ようブラザー、準備はいいか? 丑三つ時に現れた魔女の涙を受け止めろ!(1)
また2ヶ月の更新期間が空いてしまいました。
前回も書きましたがエタるつもりはありません。
この間も多くの方に読んでいただけたようで、大変嬉しく、続きを待ってくださっている方には申し訳なく感じています。
更新を止めて制作していたノベルゲーム『ブラザー猫〜超猫列伝』は無事にリリースされました。
https://kuroshibatei.booth.pm/items/723461
これからは『死神美少女』の更新頻度もあげていきたいと思います。
また、リリースされた『ブラザー猫〜超猫列伝』もプレイしていただけると嬉しいです。
「来ますかね、ダニエルさん」
足元にはローゼが描いた緻密な直径2メートルほどの魔法陣。
儀式中は、この魔法陣からは決してはみ出してはならないという。
墓場の十字路で、俺はローゼと肩を寄せ合う。
ローゼが言うには、道と道が交わる十字路は、文字通りの巨大な十字架であり、そうであるがゆえに十字路はあの世とこの世が交わる場所でもあるのだという。
死者を呼び出す場所が十字路であることには、そういう意味がある。
言われてみれば、その通りだ。
「来るんちゃう?」
「そろそろ日付が変るころですよね、この時間に来ないってことは、今夜は来ないんないんじゃないかって気がします」
「もう少し待とうや」
「もう少しって、どれくらい?」
「せやな、せめて丑三つ時」
「ウシミツ? ウシミツってなんですか?」
「お化けがようけ出てくる時間帯や」
「ダニエルさんはお化けじゃないでしょう」
「わはは、あの顔色の悪さは幽霊並みやろ」
「その冗談は笑えません ……え? あの顔色?」
「な? 来たやろ」
視線を上げた先に、暗く陰鬱な表情のダニエルがいた。
両手に動物の骨…… 牛か豚か、を持ち、それを重ねて十字をかたどっている。
俺がそうしろと指示した通りに。
俺は笑顔でダニエルに近寄り、肩をバンバン叩いた。
「ようブラザー」
「ヴォルフさん……」
「よう来たな、待っとったで?」
「お待たせしました、 ……あのぅ、」
「なんや?」
「今更ですが、……本当にアメリーにあえるんですか?」
「おう」
「どうやって……」
「おいおい、あのなあ、死者の魂の呼び出し方は言われへんって、飲み屋でもいうたやろ?」
「そ、そうでしたね」
ダニエルは、死者の魂の呼び出し方にかなり興味があるようだ。
気の早いことだが、うまくいったら手順を覚えて、自分でもアメリーを呼び出したいと考えているのだろうか。
もちろんできるわけがない。
死者の魂を思うように呼び出せるのは、ローゼが死神だから。
ただの肉屋の倅のダニエルはもちろん、インチキ魔法遣いの俺にだってできるわけがない。
……もちろん、誰にも言えないが。
「ところで、これは何の骨なん?」
「牛の大腿骨です」
「若い雌?」
「いえそれが、雌はどうしても手に入らなくて、雄なのですが ……まずかったですか?」
「うーん、まあええやろこれで、うん、大きさも太さもええ感じやし、これなら儀式はうまくいきそうや」
『よくそんなに嘘ばっかり言えますね』
というローゼの視線が突き刺さる。
骨の大きさも太さはどうでもいいし、もっと言えばそもそも儀式に動物の骨など必要ない。
ダニエル自身に作業を課し、積極的に関わらせた感を出すためにやらせただけだから。
自分も関わった、と感じさせ秘密を共有することで絆を深める、その効果を狙っているだけだから。
「でな、これからアメリーを呼び出すわけやけど、どうや? 気持ちの整理はついたか?」
「……そうですね、正直今でも半信半疑です」
「それはしゃあない、ダニエルに幾つか約束してほしいことがあんねん」
「なんでしょう」
「大前提、儀式中は俺とローゼの指示には絶対に従え、勝手なことすんな、ええな?」
「は、はい……」
「よし、具体的に一つ目、 ……儀式中はこの魔法陣から出たらあかん」
「もし出たら?」
「死ぬ」
「え?!」
「死ぬ、かもしれへん、魔法陣の中だけが安全なんや」
「わ、わかりました」
「二つ目、アメリーに勝手に質問するな、アメリーとのやりとりは俺かローゼがする」
「もし僕がアメリーに質問すると?」
「死ぬ」
「なぜですか?!」
「死者とのやりとりに失敗すると魂持って行かれるんや、理屈やないねん」
「そんな…… 僕はアメリーに聴きたいことがあるのに……」
「なんで魔女になったんか、ちゅうかほんまに魔女やったんかってことやろ?」
「そうです!」
「それは俺が聴いたるから、それでええやろ?」
「そうですか…… で、でも、」
「あのな、勘違いしたらあかんで?」
「勘違い?」
「言いたいこと言いに来たんちゃうやろ? アメリーが自分に言いたいことをきちん受け止めろ」
「アメリーが、僕に言いたいこと?」
「せや」
ダニエルの腕をつかみ、魔法陣の中に招き入れる。
三人入ると結構狭い、立っているのがやっとである。
「ヴォルフさん、三つ目は?」
「その骨を胸の前で交差させて、エックス型の十字架を作れ、俺がええというまで骨の十字架は動かしたらあかん」
「わかりました」
「ええな? 何があっても動くなよ? 魔法陣からは絶対出たらあかんぞ?」
「わ、わかりました……」
「よっしゃ、ほな始めようか、ローゼ」
ローゼはこくりとうなづき、小さな手を小さな胸の前で合わせ、死神の言葉で死者召喚の呪文を唱えはじめた。




