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死神美少女と童貞魔法遣いの俺  作者: ぢょほほん
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魔女として処刑されたアメリーの独白

何をどう描くのか、あるいは描かないのかを悩みながら書きました。

また、この回はキャッチーで面白おかしそうなサブタイトルがつきません。



最初に私が呼び止められたのは、お買い物の帰り道でした。

夕食のパンを買って、家に帰る途中です。


私を呼び止めたのは、槍を持った、教会にお勤めするお役人です。

険しい顔つきで、とにかく教会に来なさい、ついてくるようにとしつこく言われ、教会に行きました。


教会に連れて行かれた私は、いつもお見かけする司教様ではなく、見慣れない聖職者に対面しました。


異端審問官と呼ばれている方です。


お名前はわかりません、名前は言えないと言われました。

お名前を知られると、魔女に報復されるからだそうで、それゆえに誰にも明かしていないのだそうです……



お名前を名乗らない異端審問官は、私をみるなりこう言いました。

お前は魔女になってから何年になるのか、

と。



私はあまりのことに驚きました。

私が魔女だなんて、どうしてそんなことを言われるのかと。


異端審問官は続けて言いました、

お前はなぜ魔女になったのか、

と。



私は魔女ではないと言いました。



しかし、

私を魔女の宴会で見たものがいる、

というのです。


私は魔女の宴会に行ったことなどないといいました、

……ええ、もちろん行ったことはありません。


ですから私を魔女の宴会で見たというのは誰ですか、と聞きました、

誰が見たのかはお前には関係ない、見たということが重要なのだ、

と言い返されました。




私は頭の中が真っ白になりました。

何か悪い夢を見ているのではないか思いましたが、現実でした。


部屋の奥から奇妙なマスクをつけた拷問係がやってきて、 ……素顔を見られると、魔女に報復されるからだと、異端審問官が名前を名乗らないのと同じ理由だとそれもあとで知りました、拷問係は私の左手の親指を機械に固定し、ねじで指を締めました。

指締めという拷問だと、これもあとから知りました。


ねじが食い込み親指から血が流れ、私はあまりの痛さに悲鳴をあげました。



どうしてこんなひどいことになるのか全くわからないまま、私は服を脱がされ、両手を縛られ、ロープで天井まで吊るされました。

そしてロープをゆるめて床に叩きつけられ、また吊るされるということをなんども繰り返しました。


私は、あまりの痛さに気絶してしまったようで、冷たい鉄格子で囲われた牢獄のようなところで目を覚ましました。




目をさますと、善良そうな牢番がやってきて私に言いました、

奥さん、どうか、うそでもいいから自白しなさい、拷問にはとても耐え切れませんよ、あなたが魔女だと自白するまで、拷問は繰り返されます、

と。


でも、私は魔女ではありません。

いったい何をどう自白すればいいのかもわからないのです。


これは何かの間違いです、夫にあわせて欲しい、そしていつもの司教様に面会させて欲しいと願いましたが、牢番はとても申し訳なさそうにしながらも、それは聞くことができないのだよといいました。


恐ろしくて恐ろしくて、泣いて一晩過ごしました。




次の日も異端審問官に呼ばれ、

お前を抱いた男色魔の名はなんというのか、

魔女の集会で何を食べたのか、

などと聞かれました。



存じません、わかりませんとしか答えようがありません、


しかし異端審問官はこういうのです、

正直に言え、本当のことを言わなければ、今度は右手を締め上げるぞ、

と……



右手に指締めの機械がセットされただけで、私は悲鳴をあげました。

前の日に締められた左手の親指がずきずきと痛み、心はもっと痛みました。


なんでも申します、正直に申します、おねがいですからその拷問をやめてくださいと叫びました。


異端審問官には、ならば真実を言え、と迫られました。



私は、負けました、

……そして、観念しました。



私にはわかりません、なんとお答えしたらいいのかわかりません、なんとお答えすればいいのか教えてください、その通りに、おっしゃる通りに申します……と。



異端審問官は私の指を締めながら、私に言いました、

お前の共犯者はだれだ、

と。



共犯者などいません、私はそもそも魔女ではありませんから……


私はまた悲鳴をあげました。



そして異端審問官はねじをさらに締めながら、

お前の夫は、いつから魔女なのか、

と聞きました。



私はそのとき知ったのです、

異端審問官は、私に、私の最愛の夫、ダニエルを魔女だと言わせたいのだと……



私は……

私はどうなってもいい、でもダニエルだけは巻き込んではいけない、巻き込みたくない、

そう思いました。



指締めの拷問に耐えました。

繰り返し悲鳴をあげましたが、最後までダニエルの名前は口にしませんでした。



冷たい牢獄の中にふたたび放り込まれたあと、牢番がやってきて言いました、

自白をしてしまいなさい、奥さんの辛そうな顔を見るのはわしも辛いんだ、

と。



牢番は、牢番なりの優しさで言ってくれたのだと思います。

でもダニエルのことは巻き込んではいけない、それだけは絶対にダメだと、

強く思いました。



私は…… でも、でも。


もう、あんな拷問を繰り返されたら、ダニエルの名を出さずにいられる自信がありませんでした。


明日にもダニエルを魔女だと言ってしまうかもしれない。

それは私にとって本当に恐ろしいことでした。




左手に続き右手の親指も砕け、自由に服を脱ぐことも着ることもできなくなり。


それでも痛みに耐え、ボロボロの囚人服を脱ぎ、歯で裂いて、 ……粗末な布だったので、引き裂くことは簡単でした、その布を血で染めながらどうにか輪を作り、


……鉄格子にくくりつけ、私の首に巻きつけました。



鉄格子の位置は体を宙ぶらりんにするには十分な高さではありませんでしたが、斜めに寄りかかるようにすれば、首を吊ることは可能でした。




下げた輪っかになるべく体を預けるようにすると、あれほど痛かった指の痛みがすうっと引き、気が遠くなりました。


気がつくと私は自分を見下ろしていました。

肉体は死に、魂だけの姿になったのです。




いつのまにか黒づくめの格好の、恐ろしい顔をした男が私のそばに立っていることに気がつきました。


男は言いました、アメリー、お前は死んだ、死んだ者はあの世に行かなければならない、と。

男は死神でした。



泣きました。


もちろん悲しかった。


でもそれ以上に、ダニエル、私は、あなたのことは守ることができた。

そのことが、本当に嬉しかった……




自分が死んで、嬉しくて泣くなんて、おかしなことだとは思うのだけれど……

嬉しくて、神様に感謝して、涙が止まることなくいつまでも泣きました。


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