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1章 13.旅人のようなものです

 旅を始めてから2日目、昼休憩も終わり街に向けて山道を駆けている途中。


「クウとマイラ大丈夫かな?」


「さあな、問題ないとは思うが」


 マリスは荷台にいるクウとマイラの様子が気になるらしい。俺も少し心配だが、ライノさんの気遣いで、荷台の前を俺達が走っているから大丈夫だろう。

 クウとマイラの鼻ならこの距離からの俺の匂いなら充分感じてるはずだ。


「あいつらなら大丈夫だよ。何かあればクウの魔法もあるしな」


「そっか、灯君がそう言うなら大丈夫だね。夜までには着くからもう少しの辛抱だよ」


「ああ」


 ――そこから更に数時間後。俺たちは夕暮れの中、危なげもなく無事街へ到着した。


「ああー、やっと着いた。もうケツが痛えよ……」

 

 馬に長時間乗るのはまだまだ慣れていないので、お尻がジンジンと響いて痛い。しばらくは椅子に座るのも辛いだろうな。


「ははは、お疲れ様。騎士団の本部に着いたらゆっくり出来るからもう少し頑張って」


「悪いな」


 クウとマイラも長旅で疲れただろう。心配だし早く荷台に行ってみるか。


「クウ、マイラ大丈夫か?」


「クアー!」


「ガウゥ!」


 クウとマイラのもとに行くと、2匹は元気よく飛び出してきた。


「おわっ!何だよお前ら、結構タフだな」

 

 そこへ荷馬車の馭者をしていた魔法使いさんがやって来た。

 全身を真っ白なコートで覆っており、金の短髪がよく映える20代後半といった感じのお兄さんだ。


「2匹とも景色を見てはしゃいだりと元気に楽しんでいましたよ。元気過ぎて落ちないかと心配な程でした」

 


 魔法使いさんは笑いながらそう言ってくれた。彼はクウ達の乗っていた馬車の馭者をしていた人だ。


「お疲れ様です。2匹の面倒を見てくれてありがとうございました」


「いやいやいいんだよ。ああそうだ私はタックス、回復・支援班の班長だ。よろしくね」


「俺は竜胆 灯です。こちらこそよろしくお願いします」

 

 自己紹介が終わるとタックスさんはまだ片付けがあるからと言い荷台へと戻って行った。


「灯君、クウとマイラは大丈夫だった?」


「おおマリス、全然平気だったよ。こいつら荷台で随分楽しんでたみたいだ」


「それはよかった。準備の終わった人はそろそろ本部に行くってさ。僕らも行こうか」


「りょーかい。クウ、マイラ行くぞ」


「クアッ!」


「ガウゥ!」

 

 俺は2匹を肩に乗せるとマリスの後をついて、騎士団の本部へと向かった。


「すげーな、本部は支部とは大きさが全然違う」


「そりゃそうだよ。ここは王都のすぐ側の街で、騎士の大半はここに居るし」

 

 しばらく歩き、俺たちは街中の騎士団の本部に到着した。

 この街には赤軍の支部と青軍の本部が同じ場所にある。

 元の世界の警察署のように厳重な警備で、4階建ての学校のような建物のが見え、その奥には訓練場が広がっていた。

 その訓練場の隅を歩きながら、マリスは色々と説明してくれた。


「この訓練場の奥にある建物が青軍の本部だよ」


「あれ?なんか、ちょっと小さくないか。いや、あれでも支部の時よりは全然でかいんだけどさ」

 

 青軍の本部は2階建てのアパートのような建物だった。

 最初に見えた建物が赤軍の支部らしいが、青軍の本部は支部よりも小さく驚いた。


「ま、まあ青軍は赤軍と違って1箇所にとどまることなんてあまりないから………」


「なるほどな。いや、全然いいと思うよ」

 

 なんかまずい所をついたかな。この話題はもうやめた方がいいかも。


「あ、そうだ。そういや俺の武器ってどうなるのかな?この騎士団にあるの?」


「ああ、灯君の武器ね。一応騎士団にも鉄剣はあるけど、あれは見習い騎士の練習用だからな~」

 

 よかった。どうやら武器はあるみたいだ。

 俺は魔法使いや魔道具の恐ろしさは身をもって知った。だからちゃんと身を守れる武器がないと、不安だったんだ。


「訓練用でもなんでもいいさ。とにかく身を守りたいんだ」


「いや、あれは訓練用で刃も無いし無茶苦茶重くて実戦では役に立たないよ」


「そ、そんなに重いのか?」


「うん、灯君には辛いと思うよ。やっぱり明日魔道具屋に行くしかないかな。あそこなら魔力無しで使える魔道具もあるし」


「それはそれで楽しみなんだよな」


 俺のいた世界では魔法なんてなかったから、魔道具でも魔法が使えるなんてわくわくする。


「もちろん魔力が無くても使えるんだけど、ただそれだと当然魔力を使う魔道具よりは威力も効果も数段劣るんだよ」


「そ、そうなのか。いや、それでもないよりは全然マシか」


「まあ、もしかしたら掘り出し物があるかもしれないしね。ライノ隊長の許可も貰ってるから行くだけ行ってみよう」


「ありがとう!あ、でもそういえば俺この世界のお金持ってないんだけど……」


 この世界でも魔道具はきっと高価なものだろうし、だからといって働いて稼いでる余裕もないからな。


「それは気にしなくていいよ!今回のハンターの件の協力料を前払いするってことで、騎士団が負担するようにライノ隊長に言われてるから」


「なんだそうか、それなら安心だよ。前借なら俺も気が楽だ」


「うん、それじゃ明日に備えて今日はもう休もうか」

 

 そう言ってマリスに部屋に案内され、俺達は明日に備え、早めに寝ることにした。






 ――






 翌朝、朝食を早めにすませた俺はクウとマイラを連れて、マリスの案内のもと早速魔道具屋へと訪れた。


「おお~、ここが魔道具屋か。なんか、想像通りの建物でテンション上がるな~!」

 

 建物は2階建ての一軒家で1階がお店になっているようだ。木造の建物を黒で塗装していて、禍々しさがよく目立つ。


「そう?それなら良かった。早速中に入ってみようよ」


「ああ!行くぞクウ、マイラ!」


「クア!」


「ガルゥ!」

 

 木の扉を引き中に入るとそこには、俺の世界では見たこともない品物が広がっていた。

 入ってすぐ右には箒が並び、棚に目をやると壺のようなものが並んでいたり、色とりどりの宝石のような石が並んでいた。


 他の棚に目をやると、マリス達騎士団が使っている剣の柄や長柄槍がたくさん並んでいた。

 クウとマイラも騎士団の倉庫に行った時のように、目を輝かせて魔道具の品々を眺めていた。


「なあマリス!魔力無しで使える魔道具ってのはどれなんだよ?」


「それはこっちの奥の棚だよ」


「どれどれ?」

 

 マリスに案内され魔力無しで使える魔道具を見に行こうとした時、中年太りのお腹の出っ張った店主に声を掛けられた。


「いらっしゃいませ。おやマリス君、朝早くから新しい魔剣探しかな?」


「おはようございますグフタスさん。今日はこちらの灯君の魔道具を買いに来たんですよ」


「おやおや、騎士団の新人さんかな。私はこの街で魔道具の店の店主をしてるグフタスです。よろしく」

 

 店員のおじさんはニコニコと柔らかい笑顔で挨拶をした。


「はじめまして、俺は竜胆 灯です。あと、騎士ではなくて、えーと………そうだな、旅人のようなものです。今は騎士団の皆さんにお世話になってまして」


 騎士では無いと伝えようとして咄嗟に自分の立場を伝えようとしたのだが、なんと言ったらいいのか分からず言葉が詰まってしまった。


「そうでしたか、これは失礼致しました。ところで灯様、その肩にいる2匹は?」


「え?あー、これは……」


「あー!これはただの普通のドラゴンですよ!もう1匹も変身術が得意な普通の魔獣です!全然怪しくなんかないですからね!」

 

 魔獣の話になると、マリスが急に慌てだしたのでどうしたのかと思ったが、クウとマイラって確かかなり珍しい魔獣なんだよな。


「マリス君、隠さなくても分かっていますよ。ディメンションドラゴンにキマイラですね。私も本物は初めて見ました」


「はぁ……。しまったなぁ、クウとマイラが珍しい魔獣だって忘れてた。灯君とあんなに仲良くしてるから珍しいって感覚が抜けてた」


「安心して下さい。私はお客様の情報を雑に扱ったりはしませんので」


「そうですね。グフタスさんは信頼してますし、見てもらった方がいい魔道具が手に入るかも。すみませんがこのことはくれぐれも他言無用でお願いします」


「勿論ですとも。では灯様、こちらへ」

 

 どうやらグフタスさんはマリスも信頼してる人のようだ。

 それにしても迂闊だった、今後は気をつけないと。クウとマイラはハンター共に狙われているのだから。

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