに倍返しって何?」

「知らない。師匠が,かつての仲間がよく言ってたって教えてくれたやつ」

『ざゆーのめい』なんだよ と胸を張って,少し得意げな表情を浮かべる。

 微妙な表情になったキャサリンは,ベリーが投げた雪玉を軽く避けつつ,軽く首を横に振ってからゆめに雪玉を渡した。


「べりー,投げるの下手……?」

「へっ!? 下手じゃないもん!」

 少し面白そうな笑顔になったゆめが問うと,ベリーはぎこちない表情になって視線を逸らす。

「……あぁ,ベリーって力が弱いんですよ。なのになんで調理器具は折るんですかね……」

 よくお菓子作りでボウルの中身を混ぜている時に,器具を根本から折るベリーを思い出したリリーナが苦笑すると,ベリーは顔を真っ赤にしてリリーナに雪玉を投げた。

 けれど雪玉はリリーナが立っていた場所のかなり手前で地に落ちる。

「むー……! リリーナそっちのチーム入って! たたきのめすー!」

 さらっと可愛らしくないことを告げながら,ベリーは楽しそうに手伝うリオンと,雪玉を大量に作り始めた。


 結果的に,ゆめ・キャサリン・リリーナのチームに,ベリーとリオンは敗北した。

 人数差もあり,結構な惨敗ざんぱいである。

 全身雪まみれになりつつも,ベリーは楽しそうに笑ってゆめと白い地面に転がっていた。

 リオンも疑問符を浮かべつつ真似をし,三人でころころと移動する。

 そういうところを見ると,全員同じくらいの年齢に見えた。

 実際同じくらいなのかもしれないが,リリーナとキャサリンには判別がつかない。


「……この子達が,魔王を討伐しに行くんですよね」

 少し呆れたような,それでいて微笑ましそうな声音で,リリーナが呟く。

「まぁ,私達も行くんだから,大丈夫でしょ。それに,とても見た目通りの強さじゃないっていうか……?」

 相槌あいづちを打つキャサリンは,若干声が引きっていた。

 リリーナは苦笑しつつ頷き,少し遠くの方の景色を見つめる。

 不安定な色合いの空を,一羽の鳥が去っていくのが見えた。


 それは,魔物や魔族の王国,魔王領デスグラストがある方向だ。

 まだまだ気配すらも感じられない魔王の存在が,やがて近づいてくることはわかりきっている。


 あの時,グラッセリアをおそった恐怖の象徴を,リリーナは忘れられない。

 それでも今は,恐怖や不安なんて感じなかった。

 仲間に恵まれた感謝と,幼くてお転婆てんばな姫を助ける覚悟。

 そしてその先の明るい未来を,確かに感じていた。


最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:終わり方が……! 20話と一緒!!

   気にしないでくださいもう……。

   あとそういえば,平和回なのに(?)魔王領の名前初出ですね。

   そして! 次回に関してなのですが。

   そろそろ第一章終了なので,魔王側回を書こうと思っております!

   もうなんか,影も形も今までなかったので……。

   (一言とは……?)

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